23話 刹那の戦闘
ドンッ!という衝撃音が響き渡る。左手に持った剣で浩二は腕に伝わる衝撃を跳ね返すようにして剣を振るうと、その遠心力を利用して右手の剣を振るった。
だが、朱雀も同じように浩二の剣を受け止めると、そのまま押し返した。
2人は互いに次の一撃を躱すため、一気に10メートルほど下がる。剣を構えながら、浩二は苦笑した。
「口だけじゃないのは分かった。だが、考えが甘すぎる」
浩二は一気に踏み込むと、さらに後ろへと下がろうとした朱雀の真横に移動。そこから右手を振るうと、剣ではなく、肘打ちを喰らわせた。
「がッ!」
朱雀はその場で倒れそうになる。だが、何とか踏みとどまると、真横にいた浩二の首目がけてバスタードソードを振った。
それをあらかじめ予想していた浩二は、一気に腰を落とすと、朱雀の脇腹に強烈な頭突きを見舞った。
そして朱雀はバランスを保とうとしたが、浩二が間髪いれずに回し蹴りを放ったため、そのまま地面に倒れた。
この方法は、前に暗殺者殺しの麓城封鬼と対峙した後に、月菜に教わった技だった。
あの1ヶ月間、傷を癒すためだけではなく、トレーニングも兼ねてた浩二は、暗殺者殺しの特性を月菜から教えてもらった。そして、傷がある程度癒えてきてから、素手のみで行う簡単な技を使用した実戦を何度かやっていた。
「さて、ここを通してもらうぞ」
浩二は朱雀を近くにあった縄で縛ると、そのまま武器庫の中へと入っていった。
「ねぇ、何で殺さなかったの?」
月菜は不思議そうに問う。それに対し、浩二はこう答えた。
「嫌なことを少しだけ思い出しただけだ」
「……そうなんだ」
ふと、月菜は浩二の顔を見た。いつもと変わらない表情だったが、ほんの少しばかり苦しそうな表情をしてるようにも見えた。
◆◇◆◇◆
武器庫に入ると、浩二はあまりもの武器の多さに絶句した。内部にはコンテナが無数にあり、コンテナの中にも武器や弾薬が入った木箱が大量に入っている。壁側には棚があり、そこには銃の部品やアタッチメント、防弾盾や防弾チョッキなどの装備品も大量に置いてあり、手榴弾なども一式置いてあった。
「浩二、驚くのはいいけど、早めにここを抜け出さないと敵に見つかるわよ。とりあえずトラックを出すから、鍵を探してきて」
「分かった」
浩二は武器庫の奥の方へと行こうとする。瞬間、地響きのような音が外からした。
「何だ!」
外へと走り出す浩二を、月菜は手を差し出して制した。
「落ちついて。外に行っても、死ぬだけだわ。それより早くここから脱出しましょう」
「いや、ここで別れよう。この気配はヤバい。俺たちを狙ってる。俺が囮になって時間を稼ぐから、月菜はトラックで先に脱出してくれ」
月菜の手をどけた浩二は入口まで走ると、急に止まった。そしてしゃがんだかと思ったら、すぐに立ち上がった。手にはナイフを持っていた。
「冥夜朱雀とか言ったな。お前もあいつと脱出しろ。なんか変なことやらかしたら、殺すから覚悟しとけ」
浩二は朱雀を立たせると、腰からガバメントを抜いて差し出した。
「使え。弾薬はコンテナの中だ」
そう言い残すと、浩二は走ってどっかに行ってしまった。
残された2人は顔を見合わせると、互いに溜息をついた。
◆◇◆◇◆
浩二は走り続ける。あの尋常じゃない気配の持ち主は、必ず殺しにやってくる。
血と硝煙の臭いが漂うカルマの街を走る浩二は、ふと前の広場が騒がしいことに気付き、足を止めた。そして二振りの剣を抜くと、音を立てないようにして広場へと近づく。
その時、後ろから凄まじい殺気を感じ取った浩二は、広場へと飛び出した。
「な……!!」
剣を構えたまま立ち止まる。敵は10人。AK47を構えて立っている。だが、浩二はそこに驚いてはいない。この人数なら、数十秒あれば事足りる。
問題は、目の前にいる大男だった。
黒衣を纏い、背中には二振りの青竜刀。そしてこの顔には、見覚えがあった。
「浩二、久々だな」
何度も聞いた声は、安心感を覚えるはずだった。しかしそれを許さぬほどの殺気を纏った大男は、唖然とする浩二の前で青竜刀を抜いた。




