アオミドロ・プグ
【0】
私は、孤独を忘れられて楽しかった。私はクラスメイトに誘われて、『アオミドロ・プグ』というのをやり始めた。それはウェブ上のコミュニティサービスで、パソコンの中で二頭身の可愛いアバターを操り、多くの人とチャットなどを通して交流ができる。
私は初めこういうものをちゃんとできるか心配になったけれど、すぐにクラスメイトのアバターが話しかけてきてくれて、友だちも紹介してくれて、おかげですごくスムーズに行った。
私は『アオミドロ』で人気者になった。友だちは百人以上もできた。私は嬉しくて嬉しくてたまらなくて、現実との違いなんてことも考えずにただただ嬉しくて泣いていた。
私は独りなんかじゃない。こんなに話し合える友だちがいるんだ。
私はひどい人間なんかじゃない。こうして、多くの人に、受け入れられているのだから。
私は日に日に明るくなった。学校が終わり、パソコンをつけるのが待ち遠しくて仕方がなかった。学校は、嘘の自分。
パソコンの中こそ、本当の自分がいるのだ。
花が、ひらひら、ゆらゆら揺れる。桜の花びら、ふわりと落ちる。
けれど私は、ある日急転直下に全てが変わった。
私は目を疑い、暗闇の中パソコンの光を反射しながら――泣いていた。
【1】
わたし柳ヶ森時計は生来のそそっかしさで、子どもの時から損ばかりしている。
今日も今日とて、
「いやあ、薄情な世の中だね」
「何がなの? 柳ヶ森さん」
歩いている隣で、何やら眠そうに目をこすりこすりしている同僚の斉が尋ね返してくる。要領が悪い、てのはこういう奴のことだ。
「いちーち説明せにゃならねーのか? ああん?」
「いや、なんだって、知りませんから。教えてくださいよ柳ヶ森さんっ」
斉は黒髪ロングの見るからに清楚な感じの少女だ。その少女が困惑して眉をちょっと下げているのがそそる人にはそそる。
「一を聞いたら十を知らなきゃいけねえんだぜ、ナリさん。たとえば俺っちが『う』と言ったとする」
「はあ」
「そしたら、お前は早く美味しいラーメン屋さんを俺に教えなきゃなんねえんだよ」
「なんで!?」
「ものわかりが悪い野郎だなあ。いいか? 『う』は『うまいラーメン屋さん教えてくれよナリさん』の略なんだよ」
ぺし、と手に持っている扇子で斉の脳天を叩く。
「そんなご無体な」
「で、俺が『薄情な世の中だねえ』っつったのは」
「へえ」
「朝、時間になったのに、かーちゃんもとーちゃんも起こしてくれない。こりゃ寝過ごしたってんで慌ててお前叩き起こして、今こうして市中見回りに出てるわけよ。分かるか? 親が起こしてくれない。薄情な、世の中」
「いやだなあ、柳ヶ森さん。変だと思ってたんですけど、やっぱりそそっかしさからだったんですね。今はまだ朝の四時ですよ。仕事は七時からで」
「はああ!? ――道理で眠たいと思った」
こんなありさまといった次第だ。
【2】
「で、今日のお仕事はなんだったけかなナリさん」
ちゃんとした時間になり、私はスポオツ新聞の競馬欄を見つつそんな話題をふる。
「今日は特に何も。普通に見回り……おっと!」
「おお!?」
二人の服が同時にぶるぶる震える。なんじゃこりゃあと思ってブレザアのポケットをまさぐると、ナリは携帯を取り出したが、私のポケットからはウナギがブブブと振動しながら飛び出てきた。空中で二度三度ステップしながら地面に軟着陸する。ぬるぬるぬる、と二人の眼下でウナギはぬめる。私はいけねえとわっしと摑み、はい通話。
「もしもし。ちっ、なんでえ、通話中は震えるなっつってんだろ。もう五年ものだから仕方ねえかなあ。それにしてもなんでかおいしそうだな。ははナリさん、俺ぁ携帯なんか食べたいって思っちまってるよ。末期かなあ。てへ」
「それはウナギだから私だっておいしそうですよ! それにしてもなんで生きてるウナギ入れるんですか!」
