5話 死後の世界
暗闇を彷徨っていた。自分が吉樹浩二だと言うことと、既に死んでいること以外は何も分からない。感情も何も出てこない。
だが、暗闇は一瞬にして消え去った。下腹部に、強烈な痛みを感じた。それと同時に、何だか生き返ったような気がした。無意識に目を開けると、まず見えたのは、満天の星空だった。
「目が覚めたか」
浩二は体を起こし声のする方を見た。
身長は180センチほどか。黒衣を纏い、顔はフードで覆われていて良く見えないが、眼光が鋭いのは分かった。
「私はラヴォル。神だ」
いきなりの衝撃発言に、しばしフリーズした浩二だったが、頭の中の整理がついたところで、一つ質問をした。
「俺はいまどういう状況にいる?」
それを聞いた、ラヴォルと名乗った男は、鼻で笑ってこう答えた。
「お前を蘇生して、今こうして話してる。ただそれだけだ」
この瞬間、浩二は大きな溜息をついた。
◆◇◆◇◆
20分後、ようやく浩二は今の状況を理解した。
まず、襲撃されて本当に殺されたこと。そして神を名乗るラヴォルと言う男が実際に蘇生したということだ。
話が終わり、もう一度溜息をついた浩二は、いくつかの疑問が頭の中にあった。
まずは、生きているならここは地球なのか。あとは蘇生の方法を説明していた時に上がってきた《スキル》というのはどういうものなのか。
浩二はそれらをラヴォルに全部質問した。すると、数秒ほど考えた後、こう答えた。
「残念ながらここは地球じゃない。死人が生きて戻ったら……どういうことが起こるか、分かるだろう?」
「……そうだな」
「そして、スキルについてだ。ここからが本題と言ってもいい」
ラヴォルは台の横に立て掛けてあった棒のようなものを持ってくると、浩二に投げ渡した。
「まず、この世界に来た人間たちには、3つの力を与えている。そのうちの1つが、《スキル》だ。スキルは大きく分けて3種類ある。《操作能力系スキル》と《戦闘系スキル》、そして《特殊スキル》。先ほどの蘇生は、特殊スキルの1つだ。俺は人じゃない。スキルを創った神だ。だからこうして死んだ人間を生き返すとかいうスキルを行使できるんだ」
ラヴォルは不意に懐から何かを取り出した。
「もう1つの力、というより武器だな。それが《神崩》だ」
「神を崩す……力?」
「そう。今渡したロングソードは、《紅剣》という名前の神崩だ。抜いてみな」
言われたままに、浩二は鞘から剣を抜いた。
刀身はおぞましいほどに赤黒く、そこに深紅色の斑点が浮かぶ。だが、先端に行けば行くほど刃が透き通っていき、鋭くなっていく。
「普通に使っても申し分ないほどの威力と斬れ味だ。だが、それをさらに強化していくのが、3つ目の力《属性》だ」
「属性?」
その言葉を聞いた時、浩二は中学時代にやっていたゲームを思い出した。
「属性は8種類。火、水、緑、風、光、闇、幻、無。1人に1つの属性が与えられる。試しに手を上に翳して力を込めてみろ」
いきなり言われても…。と、浩二は少し困ったが、仕方なく言われた通りにやってみた。
左手を上に翳し、力を込める。すると、頭の中で何かが湧き上がってくるような感覚がした。それは全身を包むと、やがて左手に注ぎ込まれていく。
目を開けると、驚愕の光景が目に浮かんだ。
手の上に、光の玉が現れていたのだ。白銀に輝くそれは、良く見ると粒子のようなものがたくさん集まっているのが分かる。
「それが、属性だ。ちなみにお前の属性は幻属性だな。レアなのを引いたじゃないか」
「レア……ねぇ」
確かに珍しそうだが。と思いながら、浩二はふと気付いたことがあった。
「そういや、結局ここはどこなんだ?」
その質問をした瞬間、ラヴォルは先ほど懐から取り出した、筒状の物を放り投げた。
「今から行く場所は、ヴェルタイトと呼ばれる島国だ。まぁ細かいことは、現地人に聞くんだな。それと―――」
ドォォォォ!!
最後まで聞くこと無く、浩二はラヴォルが放った、途轍もない光と音を放つスタングレネードをまともに喰らい、意識を失った。




