46話 撃破
芽衣は死んだ。即死だった。
浩二は受け入れがたいこの事実に、先ほどの何倍もの怒りと憎しみが込み上げてきた。それは自分への怒りであり、また、レイン・フィアーへの憎しみであった。
紅剣に、辺りの景色が鮮明に見える程の輝きを放つ幻属性が纏わりつく。そして左手に持ったエピ・ソードには、その輝きをも呑み込む赤黒い闇の霧のようなものが纏わりついていた。
そして浩二の全身が、揺らめく炎のようになった幻属性を纏わせていた。
◇◆◇◆◇
例え全員が裏切ったとしても、約束だけは果たして死んだ。その意思は、浩二のスキルの真価を発揮させるには十分な効力を持っていた。
砲弾のような速度で地面を駆ける。レイン・フィアーは金属棒を持つと、その軌道上を薙ぎ払うように腕を振る。長さ4メートル半はある金属棒の先端は、このまま行けば浩二の胴体を消し飛ばすことも容易だった。
だが、浩二はその手前で跳躍した。そして、そこで分身が生まれた。
分身は属性によって生み出されるもので、攻撃を直撃させても分解されるだけの存在だ。分身の身体能力は、スキルを行使している浩二と同じ状態なので、実質攻撃力は倍増していくことになる。
現在の分身は2人。そして3方向から一気に攻撃を仕掛けられたレイン・フィアーは、抵抗しようとするが、所詮無駄なあがきだった。
それぞれが独立した頭脳を持つ分身は、戦闘用としての機能しか有していない。だが、その分戦闘時に於いては絶大な威力を誇る。
両腕を分身が斬り落とした。だが、赤熱化した断面からは見覚えのある触手が生えた後、また同じ形に再生する。そして、レイン・フィアーは金属棒を振るい、分身を一気に2つとも消し飛ばした。
だがここで、レイン・フィアーは気付く。
浩二の姿がどこにも見当たらない。音や光、気配すら感じない。
「ここだ」
声が聞こえ、レイン・フィアーは頭上を見上げる。
そして次の瞬間、頭部から2本の線が現れ、そして爆発した。
◆◇◆◇◆
紅剣とエピ・ソードを同時に振り下ろし、レイン・フィアーの頭部から下腹部までを一気に切り裂いた浩二の技は、見事にレイン・フィアーの《核》を破壊し、息の根を止めていた。
だが、喜ぶことは出来なかった。
今回の戦闘で、浩二は大事な仲間を喪った。そして、解放軍からも見放された。そして今、この場所が殲滅地帯であることを、浩二は忘れていなかった。
辺りには1000人近い国軍兵士が集結、包囲している。
さらに上空では、攻撃ヘリが旋回している。スナイパーも四方から狙っているため、逃げることは不可能だろう。
どうするか、浩二が打開策を考えようとした時、不意に死んだはずの芽衣の手が、ぴくりと動いた。
◆◇◆◇◆
「レイン・フィアーの撃破を確認。途中で乱入した桜木芽衣は死亡。討伐者の吉樹浩二はまだ生きています」
400メートルほど離れた場所にあるビルの上から、双眼鏡を覗く兵士は淡々と報告した。
『そうか。なら、全員で包囲して捕縛だ。抵抗するようなら全員撤退した後、吉樹浩二を攻撃ヘリの掃射で殺害する』
「了解」
無線を切った瞬間、音もなくその兵士は頭を撃たれて死んだ。