「え、ああ! 俺の携帯黒いから間違えちまったっ!」
ということでナリの携帯を借り電話に出る。
「あい、もしもし。こちら時計」
「永津鄒です」
「う」
私は顔をしかめる。いきなり腹を下したのではなくてその声の主に問題があるのだ。永津鄒。いけすかない野郎――いや女なのだが――なのだ。この人の声を聞くか顔を見るかで、私は生理が不順となる。健康被害を訴えねばならないレベルにきている。だけれど、彼女はそんなこと素知らぬふりで、
「至急七一一長屋の八十二号室に向かって、そこの住人を確保してください。名前は足切叶」
黙々と事務的に指令を与える。
「りょ、りょおかいー☆」
私はわざとらしく子ども声全開で返事をすると、隣のナリの胸倉をひっつかみ、
「よし! 自転車! 乗れぃ!」
堂々と二人乗り、肩まで伸ばしたゆるふわ茶髪とチェックのスカートを派手に翻し、一気に目的地を目指す。新緑の自然が木の葉を揺らした。
到着すると一目散にドアのノブを摑んで開け放った。それから、
「定町廻り同心、つまりパトロール少女の柳ヶ森・時計! 御用だ御用だあ!」
派手に見得を切り。
「くそ、やけにくせえ部屋だな」鼻をつまむ。
「それは柳ヶ森さん、そこトイレだからだよ」
赤くなってしまって、今度こそとしっかり確認してドアを開けた。
中は暗かった。カーテンもフルクローズだ。なんだ、辛気臭い部屋だなと思う。だが部屋は一面ラベンダーのかほり。矛盾相反撞着ギャップだった。
「足切叶! なんの罪かは知らねえが、とりあえず捕まってもらおうか!」
足切は長方形の部屋一つの奥にいた。暗い部屋の中で唯一発光している――パソコン画面を前にして。
「――どなたでしょうか?」
その光に映し出された顔は、綺麗だったが目の下にはひどいクマ、生気が無かった。
【3】
『アオミドロ・プグ』。
電話に出た永津は確かにそんな言葉を自分に言った。
「……なんだ、その……、微生物の、進化形みたいな名前は」
頭がガンガンするのをこらえて永津と会話。永津は電話を挟んでいても無表情だと分かる声音でぶつぶつ語りかけてくる。
『アオミドロ・プグというのは、今ニッポンで人気なオンラインサイトですよ。二頭身の可愛いキャラクターをアバターにして、色々人と交流ができるんです』
「へ……え……」
いい加減苦しくなり息切れがしてきたので、電話をナリに預ける。ナリは普通に受け答えをしていた。自分はそこから漏れてくるあの女の声を聞くのも嫌なので、ずずい、とそこから離れて部屋の奥に移動した。部屋の奥にはあの陰気臭い少女がいる。私は我慢ができなくなった。
「おい、なんて辛気臭い顔してやがんだ、この……、のっぺりとして、平ベってえツラしやがって」
「それは柳ヶ森さんが見てるの、壁だから当たり前でしょ」
慌てて顔を壁から本当の少女の顔に向ける。少女はこちらを向いて、永津の野郎のように無表情だった。死んでいる。心が。
なんだこいつ、と思う。にらめっこ大会があったら優勝間違いなしだろうと思う。
「なんて顔してるんだよ、俺とタメな感じなのに……。十六? 十七? でもこうも暗いんじゃ十歳は歳いっちまうぜ」
「あはははは」
少女――足切は感情なく乾いた笑みで笑った。
こいつ。
私は心の中で一瞬で感じた。
キモい。
「そんなんだからケーサツのお世話になんだろが! よし、あれだな、まずカーテンを開け、電気をつけ、」
バッ、とカーテンをフルオープンにし、お天道さまの光を部屋にもたらし、吊り式蛍光灯をカチッとつけると、部屋はずいぶんと明るくなった。
「外に出るぞっ! 精神を向上させるためには肉体の向上が必要不可欠であるっ! 精神的に向上心の無い奴はバカだ、という! だからパソコンを捨て街に出て、新鮮な空気を」
「あははははははは」
――!!
