45話 死を回避した暗殺者と、死にゆく戦友
もう、死んだものだと思っていた。
投擲された金属棒は、長さが2メートル。おそらく秒速200メートル程度の速度で飛んでくるだろう。レイン・フィアーから浩二までの距離は18メートルほどで、仮に投擲されたとしても余裕で躱せる距離だった。
だが、考えているうちに、金属棒は既に身近まで迫っていた。あと5メートルほどか。そこで気付いた浩二は、もう抵抗することも諦めていた。
怒り狂ってここまでやっていたが、まだ死んでいないのが不思議だった。ひょっとしたら、もう既に死んでいるのかもしれない。
◆◇◆◇◆
肩に、途轍もない衝撃が走る。浩二は左方向に大きく吹っ飛ばされ、地面に激突した。
そして、ここで、浩二の耳に3つの音が聞こえてきた。
ドスッ!という、金属棒が人体に突き刺さる音。ドサッ!という、誰かが跪く音。そして、ビシャッ!という、鮮血が撒き散らされる音。
自分がまだ生きているという実感が、数秒ほど無かった。
だが、次の瞬間、浩二は見てしまった。
「……?」
戦闘服を身に付けた、黒髪の女性。手には紫色の刀身の剣を持ち、腰のホルスターには、デザートイーグルが収められていた。
見覚えのある顔と華奢な体。その腹部を貫く、2メートルほどの金属棒。
暗い地面を鮮やかに染める鮮血は、これでもかというくらい、紅かった。
「う……うわぁぁああああ!!」
桜木芽衣。この世界に来る前からの友人で、この世界では共に戦った戦友だった。
全力で守る。そう約束した芽衣は、自分の命と引き換えに、浩二を守った。
星明かりが地面に出来た血溜まりに反射して照らされた芽衣の顔は、微かに笑っているようにも見えた。




