11話 山頂での出会い
2時間後、山頂付近まで進んだ浩二とエピ、そして結局浩二が担いでいる少女の3人は、木の影に隠れていた。
時々バスッ!という音と一緒に木が揺れる。
「というか、まさかばれてるとはな。しかも相手は凄腕のスナイパーと来た。笑えねぇ」
「とにかく、俺がまた突破口を開くしかないな」
「殺すなよ」
「分かってる」
浩二は少女を地面に下ろした。だが、先ほどから激しく動いているからか、少女は目を覚まそうとしていた。目を覚ましてしまえば、また痛みに苦しむことになってしまう。
「やばいこのままじゃ……」
「大丈夫だエピ。そうなる前に話はつける」
「分かった」
バッ!
足に力を込めた浩二は、一気にその力を解放して、木の影の外へと躍り出た。瞬間、山頂の方から火が噴くのが見えた。
ガキンッ!
飛んできた弾を剣で弾く。先ほどとほとんど変わらない衝撃に、浩二は若干だが顔を顰める。
そのまま直線に、ではなく、間にある木々を利用しながら、音もなく狙撃手の方へと走っていく。
そして、2発目が放たれた。だが、今度は木の幹を穿った。浩二はその隙に、狙撃手の目の前に移動した。
「全員動くな!手を挙げろ……」
山頂に出た途端、浩二は驚愕した。トラックが2台停まっており、片方のトラックには先ほど兵士が言っていたEMP爆弾が積まれていた。しかも予想を上回る大きさだった為、万が一敵が銃を撃ち、流れ弾が当たった場合、考えたくないことが起きてしまう。
それは相手も同じだったらしく、浩二の指示に大人しく従った。
「何が目的だ」
手を挙げたスナイパーは、冷静にそう言った。それを浩二は、鼻で笑った。
「衛生兵がいるはずだ。そいつに用がある」
◆◇◆◇◆
山頂には先ほどの兵士が言った通り、ミラ軍の第20特殊小隊に所属している3人が待機していた。どうやらここが拠点だったらしく、食糧や医療器具までもが揃っていた。当然EMP爆弾も置いてあり、タイミングを見計らってあのUAV、ジェノサイドドラゴンを鹵獲しようとしていたらしい。
本来はこの後に来る解放軍の偵察だったらしいが、どうやらあのUAVが草原にいる敵を全部殺してしまったので、結局解放軍は基地に帰ったらしい。
なのでもう用済みなのだ。と先ほどのスナイパーは言う。
スナイパーは《ソル》と名乗り、EMP爆弾が入っていないもう一つのトラックへと案内してくれた。そこには、ソルのスポッター兼近距離戦の達人という《レイ》、そして浩二たちが探していた衛生兵の《メグ》という女がいた。
「……弾は抜けてる。けど、血が結構出てるみたいね。このまま放置してたら危ないわ」
メグは少女の容態を見るなり、そう言ってきた。
「ただ、応急処置のおかげであと2日は持つわ。とりあえず、この場から脱出して近くの病院に行かないとダメだわ。安静でいられる場所がないと、この子も可哀想だし」
言うなり、メグはレイに車を出すように言った。
レイは素早くトラックの荷台から降りると、すぐに運転席へと向かった。腰にはMP5Kが吊るしてあった。
「そういえば、あれは放置しててもいいのか?」
エピはEMP爆弾があるトラックを指差した。
「あれはもういいわ。仮に爆発しても、おそらく被害は少ないと思うから」
「……そういう問題なのか?」
まぁいいや。と、エピは結論付けた。その瞬間、トラックは動き出した。
「よし、下るぞ」
ソルは意味ありげに笑った。最初はエピも浩二も何だか分からなかったが、数分後には、その意味が嫌というほど理解出来た。