26話 思考停止
ガキィン!という甲高い衝撃音が鳴り響く。浩二は一瞬唖然としたが、直後にM2重機関銃が火を噴く音で我に返った。
浩二は何とか力を振り絞ってその場から離れると、青竜刀を構えた輝の元に大口径の弾が殺到。それを何発か青竜刀で弾き、回避する輝の顔は、今までに見たことの無い、獣のような顔だった。
着地し、剣を構える浩二。だが視界がぐらつき、立っているのも精一杯な状態だった。この緊張感が無ければ、気を失っていてもおかしくない。
「残念ながら、俺はまだ生きれるみたいだな」
浩二はそのまま踏み込んだ。先ほどよりは明らかに速度は落ちていたが、それでも通常の人間が出せる速度じゃない。そのまま一体化したような状態で剣を同時に振り下ろす。
だがそこで、これが失策だったと気付く。もう遅い。
視認するのがやっとの斬撃が、下から迫りくる。だがそれは浩二を狙っているのではなく、浩二が振り下ろした剣を狙っていた。
ゴォォン!!
属性が互いにぶつかる音が響き渡った。衝撃で飛びだした属性の粒子は、地面を抉り、吹き飛ばしていく。まるで散弾のように、無数の穴が広場の石畳で出来た地面に出現する。
「ハァッ!」
気迫と共に、浩二は振り上げられた輝の青竜刀を上から抑え込もうとした。だが輝は何事もなかったかのように、無言でそれを吹き飛ばした。
グシャ!という、壁に叩きつけられる音がした。
そして、ガシャガシャ。二振りの剣が地面に落ちる音がした。
「……堕ちたな。俺も、お前も」
静かに、そして怒りに満ちた輝の声が聞こえた。
◆◇◆◇◆
「俺はお前の実力を見誤っていた。弱すぎるぜ、浩二」
輝は青竜刀を鞘に収めると、懐からサバイバルナイフを抜いた。
「いや、確かにそこら辺のスキルを持つ人間よりは強い。お前は初めて俺をここまで追い込んだ。だがそれも、俺がスキルを使わなかったからだ。そこまでして弱者を徹底的に潰したいか?そこまでして、自分の命を守りたいか?」
「弱者……ッ!」
「そうだ。お前はあの時も、自分の命が惜しいから、そんな理由であいつと無抵抗な一般人を殺した!違うか!」
怒り、ではなく、半ば愉しむようにして輝は言い放った。浩二は目を見開き、そして怯えるようにしてそれを否定しようとした。
「違……、違う。俺は、そん、な………!」
「そんなお前に朗報だ。あいつはこの世界に存在する」
瞬間、浩二の頭の中に過去のある出来事がフラッシュバックした。
「俺は……」
プチッ。
辺りが暗闇に閉ざされた。浩二の意識は、次第に漆黒の濁流へと流されていく。
◆◇◆◇◆
「いや、実際のところ本当に肝を冷やされた。スキル未使用でここまで追い込まれたのは、ストーム・デザイナーとアブソリュート・コントローラー以来だ。だが、致命的な弱点だったな」
独り言のように呟く輝は、右手に持つサバイバルナイフを振り上げた。
そして、勢いよく、浩二の心臓目がけて振り下ろした。




