28話 夜明けと共に
凄まじい銃声と爆音は、一晩中鳴り続けていた。カルマの住人はほぼ全滅し、生き残った住人たちは地下にあるトンネルなどから別の街へと避難していった。
そんな激戦区でもあるヴェルタイト第二都市カルマ。日が昇り始めた現在、浩二たちを乗せた軍用トラックはキルゾーンとなっている大通りを爆走していた。
運転は月菜、荷台では応急処置のおかげで何とか動き回れるようになった朱雀が固定されたM2重機関銃で後方から追っかけてくるミラ軍の兵士たちを斃していく。
建物の陰から撃つ敵や、朱雀が撃ち漏らした敵に関しては、芽衣の狙撃によって片付けられていく。
「後方から2人。私が片付ける」
トラックに積んでおいた狙撃銃、M40A5が火を噴く。
次の瞬間、後方で大きな爆発が起こった。おそらくエンジンを撃ったのだろう。
ガガガッ!という音が前方でした。月菜が悲鳴を上げる。
「どうした!」
朱雀がM2を放して月菜の方へ向かう。それを待っていたかのように、後方から一斉に銃弾の嵐が襲ってきた。
「チッ!」
舌打ちした芽衣は、腰のポーチから手榴弾を取り出した。ピンを引き抜くと、それを思いっきり投げる。
ドォン!
金属片が、後ろから迫る追手たちを木端微塵にする。すかさず芽衣はポーチからもう1つ、別の手榴弾を取り出すと、同じようにピンを引き抜き、投げた。
スモーク。煙幕だ。爆発した煙幕手榴弾は、大量の煙を吐きだし、視界を遮る。
「もうすぐ出るぞ!」
運転席の方から、朱雀が叫ぶ。
安堵の溜息を吐くことは無い。芽衣は油断なくM40A5を構えなおすと、ボルトアクションを行う。空薬莢が排出され、新しい弾が薬室に装填される。
そして、遠くのビルから狙っている狙撃手の頭を照準し、引き金を引く。
血飛沫を上げて、ビルから落下するのを確認した芽衣は、ここで初めて安堵の溜息を吐いた。
トラックは無事、キルゾーンから脱出し、同時にカルマからも脱出した。
◆◇◆◇◆
カルマから2キロほど離れた場所にある臨時基地にいた佐倉希留は、部下からの報告により全てを把握していた。
カルマ侵攻の指揮を執ったのが、ミラ将軍本人だったことと、偶々カルマにいたスキル保持者4人とミラが交戦したこと。そして、ミラ将軍が撤退命令を下したこと。
「全部隊、撤退せよ。繰り返す、撤退せよ」
無線でそう言った希留の声は、微かに怒りが感じ取れた。
報告では、吉樹浩二の回収は成功したという。ただ、スキルの《副作用》によって、今は意識が無いらしい。
死ななければいいのだが。
「よし、帰るぞ。急いで支度しろ。支援部隊は私に付いて来い、もう一仕事だ。銃を持て」
部屋の出入り口周辺に座っていた支援部隊員20人は、立ち上がり、敬礼をした。