のおう。全身に鳥肌が立った。粟立った。
こいつはあれか、真性なのか。もう、彼岸に行ってしまったのか。目は胡乱、長い髪はあちこちに散らかっている。
こいつは一体、どうしてこうなってしまったんだ。私はこいつに関心を持った。そしてなんとか更生させようと思った。それくらい足切という女は悲惨だった。よく見れば目が濁っていた。
【4】
『アオミドロ・プグ』。
「その正体は、ウェブ上のコミュニティサイトのようである。二頭身の可愛い云々かんぬん」
「で、それがどうしたんだ?」
ぷ~、と足切の部屋で見つけたブーブを走らせる。いやあ屋台のブーブはいいものだ。走るのなら競馬の馬が一番だけどね。ああ、今日の馬誰に賭けようかなあ。どういう順位付けにするか……。
ナリは私を一瞥すると、
「そこにベベベ政府の要人が入り浸っているんです。気に入って」
「気に入ったんだっ? おっさんだろ?」
「どうやら可愛い女の子といちゃいちゃできるからと」
「可愛いって言ったって……、二頭身のアバターだろ?」
「だからいいんだと」
「まあ、それなら俺は何も言わないけれども」
で、それがいったいどういう問題になるっていうんだ。「あれか? 電気代ネット代の使い過ぎで国の予算があわわ状態とか」
「さすがに零細企業じゃないんですからそれはないんですが」
ナリは眉をちょっと下げる。
「どうも可愛い贔屓の子に国の重要情報を漏らしてしまうらしいんですね。それが密かに大問題になって」
「オムツが必要だな」
「それで、やめさせようとするんですが彼はパソコンから手を離さない。何人がかりでひっぱっても離さない。電気をストップしても予備バッテリーが内臓されているらしくて」
「はあ」
「で、今日もあの子に会うんだ……とか胡乱な目つきで言うんですよ。それが今日の二時予定。それまでになんとか要人を止めなければならない。そこで」
「――そこで?」
ナリは目をきらめかせて、私の向こうを指差す。ぐるりとその先に向いたら、足切がいた。
「彼女ですよ」
「なんで? こいつがその、贔屓のアバター持ってるやつなの? ちっ、てめえ、ケツ穴から親指入れて」
「違います! 彼女こそ、スーパーパソコンプレーヤーでして、要人のアバターや贔屓の可愛いアバターに何故かかけられている凄いバリアーを除去してウイルスによりぶっとばすことができる! 無敵少女なのです」
【5】
「え~!!」
私も目をきらめかせる。純粋にすごいと思ってしまったからだ。
「俺ぁ理系の人には無条件で尊敬することにしてるんだよ! ね、やってやって! スーパーパソコンプレーヤーならこう、キーボードもブラインドでしゅばばばばっ、ってできるんだろっ? ね、やってよ! やって~よ~」
だだっこっだだっこ。「柳ヶ森さんっ」とナリにたしなめられても無視をする。
「さあ!」「どうぞ!」
手際良くキーボードを差し出す。
「それは足ツボ押しする健康ボードじゃないですかっ」
「あっ、道理でキーボードなのに足で押したくなると思った」
慌ててひっこめ、今度こそズイッと満面の笑顔で差し出す。が、
「私は、やりません」
無下な一言で切り捨てられた。
「私は、ぱそこん断ちをしたんです」
「はあっ? なんでっ?」
「あはははは」
また逆戻りになってしまった。足切叶は黒い、床まで垂れている長いボサボサの髪に小柄な体を埋もれさせながら、濁った眼でケタケタ笑う。
私はその様相に若干引きながらこいつ本当にスーパーパソコンプレーヤーなのかと疑ってしまった。
「……ほんとか~? お前、実は虚名だからやりたくないだけなんだろ? 違うかなぼくちゃん」
すると彼女の濁った瞳に微かな意志が宿ったのを感じた。
「なら、そうですね」
ゆらあり、と足切はボロい畳から立ち上がり、黒タイツの足を重そうにパソコンの方へ歩ませると、椅子を引いてこちらを見た。
