喪失2
「暗黒剣士のリックが鼠共とおたわむれ、冗談じゃないわね」
女魔剣士はそう言うと溜息をついて嘲笑する。
「黙れ!何故か俺には生死の問題なのだ!」
女魔剣士にそう叫んでみたもののそれが事実だからいかんともしがたい。
「暗黒剣士の称号を剥奪されたって本当なんだ」
女魔剣士、もとより魔剣士サリーは面白そうに俺を見つめてから、
「弱くなった感想でも聞かせてもらおうかしら?」
意地悪っぽくそう話す。
「俺を殺すなら殺せ……」
俺は目の前の女魔剣士を睨んでナイフを握りしめる。
暫くの沈黙の後、女魔剣士は笑い出した。
「ははははっ、わかったわ、その答えで充分よ、ははははっ」
サリーは俺と共に幾多のクエストを達成した仲間なのだがこんな風に俺が彼女に笑われるのは初めてだ。
「そんなチンケな武器で私を倒せるって考えていないわよね、元暗黒剣士さん、それとも倒せるってお考えかしら?」
考える余地などない倒せるはずない……
「そのチンケな刃物が今のあんたの最後の希望なんて笑わせるわね」
何も反論できない、そもそも希望なんてもう存在しないのだ。
「さて、私がここに来た理由を説明しようかな?」
俺の窮地にタイミングよく現れたこの女魔剣士、そこには作為的な目的があると考えて当然だ。
「あんたの財産を50%貰い受ける契約を交わしたの巫女であるアイ様と、これで私は更なる装備を得る事が出来るわけ、新しい魔剣が手に入るなんて、ああ、夢のようで怖いわ……」
俺の財産を半分だと!おい、そんな話は聞いていないぞ!
「私の使命はよわっちょろい奴がいるからそれを無事に魔宮まで送り届ける事、よわっちょろいのはあんたで間違えはないようね」
間違いであってほしいと願いが…
「あんたの指揮で様々なクエストを達成したけど、私だけがあんたの指揮が、まー満足?出来ると感じていたのよね……」
俺は女は戦力としてあまり期待していなかっただけなのだが……
「とにかく、そーゆう訳だから魔宮まで道案内してあげるわ」
そーゆ訳が訳わからんのだが……
俺は黙ってサリーの話を聞くしか出来なかった。
「あんたはあまり知らないと思うけど、あんたに怨みを抱いている輩らはごまんといるわ」
何だ怨みって……俺が何をしたって言うのだ?
「強すぎるだけで罪になる。この世界ではね」
目の前の女、かっては部下にして戦った俺だが今の俺にはもう部下にする資格もない、俺は彼女より弱いからだ。
体中に憤りの奮いが起こるが……
なすすべなく立ち尽くすしかない、
「それじゃあ、さっそく魔宮をめざしましょう」
サリーは俺に踵を返すと悠然と路地裏から歩み始めた。
俺はその後ろをついてあるくしか出来なかった。
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