9話 無差別攻撃からの逃避
ガガッ!ガキンッ!!
衝撃が腕を伝う。痛みに顔を顰めたが、今のところはほとんど問題ない。
構えている紅剣には、白銀の粒子が纏わりついている。
そして、少女は無事だった。
「な……」
エピは目を見開き驚いている。
それも無理はない。浩二はM0機関砲が火を噴いた途端に少女の前まであり得ない速度で移動し、到達した3発の50口径弾を見事に弾き飛ばしたのだから。
その動きは正に人間を超越していた。これはもしかして、とエピは思ったが、その考えはまだ言うべきではないし、思ってもいけない。
すると、浩二はまた動いた。次の瞬間、浩二の周りでまたも火花が散った。
ガガガッ!ガガキンッ!
今度は6発。弾いた弾は、例外なく分断され、後方へと散っていく。
「今だ。エピは突っ走れ!」
浩二は叫んだ。エピは頷くと、何も考えずに走りだした。
「さてと……」
剣を収めた浩二は、倒れている少女を見た。よく見ると脇腹を撃たれていた。ただ出血はそこまでではなかったので、失血死はしないであろう。
とはいえ、このまま放っておけば確実にあのUAVの餌食となる。
浩二は少女を持ち上げると、エピの後を追うように走り始めた。
◆◇◆◇◆
山の向こうで、1人の大男が歯軋りをした。
「どうしましょうか」
大男の部下らしき兵士は、慌てながらそう言う。大男は、舌打ちをして、こう言った。
「アルファ部隊、及びブラヴォー、チャーリー部隊は全滅だ。残りの部隊を引き揚げさせる。なお、第20特殊小隊を偵察任務で向かわせる」
「それは危険です。仲間を見殺しにするだけです!」
部下がそう言った途端、大男は腰の拳銃を手に取ると、銃口を頭に突き付けた。
「口答えは無用だ。俺たちの軍は、数で押し切る。そうだろ?」
「……はい」
「分かればいい」
拳銃を収めた大男は、撤収を知らせる無線を送った。
◆◇◆◇◆
浩二とエピ、そして瀕死の少女の3人は、キリングエリアとなっている草原地帯を抜け、山岳地帯へと入った。
しばらく斜面を登っていくと、洞窟のような場所に辿りついた。3人は迷わずそこへ入り、奥の方へと進んでいった。
「この辺でいいだろう」
エピがそう言ったので、浩二も腰を下ろした。スキルのおかげか、今の今まで全く気付かなかったが、肩に掛けてあるカバンの中には、確か食糧と水が入っていたはずだ。
急いで開けると、中には5つの缶詰と、3本のペットボトルが入っていた。
缶詰を見たエピが、それを指差す。
「これって、レーションじゃないか?」
「レーション?そうなのか?」
「ちなみにそれは解放軍のレーションだ。栄養補給と同時に、全員の士気を上げる為に、味がとんでもなく美味いと聞いたことがある」
「じゃあ、早速食べてみるしか」
「……待った。それを食べるにあたって、1つ注意事項がある」
◆◇◆◇◆
エピがそう言ったので、しばらく待つことになった。
曰く、温めなければただの何かだそうだ。温めれば味が格段に上がると言うので、エピは外へ出て焚き木を探しに行った。
「さて、何しようかな……」
と言っても、特にやることはない。暇を弄んだ浩二は、バッグの中にある衣服に気付いた。
「これって、戦闘服だよな?」
そう言って広げるのは、黒い戦闘服だった。
とりあえず今着ている服がズタボロだったのに気付いた浩二は、それに着替えることにした。
「ん?」
浩二は脱いだ服に付いた血に気付く。
それが、先ほど倒れていた瀕死の少女の物だと分かるのに、数秒ほどの時間を要した。
振り返り、彼女の方を見る。血は止まっており、何故かすやすやと眠っている。先ほどまでは気付かなかったが、神崩と思われる弓矢を持っている。
そっと近づき、少女の顔を見ようと浩二は顔を近づける。すると、洞窟の入口の方から、何者かの気配がした。
「……何やってるんだ?浩二って案外、変態だったのか?」
その時、浩二は気が付いた。
着替えてる途中で、服を脱いだままだと。




