44話 廃校の校庭での戦闘
校庭には、6メートル以上ある巨人がいた。赤黒い肌に、手足と胴体に1つずつおぞましい眼がついていた。
先ほどから無数の銃弾がレイン・フィアーに着弾しているが、そんなのを気にすることもなく、ただじっと立っているだけだった。
そこに、浩二が現れた。戦闘服を着ているが、手には白銀の粒子を纏わせた紅剣と、赤黒い煙のようなものを纏わせたエピ・ソードが握られていた。
浩二は激昂していた。正気なんてものは既に無く、凄まじい怒りが、心の闇と共に渦巻いていた。
「さて、殺るか」
冷酷な笑みを浮かべた浩二、その視線の先には、虚空があった。
◆◇◆◇◆
「第3から第7部隊、撃て!」
ダダダダダダダダダダダッ!
国軍兵士が持つM4カービンが一斉に火を噴く。狙いはレイン・フィアーではなく、それを倒そうとする侵入者こと吉樹浩二だった。
だが、弾は眼前で全て弾き飛ばされる。浩二の意識下で、全身に纏った幻属性が全ての物理攻撃を弾いていた。故に、浩二は今、レイン・フィアーだけを強烈な殺意と共に凝視している。
―――ガァァァァァァァァアアッ!!
耳を劈く咆哮。国軍兵士たちは例外なく銃撃を止め、恐怖に怯える。だがそれを平然と受け流す浩二。レイン・フィアーはその巨体からは想像も出来ないほどの速さで浩二に迫った。
気付けば校庭の地面が抉れ、砂と土が高速で飛んでくる。浩二はそれを全て見切り、後ろに跳んで背中に三連撃を叩きこむ。直後にレイン・フィアーが振り向きざまに攻撃を放つが、それすらも紙一重で躱すと、脇から背中へと斬り込む。
切断した部分は赤熱化し、10秒もすれば完治する。だが、浩二はどこかしらに弱点があると踏んだ。
跳躍。それを追いかけるかのように、レイン・フィアーの腕が飛んでくる。追いつかれる直前に着地に成功した浩二は、そこからさらに跳躍し、レイン・フィアーの腕に飛び乗ると、そのまま駆け上がり、首筋に強烈な一撃を見舞った。
手応えはかなりあった。だが、レイン・フィアーの方はむしろ動きが活性化したような気がする。
突如、頭上から強烈な殺気。見上げる暇もなく、浩二は左に大きく跳躍。ざっと10メートルは跳んだが、それでもその攻撃からは逃れることが出来なかった。
◆◇◆◇◆
気付いたら倒れていた。砂埃が舞い上がり、周りがよく見えない。
起き上がり、近くに転がっていた紅剣とエピ・ソードを手に取ると、急に五感が覚醒した。
周りには金属製の棒が無数に刺さっていた。直径は全て30センチほどだが、長さは1メートル弱のものから4メートル近くあるものまで様々だった。
獣のような殺気が、その向こうからやってくる。浩二は右に走りだすと、砂埃に覆われた場所から抜け出し、そのまま一気にレイン・フィアーに向かって突っ込んでいく。
先ほどと違って、レイン・フィアーの手には金属の棒が握られている。長さは3メートル、当たれば即死だが、躱す事が出来れば問題ない。
予想を遙かに上回る速度で振り下ろされる棒は、地面に激突した瞬間に派手な音を立てて砕ける。浩二はそれを確認し、跳躍した。
今度は頭部を斬る。人間でいう後頭部に当たる部分を狙って一撃を加え、離脱。
これも先ほどと同様に手応えはあったが、やはり弱点ではないようだ。
では次は胸か。と考えた浩二は、ここで大きな過ちを犯したことに気がついた。
レイン・フィアーは棒を持っている。だが距離は20メートルほどある。相手側が距離を取ったようだ。
何も殴るだけが攻撃ではない。投擲するのも、立派な攻撃手段だ。
そこで浩二は、この攻撃は直撃すると悟った。この時、避けられない死の恐怖が、心の奥底から湧き上がるのを感じた。




