第一話、変な人
男
「あーっいい天気だ。」
ある一人の男がつぶやいた。その男は田代という名字で、緑川高校の三年生である。今は夏休みで、昼間から子供たちや若妻がたくさんいる公園で、ただ独りベンチに座って空を眺めている。彼には友達が居ないのだろうか・・・。 田代
「ΖΖΖ・・・。」
暑すぎず、程よく暖かい陽気に誘われ、田代はベンチに横になり眠ってしまった。 ・・・・・ 田代(寝すぎた) 田代が目を覚ました頃には、空はもう夕焼け色に染まり、公園にもほとんど人が居なくなっていた。 田代
「・・・・・。」
田代は寝起きでぼーっとしていた。ちょうどその頃、田代と同じくらいの年頃の女の娘が、公園の前で何かを探している様子である。その女の娘は今にも泣きだしそうな顔をしている。 田代
「んっしょっと。」
田代はベンチから立ち上がり家に帰るために歩き始めた。 ドンッ 田代が下を向いてトボトボ歩いていたので、探しモノをしている女の娘にぶつかってしまった。 女の娘
「あっ、すいません。」
女の娘は小さな声でつぶやいた。 田代
「どーしたの?探しモノ?」
田代は優しい口調で言った。 女の娘
「えっ、ハイ。」
田代
「何探してんの?サイフ?サイフだったら金一割くれ。」
田代はあたまを掻きながら言った。 女の娘
「えっと、サイフじゃないよ。下敷き落としちゃって。・・・その下敷きには、友達からの寄せ書きがいっぱい書かれてるの」
その下敷きは女の娘がここに引っ越すときに高校の友達に寄せ書きを書いてもらった、女の娘にとってとても大切なものである。 田代
「探そっか?オレも」
女の娘
「でも・・・いいの?」
田代
「べーつに。どーせヒマだし。・・でも九時までには帰りてぇーな。渡鬼(渡る世間は鬼ばかり)みたいし。」
田代は時計を見つめながら言った。