「あなた、競馬が好きなんだよね。さっき顔にそう書いてあったもん」
「へ」
私はバババと自分の顔を触る。そんなに競馬のことで頭がいっぱいになっていたかな? と思う。
「私が今からぱそこんを使って今日競馬を当てて見せよう」
ふふふふ、と気味の悪い暗黒の笑いを漏らす。それからの彼女は凄かった。千手観音の如き手さばきでキーボードを叩きまくると、画面が次々と目が回るくらいに変わり、彼女の目もぐるぐるぐるぐる動き、
『ズドントイッパツ、早い、早い! 圧倒的に今ゴール! 続いてブッチギリがゴール! ああっとマケヘンデ転倒――――っ! モロヘイヤが三着ーっ!』
「――あ、当たった」
わなわなわな。マイラジオから驚きの結果が流れてくる。馬券買っておけばよかった、と後悔するが後の祭り。
何が起こったか。足切が予想していた一着二着三着が全て的中したのだった。
「へ、へへえーっ」
こいつぁホンモノだ。ナムナム、と拝み倒す。疑ってすみませんでした。
「私を拝んでどうするんですか」
「え、ああ、紛らわしい所にいるからいけねえ。ええと、ナムナム」
「ブーブを拝んでどうするんですかっ」
「え、ああ、紛らわしい形してるからいけねえ。ええと、ナムナム」
「それは鏡に映っている柳ヶ森さんですよー」
「ええ、ああ、紛らわしい可愛さしてるからいけねえっ」
ようやく、はあ、ナムナム。するとヤッコさん照れたのか私を足蹴にしてくる。
「バカにしてるなっ? だからどいつもこいつも信用ができね」
「よし海に行くぞっ!」
「ひえっ?」
足切をお姫様だっこすると、すぐさまこの狭苦しい長屋から出でんとする。足切は胸元でくすぐったくじたばたする。
「や、やめろ、なんでそういう結論に達するんだ」
「海に向かってバカヤローと叫べばなんだってすっきりするだーよ! つべこべ言うねえ!」
「ば、バカだこいつっ」
近くで見ればこの女、足切、とてもいいツラをしていやがる。目が腐って濁りすぎているのを除けば、充分美少女の類だ。更生してしっかりとすればきっとモテるだろう。と、つい何故かヨダレを垂らしたら、「だわっ」と少女が脱兎のごとくするりと抜け出す。おい待て! と襟をひっつかんで引き戻すと、それっ、と今度こそ家を出る。
「それにしても敷居が高ぇなこの家は。ひいふう」
「柳ヶ森さん窓から出ようとしてるからっ」
「ああっ、うるせえな、女は黙って窓から出るもんだ! よし! 出たぞ! うんっ? おい、靴がねえぞ! さては盗まれたか!」
「窓の外に置いてあるわけないです! 玄関!」
「うるせえなあ、めんどくせえ家だ。窓から出たら玄関に行かないと靴を履けねえとは。よし、履いたぞっ」
それっ、てんで勢いよく海へ走り始めると、すぐに海に着いた。
「お、もう着いたぞ! さあ、バカヤロー! って言えこのオタンチン」
「ただの道端の水たまりです! 水があれば海ってわけじゃないです!」
「うるせえなあもう! お、あれこそ海だ! さあ言えバカヤロー!」
「バカヤローとはなんだこのアマ!」
「鼻水垂らしてる人じゃないですか!」
「ひええ、こりゃ失礼!」
慌てて謝り逃げ出す始末。
やっとのことで本当の海に着くと、彼女を砂浜に降ろし、さてとバカヤローを無理矢理言わせる。
「ば、バカヤロー!」
「おお言えたっ。意外と元気がいいじゃねえか。それに、バカヤローって言ったらもう効果てき面のようだなっ。髪の毛は短くなり、目は澄んで、肌は綺麗。服装も変わって制服に、まさに立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花だ。まさに別人」
「それは足切さんじゃなくて私を抱っこしてきたんですから当たり前です!」
「ええ!?」
見れば確かに目の前にはナリ一人。
