9話.気休め程度のチョコレート
9話です。
その後、俺達はシルフィに聞き込みをした。
「シルフィは何者がこの村を襲ってきたか、わかるか?」
「……ううん」
「うーん……形とかわかるかな?」
「ううん」
「ま、幼いんだし無理に聞き出すこともないよ」
セレカは、シルフィに問答を繰り返す俺達を少し困ったような笑顔で止める。
「……うん」
「……サザナミ、少しいいかしら」
「なんでしょう」
ミホラとサザナミは、一行から離れ小さな声で話し始めた。
シルフィは、その二人をジッと睨みつけるような目で見つめている。
「そうだ!」
先ほどからずっと黙っているシルフィに、コロネはポシェットから何かを取り出し、笑顔で渡した。
「ほら、チョコ。甘くて美味しいよ」
それは、茶色い、板状の菓子だった。よくコロネが食べている赤いパッケージ
の物で、俺も少しもらったことがある。
「……いいの?」
「どうぞ」
笑顔を崩さないコロネにおされ、シルフィは仕方な下げにチョコを受け取った。
赤いパッケージとその下の銀紙を破り、チョコを一口食べる。
「……おいしい」
シルフィの顔が、驚きと嬉しみが混ざったような笑顔になった。
初めて味わった、というような顔だ。
ちょうどその時、ミホラとサザナミが戻ってきた。
「な~に話してたの~☆」
「なんでもないわよ」
カコエラのからかいは、虚しくミホラに軽く流された。
「しかし……むごいな」
サイカは、辺りを見回し呟いた。
「……言うな」
「……おう」
ゼーダの悔しそうな顔を見て、サイカは申し訳なさげに俯いた。
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今日はツンデレな気分じゃない。