42話 流れ弾
レイン・フィアーは、分裂時には触手を生やして攻撃してくる。
浩二はその触手を断ち切ると、本体を直接攻撃しにかかる。だが、断ち切った際に出た血が降り注ぐ。それを躱すと、再生した触手が一斉に襲い掛かる。
魔物の血は猛毒だという。それに触れると、人間の場合は全身の血が一瞬沸騰し、爆散して死に至る。爆散した際に飛び散る血は《汚染された血》と呼ばれ、それに触れた者も同じ運命を辿る。
幸い空気中では5秒ほどで分解されるため、躱すことさえ出来れば問題は無い。逆に言えば、躱せる程の技量が無ければ、魔物討伐は不可能だということだ。
芽衣は断続的に重力の壁を作り、迫りくる触手を次々と潰していった。そしてそれを逃れて迫る触手は、芽衣の身体能力と反射神経によって躱され、剣で斬られる。
だが、本体に攻撃をしようとしても出来ないのが現状だった。浩二は触手を斬り続けながら、打開策を導き出そうとした。
「浩二、危ない!」
芽衣がそう叫ぶと同時に、浩二はバックステップ。直後、触手が勢いよく床に突き刺さり、渡り廊下の上部のガラス張りの部分が全て崩れ落ちる。
すかさず芽衣が魔物に重力を向かせ、落ちてくるガラスを高速で突き刺す。だがこれは目くらまし程度の効力しかもたないのを知っている。
音も立てずに浩二が消える。気付けば天井近くを浩二が剣を構えて跳躍していた。
「ハァッ!!」
気迫と共に繰り出される一撃。果たしてそれは、触手と共に本体にも届いていた。
ビシッ!という音を立てながら、赤黒い血が噴き出す。だがすかさず下部にある別の触手が、浩二の剣を思いっきり叩いた。
数メートルほど吹っ飛ばされたが、やがて減速し、着地した。
次の攻撃が来る。芽衣は身構え、浩二も同様に攻撃態勢に入る。
だが、そこで階下から悲鳴。同時に、チュインッ!という音が聞こえた。
それに気を取られた、ほんの一瞬。浩二と芽衣は、はっとして前方にいるレイン・フィアーの頭を見た。
そこには、淡い青色の光を放って消えていく、レイン・フィアーの頭があった。やがて数秒ほど経つと、先ほどまでの戦闘が嘘だったかのような静寂さに包まれた。
◆◇◆◇◆
七大将軍によるレイン・フィアー討伐作戦の時、合体して完全体になる直前に、とある兵士が誤って発砲したという。その弾は近くの壁に当たった後、流れ弾がそのままレイン・フィアーに当たった。そしてまさにその直後、いきなり淡い青色の光に包まれ、消えたという。
◆◇◆◇◆
「……狙撃、失敗。流れ弾が、レイン・フィアーの頭に着弾」
冷静に報告する兵士は、そんなことを知る由もない。ボルトアクションライフルであるM700を伏せて構えていた彼は、静かに立ち上がり、そして驚愕した。
青白い光が、天から降り注いでいた。その先にあるのは、広々とした、廃校の校庭だった。




