5話.魔鏡に映った絶望
5話です!
ついにピンチ来たる(笑)
「カイリア、コロネ! 起きて!」
俺は大きなノックの音と大きな声で目を覚ました。
まだ朝早い時刻なのにいったい何事だろう。
「なんだよ……ふわぁぁ……」
「私出るね……あぐぅ……」
どうやらコロネも今の音で目を覚ましたらしい。おかしな声を出すものだから、思わず布団の中で笑ってしまった。
コロネは、おぼつかない足取りで部屋のドアに向かう。
なんとかコロネはドアにたどり着いたようで、ゆっくりとドアを開き来客者を確認する。
「あれっ?! ゼーダ兄さんにセレカ姉さん?!」
班員の訪問ということに一気に目が覚め、俺はまだ扉近くにいるコロネの隣に並ぶ。
「朝早くにごめん。でも緊急事態なんだ」
何故かセレカはとても焦った顔をして、魔鏡を抱えている。
ゼーダに至っては 顔が真っ青だ。
「さっき、セレカの魔鏡で俺の故郷を見たんだ。そしたら……」
「この有様だよ」
セレカは俺ら2人に魔鏡を見せた。
「な、なんだこれ……」
そこに写っているのは ゼーダの故郷らしいのだが、連なる木造の家が全て壊れ、家畜小屋の扉が開き 本来そこに居るはずの家畜が放たれていて、とても悲惨な光景だった。
そして一番衝撃を受けたのは、血が至る所に付いていることだ。
「この倒れている馬は……父さんの愛馬、だ」
ゼーダは恐怖で声が震え、膝から崩れ落ちた。
「ゼーダ、落ち着くんだ」
セレカはしゃがんでゼーダに声を掛ける。
「私たちも色々な所へ出向いているが、こんなに酷いのは久しぶりだ。私の推測ではここまで荒らすデヴィルは強敵だと思う」
セレカは落ち着いた声で自身の推論を話した。
そして、少し間を開けこう言った。
「……恐らく、今の1班では倒せない」
「――!!」
俺はすぐさま反論しようとするが、コロネがその言葉を抑えるように、こう言ったのだ。
「兄さん、私もそう思う」
「お前ッ……」
「フィクションの展開と重ね合わせても救世主は現れない。現実を見るべきだと……思ってたりする」
「言うねぇ……。ま、そこで他の班に応援要請したよ」
その言葉を聞いて俺は安心したような、はたまた他人の力を借りることの悔しさを感じた。
応援要請とは その名の通り、難しい依頼などを受けるとき、ギルド長を通して他の班からの応援を要請できるものだ。
「仕事早いね、さすが姉さん」
「ふふん。皆を叩き起こしてまわったからね」
セレカはドヤ顔で笑った。
こうして見ると、セレカは『ドヤ顔』が多い気がする。
「戦士たる者、武器は毎日整備しているよね」
「もちろん、それだけは怠らないよ」
「ならいい。イザナギ門の前で落ち合うことになっているんだ。皆、事情を話したらすぐに承諾してくれたよ。流石 帝国一の人情深さだ」
『帝国一の人情深さ』。
ここのギルドは、そんな事でも有名になっている。
どんな無理な依頼でも、快く引き受けてくれる……俺が小さい時、親に教わったものであり、クリムゾンに憧れたことでもある。
「準備を早急に済まして欲しいところなんだけれど、いい?」
「当たり前です」
「私の同期で、君たちの先輩で、同郷の家族であるゼーダの為にも一肌脱ぐよ!!」
ご覧いただきありがとうございます!
お気に入りにして欲しいとか思っていないんだからね!!
追伸,意図的なツンデレを皆さんはお気づきだろうか……