6話 いざ、ヴェルタイトの地へ
ふと目が覚める。日差しと風が心地よく、このまましばらくは寝れそうな陽気だった。
だが、今までの記憶がだんだんと戻ってくるにつれ、起きざるを得なくなる。
「ここが……ヴェルタイトなのか?」
そう呟き、起き上がる。
辺り一帯が草原で、遠くには山脈のようなものが見える。後ろ側には砂浜があり、そこから先は青く透き通った海が広がっている。
手元には先ほどラヴォルと名乗った神から頂いた武器、神崩の《紅剣》と呼ばれているらしいロングソードがあった。それを背中に掛けようと立ち上がった。
「……ん?」
足元に妙な違和感を覚えた。よく見ると、黒いボストンバッグが置いてあった。
中には黒い戦闘服のようなものと、水の入ったペットボトルが2本、おそらく食糧が入ってるであろう缶詰のようなものが5つが入っていた。それらを全て出したが、まだバッグは重かった。
不思議に思い、奥の方に手を突っ込んで探ると、硬くて冷たいものに触れた。
それを取り出した途端、浩二は目を見開いた。
「ガバメント……?」
コルトM1911A1。ガバメントの愛称で知られるその銃は、浩二も何度かグアムに行った時に撃ったことがある。それに、過去にあったとある事件で、自分が使ってしまった忌々しい武器でもある。
一瞬嫌な思い出が過ぎり、危うく投げ捨てるところだったが、遠くから何かが来るのを見て我に返った。
「あれは何だ?」
荷物を全てバッグの中に詰め、ガバメントは腰のベルトに差し込んだ。紅剣は手に持ったまま、姿勢を低くしながら、待ち構える。
「隠れてても無駄だ。出てこい」
カチャリ。
嫌な音が浩二の耳に響く。そのまま手を挙げて立ち上がると、目の前に拳銃を構える少年がいた。
「村まで来るんだ」
浩二はなす術もなく、2キロほど先にある村まで連行された。
◆◇◆◇◆
村は閑散としていた。人はいるにはいるが、何故か厳つい男ばかりである。しかも全員何らかの武器を携行している。
「質問がある」
「何だ」
「俺は一体何をしたんだ」
「すぐに分かる」
浩二は少年に質問したが、少年はぶっきらぼうにそう答え、拳銃の整備をしていた。
だが浩二は不思議に思っていたことがいくつかあった。
まず、連行されてここで囚われているわけだが、何も取り上げられていないことだ。普通なら武器は当然取り上げられているし、最悪の場合は全て没収される。だが、浩二は先ほど腰のベルトにねじ込んでおいたガバメントも、手に持っていた紅剣も取り上げられていない。
さらに、先ほどから村がざわついている。閑散としているが、それでもどこか慌てているような、命が狙われているような―――。
ドォォォンッ!!
凄まじい爆発音が浩二の耳を劈いたのとほぼ同時に、村の男たちの怒号が聞こえた。
「さて、ここであんたの名前を聞かせてもらおう」
少年は、先ほどの爆発音をまるで聞いていなかったかのような冷静さを保ちながら、拳銃に弾薬を装填した。
「俺の名前は……吉樹浩二だ」
すると、少年はにやりと笑った。
「そうか。俺はエピ、よろしくな」
エピと名乗った少年は、浩二に手を差し伸べた。握手を交わそうと思い、浩二も手を出そうとしたが、2度目の爆発音でやむなく中断させられた。
「とりあえずここから出よう。話はそれからだな」
浩二は頷くと、走って建物を出ていくエピの後を追った。




