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Assassin  作者: 兎鈴
4章 暗殺任務
34/57

34話 国王暗殺計画

 ヴェルタイトは、5つの第二都市と中心都市がある。それらを全て掌握していたのが、現在も中心都市クラウストに身を潜めている国王の《ロー》と呼ばれる男だ。

 元々はこの国全域を収める王で、国民からの評判もかなり良かった。だがそれも10年前にあったある出来事で全てが破壊される。

 スキルと呼ばれる謎の力を発現した者たちが次々と現れ、事実上の独裁国家が崩れ始めたのだ。思惑が崩されたと悟った翌年、ローは国全体に散らばっていた自軍の中から、特に優れた能力を持つ兵士たちを1万人ほど引き連れて、中心都市クラウストに籠城した。

 半径30キロはあるクラウストの周囲に50メートルの防壁を築き、そこに3000人の守備兵を配置し、警備に就いている。

 今まで幾度となくミラ軍が侵攻していたのにも関わらず、全て撃退したことから、現在のクラウストを《無敵の街》と言う者は少なくない。

 街中の至る場所にAIを搭載した速射砲やミサイルポッドが設置されており、仮に防壁が破られたとしても迎撃できるシステムが整っている。

 ただ、クラウストに籠ってから9年が過ぎた今、解放軍及びミラ軍。その他、国を乗っ取ろうとする少数の武装集団たちに対してそれらが使われたことは無い。そもそも、クラウスト内部での作戦行動が不可能だと言える。

 そして、解放軍はある情報を掴んだ。

 仮に突破できたとして、ローのところまで行けたとしても、決して殺すことはできない。

 ローと言う男は、この世界に存在する《属性》の力を反射する能力を持つ。

 では物理攻撃なら、と思う。だが、ローは国王であると同時に、ヴェルタイト国七大将軍に数えられるほどの実力を持つ。

 しかしこれも、あくまで仮の話だ。そもそも城壁を突破すること自体、不可能に近いのだから。


◆◇◆◇◆


 浩二が目を覚ました時には、既に朝方だった。日はまだ昇っておらず、鉄格子が嵌められた小さな窓の向こうが微かに白み始めたのが見える。

 そして、ほぼ同時に部屋のドアが破壊される勢いで開く。浩二はベレッタを抜き、構えた。


「……浩二、どういうこと?」

「何だよ、芽衣か」


 銃を下ろす。すると、灰色の戦闘服を着た芽衣が、何かを浩二に投げた。

 キャッチすると、ずっしりとした重みがあった。良く見れば、この世界に来て最初に手にした拳銃のガバメントだった。


「任務の内容が決まった。もうすぐ出発するから、1階の食堂に集まって」


 そう言って、さっさと出て行ってしまった。

 浩二は受け取ったガバメントに弾が入っているのを確認すると、腰のベルトの部分に隠すようにして差し込んだ。


◆◇◆◇◆


「……以上だ」


 佐倉希留、という女が標的のローについて一通りの説明を終えると、そこには沈黙があった。

 特に、事前の極秘会議なしでいきなり国王暗殺と告げられた浩二と朱雀は、顔を伏せてしまった。


「まぁ、そう落ち込むな。クラウストの状況は、この国王によって大分悪化している。それを取り除けば、おそらく英雄になれる」


 軸座はそう言って励まそうとする。一瞬だけ、軸座が単独で潜入して暗殺すればいいのでは?という考えが浮かんだが、それもすぐに消える。


「属性反射……かなり厄介だね」


 今回の暗殺で一番の問題点は、防壁突破などよりも、ローの持つ特殊な技である《属性反射》だ。

 この世界には、火、水、緑、風、光、闇、幻、無という8つの属性があり、この世界に誘われた者たちには、神崩と呼ばれる近接武器、スキルと言う特殊能力、そして属性と言う3つの力が与えられる。

 属性は、神崩に付与して強力な技を繰り出したり、または自身のスキル強化、さらには属性単体での攻撃、いわゆる魔法のような使い方が可能となる。

 そして、属性反射というのは、その属性をことごとく反射して相手にダメージを与えるという、何とも卑劣な技だ。

 スキルは大きく分けて《攻撃系スキル》と《操作系スキル》。そのうちの操作系スキルの中には、攻撃を弾き返すというスキルも存在するが、そもそもスキルを持てるのは地球から来た人間だけである。

 この世界に初めからいる、この世界の住人達は、スキルと言う力を持たない。

 だからこの時、浩二は一瞬眩暈がした。

 そう、この世界の住人の《ふり》をして、スキルを行使しない、自分たちと同じ所から来た浩二の友人。そして今となっては敵になってしまった、佐藤輝。

 思い出す。呑み込まれる。


「浩二」


 そこで、肩に何かがぶつかるような感覚。

 我に返った浩二は、全身冷や汗だらけだった。


「吉樹浩二、あんたの思ってるようなことは無い。少なくともあれはスキルとは別種の《特殊能力》。だからそこまで心配知る必要はない」


 軸座に見透かされたように言われた浩二は、一度深呼吸した後、座りなおした。


「すまない」

「気にするな。あれだけの重傷だったんだ。むしろここで動けているのが不思議なくらいさ」


 何を言っているのかがよく分からなかったが、浩二は安堵の溜息を吐いた。


「よし、お前らの方の話もこれくらいにしておけ。今から国王暗殺計画の作戦内容について発表していく。一度しか言わないから、しっかり頭の中に叩きこんでおけ」


 そう言うと、佐倉希留は作戦内容について話し始めた。

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