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Assassin  作者: 兎鈴
4章 暗殺任務
39/57

39話 嵌められた者たちの容赦ない殺戮

 クラウストに、銃声が響き渡る。

 いや、単発の銃声なら日常茶飯事だ。だが今日の銃声は、まるで戦争をやっているかのような断続的な銃声だった。

その真っ只中にいた9人は、それぞれ単独行動を取っていた。浩二は知らないが、全員序列が30位以内だ。ただの潜入チームだと思って油断した国軍の精鋭部隊たちは、次々に殺されていく。


◆◇◆◇◆


 軸座は単独で動いていた。

 暗殺者と空間操作能力を持つ軸座は、その特性を利用して存在を完全に消し去る。さらに、念には念を入れ、光学迷彩を施した外套を羽織っている。

 足音が聞こえたかと思えば、すぐそばの路地から完全武装の兵士が3人。どうやら精鋭部隊のようだ。

 軸座は手に持っていたクロスボウを撃った。ほぼ無音で放たれた矢が、1人の兵士の首を貫いた。


「何だ!」


 流石は精鋭部隊だ。音にすぐ気付き、こちら側に銃を向けてきた。

 だが、その瞬間にクロスボウの矢が刺さった兵士が爆散した。鮮血が舞い、肉片がボトボトと音を立てて落ちてくる。


「よぉ」


 真後ろから声がかかる。兵士は戦慄した。いくら精鋭でも、こんなものを見せらた日には平常心などあったものではない。


「き……貴様、酷霊軸座か!?」

「ほう、俺のことを知ってるのか。ならこいつが死んだ理由も分かるよな?」

「え………あっ!」

「残念ながら手遅れだ。その《汚染された血(ブラッド・ポイズン)》に触れたものは例外なく爆散して死ぬ。ただ、お前たちは俺のことを知ってたみたいだしな。この血で死ぬのは回避してやろう」


 その瞬間、バスッ!という、アルミ缶を潰すような音が2回聞こえた。

 血溜まりの上に、2人の兵士が音を立てて倒れる。どちらも側頭部を撃ち抜かれていた。


「ただ、殺さないとは一言も言ってないけどな」


◆◇◆◇◆


 同時刻、別の場所では、希留と筑璃、それに月菜と雷希が加わり敵を殺戮していった。

 グロック18を持った希留は、敵に突っ込んでいく。相手の射線を躱し、至近距離まで近づいた瞬間にフルオートで片っ端から頭を撃ち抜いて殺していった。容赦ないヘッドショットで、地面に脳漿と血がぶちまけられる。

 遠くから、不規則な金属音が聞こえる。ビルの上に登って敵の確認をしていた月菜が、その音の正体を確認する。


「戦車1台に装甲車が4台、その後方に重武装兵が100人近くいる!」


 絶望的な物量だ。普通の人間なら、撤退をしているだろう。

 だが、月菜を含んだ4人は、にやりと笑った。


「雷希は月菜のところに行って、筑璃は裏取り!」

「「了解」」


 雷希は敵から奪い取ったRPG-7を担ぐと、筑璃と共に近くの路地に消えた。


「……さて、殺るか」


 いつの間にか手に持っていた日本刀は、焔に包まれていた。


◆◇◆◇◆


「始まるぞ。俺たちも援護だ。朱雀と言ったか、付いてこれるか?」

「当然だ。俺を誰だと思ってる」

「威勢のいいことだ、なら付いて来い」


 瞬間、翔の姿が消えた。いや、視界から消え去ったのだ。

 朱雀はすぐに翔を捉える。そしてその後に付いていくように、朱雀もビルから飛び降りる。


◆◇◆◇◆


 クラウスト内に、爆発音が響いた。

 国軍は待機させていた戦車やらを使うことにしたらしい。

 しかし、ただの戦車ではない。まるで絶対に勝てるとでも言っているような自信に満ち溢れた白色のボディ。そして特徴的な、2本のレールが飛びだしている主砲。


「……ライトニングストームか」


 希留は日本刀を構えながら、舌打ちをした。

 先ほどの爆発で、希留が隠れている建物から後方20メートルの場所にある建物が吹き飛んだ。レールガンの威力は伊達ではない。このまま出ていけば当然即死だろう。

 秒速2キロほどで撃ち出される飛翔体を避けるのは物理的に不可能。そもそも目視で確認することすら不可能だ。

 だが、希留は顔が歪むくらいの笑みを浮かべていた。

 誰がこんなことを思いつくのだろうか。

 

―――こんなの、避けるまでもない。


 不意に、ライトニングストームの主砲の射線上に躍り出る。

 希留の持つ日本刀は、業炎に包まれて緋色の輝きを放って入る。


「さぁ、かかって来いッ!」


 瞬間、まるでタイミングを計ったかのようにライトニングストームの主砲が動く。97メートル先、ほぼ一瞬で照準を終えたレールガンは、即座に充電を開始…終了。電磁を纏ったレールが、遂に火を噴く。

 そこから先は、刹那の出来事だった。

 発射から着弾まで、僅か0.05秒にも満たない。拳銃の弾ですら蠅が止まるほどの速度だ。

 業炎を纏う日本刀は、発射時には動いていなかった。ここからでは物理的に間に合わない。

 だが、ここで物理法則を凌駕する現象が起こる。

 日本刀が、消えた。

 正確には、射線上に日本刀が投げ出されたと言った方が正しい。

 そして驚くことに、希留の姿も消えていた。

 ドォォォン!!!

