7話 襲撃
惨劇というのは、一度だけ目にしたことがある。だが、これはそれ以上にひどかった。
爆撃によって、村の建物がほぼ消えている。先ほどまで警戒に当たっていた男たちは肉片となって、血を撒き散らしながらそこら中に転がっている。
「何が起きたんだ」
そう呟くことしか出来なかった。浩二はあまりもの惨劇を目の当たりにしたせいか、足が竦んで動けなかった。
不意に体が後ろへと引っ張られた。
「浩二、危ない」
エピがそう言いながら、浩二を投げ飛ばす。瞬間、先ほどまで浩二がいた場所が抉れた。
爆風でエピが吹き飛ばされる。だが直撃はしていなかったので、かすり傷ですんだ。
「浩二、ここは戦場だ。ボケっと突っ立ってたら、死ぬぞ」
年下(なのかどうかは定かではないが)にそんなことを言われ、若干腹が立った浩二は、ガバメントを取り出した。そして男たちが銃を構えて立っている場所まで走っていった。
◆◇◆◇◆
ちょうどその時、村から3キロほど離れた場所で、AK47を持った兵士たちが整列をしていた。1000人近くいるの兵士たちは、一糸乱れず、その場で静かに敬礼をした。
「よし。予定通りに、アルファ部隊が攻撃をした。これより本作戦は第二段階へと移行する。あの村の人間を皆殺しにするぞ」
この部隊の隊長と思われる男は、にやりと笑う。そして、遂に本当の戦いの火蓋は切られた。
「これより攻撃を開始。速やかに配置につけ!」
その言葉が届いた瞬間、整列していた1000人の兵士たちだけではなく、山の中に隠れていた兵士たちも叫んだ。その咆哮は、浩二たちがいる村にも届いていた。
◆◇◆◇◆
「さて、始まるぞ。浩二、これを使え!」
追っかけてきたエピが浩二に投げ渡したのは、アサルトライフルだった。M4カービン。米軍が使用していた信頼性のある銃だ。
「使い方は分かるな?」
「あぁ。問題ない」
浩二は一応銃オタクでもあり、一通りの銃の扱い方や操作方法は頭の中に入っていた。しかもM4ならグアムで何度か撃ったこともある。
ただ浩二は少しだけ、人を撃つのに抵抗があった。
「人を撃つのは嫌か?」
そう言ったのは、エピだった。
「確かに人を撃つ、ましてや殺すなんてのは俺だってあんまり好きじゃない。だが、それ以前に俺はまだ生きたいんだ。こんな下らないところで殺されるのは御免だよ」
エピは苦笑しながらそう言った。M4を構えながら、続ける。
「ただあんたは俺とは違う。決定的な力を持っているはずだ。そうだろ?」
「決定的な……力?」
「スキル、だよ」
その言葉は、浩二は一度だけ聞いたことがあった。
蘇生され、その時に3つの力が与えられた。そのうちの1つに、確かスキルというものが入ってたはずだ。
「まだスキルの発動方法を知らないんだよな?」
「そうだ」
「なら想像してみな。どんな力を欲してるか、今ここで、頭の中で描いてみな」
エピはそう言いながら、正面を見つめていた。敵が走ってくる、草原の方を。
そして浩二は、言われるがままに、目を瞑って想像した。
自分がどのような力を、欲しているか。
―――お前は、人殺しだ。そして今日ここで、お前は暗殺者となる―――
「ッ!」
浩二の頭に、過去の嫌な記憶が舞い戻ってくる。それも今までにないほどに、鮮明に。
それは、幼馴染を殺させられた時に、そばにいた人間が最初に発した言葉だった。
ドクッ!
心臓の鼓動がある瞬間を超えた時、頭の中に一筋の紅い光が筋となって貫いた。その光が弱まっていくにつれ、体がみるみると軽くなり、研ぎ澄まされていく。
そして目を開けた時、浩二の頭の中には、先ほどの嫌な思いは微塵も無くなっていた。そして代わりとばかりに、五感が研ぎ澄まされ、体中に力が漲っている。
「これが……スキルの力なのか?」
「そうだ。浩二は、暗殺者って言う素晴らしいスキルを持ったな。なら丁度いい」
エピは背中の剣を鞘から抜いた。浩二はすぐにエピの意図を汲み取り、同じように紅剣を鞘から抜いた。
「裏から回り込んで、敵を確実に斃していく。OK?」
「分かった。それじゃ行こうか」
2人はM4をその場に置くと、村の中に走っていき、闇の中に溶け込んだ。




