48話 激昂
「ぎゃぁぁあ!」
芽衣の死体を撃とうとした兵士の心臓を、黒い影のようなものが突如貫いた。
さらに、芽衣の腹部を貫いていた、あの硬いはずの金属棒が、さらさらと砂のように溶けていき、やがて地面に消えた。
そして、死んだはずの芽衣が、起き上がった。
炯々とした両目は、別の銃を構えている兵士を竦ませるには十分だった。
―――浩二、殺れ
そんな幻聴が聞こえた瞬間、浩二のスキルは一気に解放された状態になった。
瞬時に紅剣のみを抜き、両脇と後ろの兵士を木端微塵にする。その後前方に跳躍、芽衣に威圧された兵士2人を斬り、同じく木端微塵にした。
「な……!」
周りの兵士が動揺している。だが、浩二と芽衣を止めることはできない。
◆◇◆◇◆
「ったく、面倒をかけさせやがる」
スキンヘッドの男はそう言いながら、近くにいた国軍兵士を片っ端から撃ち抜いていった。
持っているのはMP7A1というサブマシンガンで、サプレッサーを装備している。
その横にいる女は、背中にSR25を背負い、G17を構えながら歩いている。
「あの桜木芽衣っていう女は、覚醒状態だわね。ここにいたらおそらく私たちも巻き込まれるわよ」
「……そうかもしれないな。ただ、俺たちはその桜木芽衣の死体を回収しに来たんだ。ここで引き下がるわけにもいかないだろ。それに、あいつなら囲んでる国軍の兵士たちを全滅させられるさ。あの攻撃ヘリすらもな」
星空が広がる上空にある黒い影を見ながら、スキンヘッドの男は笑みを浮かべた。
◆◇◆◇◆
「退避しろ!」
瞬間、先頭にいた兵士たち約50人の一斉射撃。だが眼前で途轍もない重力の壁が全ての弾丸を地面に叩きつける。
浩二はその隙に跳躍。先頭にいた兵士たちを跳びこえ、奥で撤退しようとしている兵士たちを切り刻んでいく。
エピ・ソードも抜いた浩二の周りには、肉片と鮮血が散らばる。兵士たちは走って逃げるが、それでもすぐに追いつかれ、地面に肉片が散らばっていく。
30人ほど倒したところで、浩二の周りに黒い影のようなものが稲妻のように走った。それは遠くに逃げていく兵士たちをまとめて串刺しにして、息の根を止めていく。一瞬にして100人以上の仲間が死ぬ惨状を目の当たりにした兵士たちの中には、足が竦んで立ち上がれなくなった者が大半だった。それを浩二が無慈悲に殺戮していく。手加減などと言うものは無かった。
◆◇◆◇◆
気付けば周りには誰もいなかった。代わりとばかりに、上空には攻撃ヘリが待機していた。
黒いその機体の両翼には、M134ガトリング砲が1基ずつ。
微かなモーター音が、浩二の耳に入る。
だが、次の瞬間、そのヘリは真下に墜落していた。
爆風が、逃げていく兵士たちをもなぎ倒していく。
そして、気付けば両手にそれぞれガトリング砲を持った芽衣の姿があった。
「ガアァァァアアアアッ!!」
激昂した芽衣は誰にも止められない。今の浩二ですら、恐怖で動くことが出来なかったのだから。