 発射音と着弾音が同時に鳴り響く。

 敵はさぞかし当たり前のように、希留を屠ったと思っていただろう。

 しばらくして、爆発で飛散した粉塵などが消え、辺りが晴れた。

 地面には、無傷の日本刀だけがただ忽然と地面に突き刺さっていた。


「雑魚が」


 敵はまだ気付いていなかった。

 希留が行った出来事を。

 そして、今から起こる殺戮を。


◆◇◆◇◆


 道幅は13メートル。それを容赦なく埋め尽くす炎の壁が、突如として現れた。

 属性というのは、スキル自体を強化したり神崩に強力な力を与える以外にも、属性単体で攻撃や防御を行うと言った芸当も可能だ。

 希留の持つ属性は炎。しかもかなり上位の技を、いとも容易く使いこなす希留は、流石としか言いようがない。

 驚く兵士たち。だがさらに驚くことが起こる。

 片っ端から、音もなく重武装の兵士たちが血飛沫を上げながら死んでいくのだ。

 そしてそれに呆気を取られている兵士もまた、何も分からずに死んでいく。

 同時刻、炎の壁から、日本刀を持つ希留が現れる。それを再補足したライトニングストームの主砲は、次の瞬間、爆発と共に粉々になった。

 ビルの上に、筒状の物を担いだ人の姿があった。

 ライトニングストームの攻撃力は圧倒的だ。だが同時に、装甲が薄いという大きな欠点もあった。

 不意を突けば、RPGでも破壊できる。それを雷希は知っていた。


「私の出番は、あんまりなかったみたいだね」


 気付けばライトニングストームの後ろ側で待機していた装甲車には、全て大穴が空いていた。さらに後ろにいた重武装の兵士たちは、全員首を切られていた。おそらく兵士に関しては月菜のスキルで殺ったのだろう。 


◆◇◆◇◆


 圧倒的な戦闘は、また別の場所でも繰り広げられていた。

 ズドン!という大きな足音のような音と共に、物陰に隠れていた兵士たちが押し潰されるようにして死んでいく。

 重力を操る芽衣は、その能力で遠くの敵を殺していく。浩二は近くにいる敵をただひたすらに殺していく。

 神崩は使わない。浩二は背中にエピ・ソード(エピの持っていた剣のことで、作戦前に呼び方に困っていたので勝手に付けた)があるが、それすらも使わない。浩二が今手に持っているのは、ベレッタM92Fだ。

 9mmパラベラム弾を使用するこの銃は、装弾数が15発。複列弾倉ダブルカラムという、互い違いに2列に銃弾を収める方式を採用している為、グリップは太いが装弾数は多い。やはり特徴的なのは、銃の上側、スライド部分が大きく切り取られていることだろう。

 反動軽減に、動作不良を起こしにくいというこのデザインは、スライドの強度に問題がある。だが解放軍は抜かりなく、その辺もしっかりと強化してあるらしい。

 目の前に2人。アサルトライフルを構えている。

 浩二はマガジン交換を終えたばかりのベレッタの銃口を向けた。だが相手も動きが素早く、浩二が撃つ前にどちらの銃口からも火が噴いた。

 ババンッ!という銃声が鳴った。着弾と同時に、血飛沫が上がる。

 浩二はその場に立っていた。本人は気付いていないが、スキルが解放された状態になっていた。

 遅れて、バタバタと2人の兵士が倒れた。どちらも眉間を綺麗に撃ち抜かれている。


「芽衣、今のうちだ!」


 叫ぶ。するとそれに呼応するかのように、芽衣は近くにいた敵の兵士の頭を掴み、まるでトマトのようにぐしゃりと音を立てて潰した。


◆◇◆◇◆


 銃声は、日が沈むと途端に消えた。

 というのも、精鋭部隊を全滅させられ、これ以上の戦力低下はよろしくないという、ローの判断によって、急遽捜索大隊を結成し、街の至る場所に配備した。

 9人はそれぞれ銃撃が止んだタイミングで身を隠し、そこからは隠密行動で、例の廃校を目指して移動した。

 幸い、誰にも気付かれること無く全員が廃校に集まることが出来、そもそも見つかることのない軸座に関しては、食糧の調達もしていたという。

 今日の殺戮劇は、凄まじいものだった。だが、誰1人として落ち込んでる者はいなかった。むしろ水を得た魚のように、生き生きとした表情をしていて、浩二自身も、少しだけ心が晴れた。

 廃校内は、静寂に満ちていた。

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