51話 クラウスト再潜入
日が昇り、世界が色を取り戻す。
だが、樹海は光を通さず、暗闇が常に広がっていた。
その中に、黒い戦闘服を纏った暗殺者がいた。
◆◇◆◇◆
スラム掃討作戦があったのは、つい昨日の話だ。
国王の暗殺を実行する為に侵入した場所が、このスラムにある《搬入口》だということらしい。
その搬入口を仕切っていた組の幹部が処刑され、掃討作戦は終了した。穴を塞ぐ工事は明日から始まるらしく、このスラムには人気があまりない。
銃を持ったスラムの住人は、国軍からの依頼で搬入口周辺の警護を任されていた。
「誰だ?」
樹海の中に、人影を見つけた住人は、銃を構えた。
だが、敵だと認識した時には、既に体が寸断されていた。
「……悪いな」
暗殺者、吉樹浩二は、難なくクラウストへ侵入した。
◆◇◆◇◆
スラムを抜けると、近くの民家に入った。
そこで浩二は、国軍の暗い部分を目の当たりにした。
その家の住人である婦人が、今にも犯されそうだった。頬が赤く腫れているところを見ると、殴られたようだ。
その近くには射殺された男の死体があった。おそらくこの婦人の夫だろう。
木製のドアを蹴破った浩二は、ズボンを下ろしていた兵士の首に手刀を打ち込み、そのまま奥にいた2人の兵士を紅剣とエピ・ソードで斬殺した。
手刀を打ち込まれ、地面にのた打ち回る兵士の左腕を思いっきり踏み抜いて骨を砕く。
「死ね」
そして、声にならない悲鳴を上げた兵士の首を掴むと、そのまま潰した。グシャッ!という音がした時には、既に兵士は死んでいた。
「……あ、あの」
死んだ兵士の首が地面に落ちて数秒の沈黙があった後、後ろで座っていた婦人が話しかけてきた。
「礼はいらない。俺は国王を暗殺しに来ただけだ」
そう言って浩二はその家を出ようとした。だが、その婦人に袖を掴まれた。
「待ってください。あなたは、吉樹浩二さんですよね?」
「何で俺のことを知ってるんだ?」
「……この街では、あなたは英雄になってるんですよ。レイン・フィアーを倒したのは国軍ってことになってますけど、封鎖された地域に何人か住人が潜んでいて、そこで浩二さんがレイン・フィアーを倒したところを写真に収めていたんです。国軍は口封じのためにこうして家を回って、悪事を働いているんです」
この時浩二は、国軍に激しい怒りを覚えた。国王を暗殺する理由が、また一つ増えた。
「お礼になるかどうか分からないんですけど、国王のいる塔には地下から入れるっていう話を聞いたことがあります」
「地下から?」
「はい、地下にはいざという時の為のシェルターなどがあるらしくて、そこに行くために、塔からそのシェルターまでに秘密の地下道があるらしいです。噂程度の事なので本当かどうかは分かりませんが」
「……参考になった。探してみる」
「良かった……では、健闘を祈ります」
婦人はお辞儀をした。
「必ず倒してみせる」
そう言って、浩二はその家を後にした。




