20話 激突直前
日が昇る。朝がやってきた。
運転手はお礼にと、積んでいたMP7A1を2挺とマガジンを3つずつ渡した。そしてカルマに着くまではゆっくりしていてくれと言うことだった。2人は救出後、トラックの荷台で食事を取った後に仮眠をとった。
浩二が起きると、車は停まっていた。運転手は外に出て、双眼鏡で遠くの様子を見ていたところだった。
「何かあったのか?」
静かな声でそう言うと、運転手は双眼鏡を渡してきた。
「これ以上は行けない。カルマの様子がおかしい」
浩二は渡された双眼鏡で、遙か遠くに見えるカルマの街を見渡す。実際に見るのは初めてだが、最初に言われた賑やかな街とは程遠いように見える。しかも銃を構えて警戒する兵士たちの姿が、所々で見られる。
「よし、俺たちはここから徒歩で移動する。世話になったな」
「いや、こちらの方こそ助けてくれてありがとう。だが、いいのか?」
運転手はおそらく心配してくれているのだろう。だが、浩二は首を横に振った。
「問題ない」
そう言い残し、トラックの荷台で寝ている月菜を起こすと、カルマの方へと歩いていった。
◆◇◆◇◆
トラックを降りてから2時間。徒歩で移動していた2人は遂に、カルマの街の近くの森に辿りついた。目の前にはカルマを囲う壁が見える。その前に、AK47を持った2人の兵士たちが警戒をしている。
「ミラ軍の兵士だ。おそらく俺たちが今出てけば敵と勘違いして撃たれる可能性大だな」
「ならこうすれば、問題解決じゃない」
不意に月菜が腰のMP7A1を抜いた。そして浩二のMP7をサッと奪い取ると、森の中から一気に壁の前にいる2人の兵士のところまで距離を詰めた。
「動くな」
銃口を突き付ける。2人の兵士は大人しく地面に伏した。
「強引だが、確かに問題解決だな」
浩二は森の中から出ると、月菜から自分のMP7A1を受け取った。
「さて、お前たちには聞きたいことがある」
◆◇◆◇◆
第二都市カルマから北に2キロほどの場所にある小さな村に、戦闘服を着た兵士が100人ほど集結していた。住んでいた人たちは怯えていたが、特に手出しはしておらず、子供たちは何も知らずに遊んでいる。
そんな中、1台の車から1人の女が降りてきた。背中に背負っている鞘には、日本刀らしきものが収められており、手にはグロック18を持っていた。
全員が一斉に立ち上がり、敬礼をする。
「……よし。全員休め」
女の掛け声と同時に、兵士は全員敬礼を解いた。
「私はお前たちが所属するヴェルタイト解放軍第一攻撃師団を指揮する、佐倉希留だ。今日集まってもらったのは無論、ミラ軍の南部攻略を阻止するためである。先ほど第二都市のカルマがミラ軍の大規模攻撃により占領された。我々は今すぐにカルマへと突入し、街の至る場所にいるミラ軍を殲滅させる。いいか、死を恐れるな。お前たちは解放軍の中でも場数を積んできた猛者たちだ。だから信じろ、お前たちなら必ず生きて還ってこれる!」
佐倉希留と名乗った女は、頭上に向けてグロックの引き金を引いた。銃声が辺りに木霊す。それを聞いた途端、100人の兵士たちの目つきが鋭くなるのを感じた。
「今こそ、我が解放軍の力を見せつけてやれッ!」
こうして、100人の兵士たちはカルマへと向けて突撃していった。村に残ったのは、佐倉希留と今到着したばかりのスナイパーだった。SR25が入ったケースを渡すと、希留は少し微笑む。
「桜木芽衣、報告を」
「……山脈付近の村がミラ軍の前線基地に。ここに戻る途中には別働隊が既に動いてました。それと、スキルを持ったものが2人、近づいています」
桜木芽衣と呼ばれたスナイパーの女は、無表情のまま報告を続けた。
「おそらく、呉射月菜と吉樹浩二かと」
「……ほう。もしかしたら、カルマに突入しちゃってる可能性もあるわけか。なら、やることは1つ」
希留は1メートル以上はある金属製のケースを持ち上げると、芽衣に手渡しながらこう言った。
「呉射月菜を救出して。ついでに吉樹浩二も仲間にしておきたいから連れてこい」
「了解」
ケースを軽々と持ち上げた芽衣は、そのままカルマの方角へと走り去っていった。
3月29日:誤字を修正しました。指摘してくださった方、ありがとうございます。




