41話 降り注ぐ恐怖 ――rain fear――
魔物には、スキルと同じようにCからSという4段階のランクがある。C級は比較的温厚で、ほとんど危害を加えない魔物。B級は危害を加えるが、比較的小さく討伐しやすい魔物。A級は大規模な魔物討伐部隊を組んでも倒せるかどうかという強さの魔物。そしてS級は、そもそも人が倒せるレベルではないという。
ヴェルタイトにはかつて七大将軍というものがいて、クラウストに舞い降りた災禍の根源となったA級魔物を討伐する作戦があったそうだ。大規模な軍が7つ。それぞれの大将軍が率い、クラウストの中心部、今となってはローがいる塔の辺りに出現したA級魔物を討伐しようとした。
しかし、軍はほぼ全滅。直接攻撃を仕掛けた、ローを含む7人の大将軍のうちの1人が、強烈な攻撃に当たり、即死した。
七大将軍は、その日に解散し、ローは国王となり、他の5人はどこかに散っていった。
その時に出現した魔物の名前は、恐怖を具現化したような存在だった為、レイン・フィアーと呼ばれた。
恐怖を体現したかのようなその姿は、脚、胴、腕、頭の4つにそれぞれ眼がついており、それぞれが独立した脳を持ち、それぞれが個々に行動する。ある程度ダメージを受けると、それぞれが合体し、6メートルほどの巨人に変化するという。ただそれを見たのは、あの七大将軍の人間だけである。
◆◇◆◇◆
音を立てて、浩二たちがいた廃校の体育館の屋根が破壊される。
体育館の端の方で休憩していた9人は、同時に立ち上がり、戦闘態勢に入ったが、この魔物を見た途端、全員の動きが一瞬止まった。
2メートルはある、赤黒い皮膚を纏った《腕》が出現した。静かに浮いており、手の甲の部分には、おぞましい眼が1つずつ付いている。
「レイン………フィアー?」
芽衣が明らかに動揺していた。いや、浩二を除く全員が、動揺していた。
「説明してくれ、こいつは何なんだ?」
浩二はわけが分からなかった。だが、これが相当危険な状況にあるということだけは分かった。
「説明している時間は無い……俺がこいつを殺す。朱雀、援護を頼む。他の奴は、別の場所に行って胴と脚と頭見つけて各自撃破だ」
静かにそう言い放った軸座は、次の瞬間、驚くべきことに姿を現した。
灰色の外套を纏い、顔はフードで覆い隠されている。体格や身長は浩二とあまり変わりはないが、鋭い殺気を放っている。
手には真紅色のフランベルジュ。浩二と同じく白銀の粒子を纏わせている。
「行け。武運を祈る」
◆◇◆◇◆
浩二と芽衣は、2階の渡り廊下にいた。本当は浩二が単独で動こうとしたのだが、芽衣がついてきたためこうなった。
他の全員は既に交戦しているらしく、地響きが鳴りやまない。
芽衣からある程度魔物というのはどんなものなのか聞いておいた。まだ分からないことが多いが、浩二は何故か勝てる自信があった。
銃は持っていない。いや、ガバメントだけは念のため隠し持っているが、魔物には銃弾が全く効かないということで、持っていた他の銃は体育館に置いてきた。今は紅剣とエピ・ソードの2本のロングソードだけだ。
芽衣も同じような剣を持っていたが、刀身が青紫色で、黒い粒子を纏っている。
「来るぞ……」
低く構えた浩二は、にやりと笑う
レイン・フィアーの最大の頭脳にして、最も物理攻撃に乏しいイメージの《頭部》が、空中浮遊しながらこちらに近づいてくる。
赤黒い皮膚に、ギョロリとしたおぞましい眼が、殺気を放ちながらこちらを凝視している。
2人は一気に踏み込むと、相手が咆哮を上げる前に斬りかかった。