「道理でお前の声がかなり近くから聞こえるし、見た目に反して重てえと思った」
「失礼ですねっ!」
さて困った。足切は一人、長屋で安穏としているだろうか。もしかしたら鍵を閉め、籠城しているかもしれない。どうしたものかと暗澹とした気持に襲われていると、
「ぷっ」
近くで誰かが噴き出したのが聞こえた。
「バカバカしいっ。ああ、何もかもどうでもよくなっちゃった」
見ればその姿は不潔な姿。立っていてもボサボサの黒い髪が地面につき、目は胡乱で濁っている。着ている服も薄汚れている。手にはブーブと健康ボードを持っていた。
「足切!」「足切さん!」
二人に呼びかけられて足切はケタケタ笑う。
「――私、ずっと独りだった。人間が怖かったから。傷つくのが嫌だった。だから私、クラスメイトのすゝめで『アオミドロ・プグ』に溺れた。ここなら、傷つかずに人と接することができるかなと思ったから」
でも、と彼女は言った。
「やっぱりパソコンの世界も汚かった。現実よりも汚かったかもしれない。人の顔を見なくてもいいのはいいけど、そのおかげで本当誰でもやりたい放題言いたい放題。私はあまりに自分への誹謗中傷が過ぎるなと思ったけど、それがあのクラスメイトが発端だとは思わなかった。私、つまりあのクラスメイトに騙されて嵌められたってわけ。いじめる道具にしたかったんだね」
それで私、パソコンも打ち捨てて現実から乖離した。
「――でも、私」
これまで見せたことのない気味のいい笑みを見せる。
「あなた見てたら、もうどうでもよくなっちゃった。こんなバカな人間がいるんだと思ったら、もう」
「えへへ、って、どういうことだよっ」
私は照れたのを撤回して彼女に噛みつく。彼女はまたケタケタ笑って、それから、
「バカヤロ―――――――っっっ!」
海に向かって、声いっぱい叫んだ。
【6】
『バリョ―』で待ち合わせしよう。
そうあの要人は私に約束した。ふふ、今日もちょろい男。今回も情報をいただいて、どこかに高く売りつけなくちゃ。
これも全部、同じスーパーパソコンプレーヤーだった足切を罠に嵌めて廃人にしたおかげね。あいつ、意外と私より上手いんだから。あいつがいると、私が張ったバリアーも簡単に破られちゃうからね。おっかない奴。でももう大丈夫。あいつはもう廃人にしてやったから。
パソコンを操作し、ついに『バリョ―』と呼ばれる広場に辿り着いた。約束の時間に、私はわざと少し早く着いた。その方があの要人も自分にそんなに気があるのか、待ち切れなかったんだね、とバカな妄想をしてくれるに違いないから。
その間、暇だからあちこちぶらついてみた。すると、広場の真ん中の木に何やらメッセージが書かれてある。小学生が大方ヒワイな言葉でも書いたんだろう、と思ったけど、まあ暇だし、とクリックして読んでみた。と、
『水口月は、この木の下で終わり』
そう書かれていた。
「え、」
すると途端にパソコンが変な文字でいっぱいになってバグった。私は慌ててキーボードをバカみたいに叩いたが、うんともすんとも言わず、
「水口月! 御用だあ!」
次にはドアが蹴破られて警察が入ってきた。私は呆然として抵抗できない。
警察の一人が言った。
「彼女のハッキングした情報の通り、お前が犯人だったか。それにしても、本当にクラスメイトの野郎だったとは……恥を知れこのバカ!」
手錠がガチャンと音を立てる。
「そら、行くぞ! ……うん、おかしいな、どうも自分を捕まえているみてえだ」
「それは、柳ヶ森さんが自分に手錠をかけちゃったからですよ」
みんなどっと笑った。
このような作品を読んでいただきありがとうございました(T_T)
何か心に感じてくれれば幸いですっ。
ご感想、ご要望などございましたらぜひぜひ作者にお寄せください。トリプルアクセルをして喜びます^^