突然の来訪者!?
「彼女が欲しい!」
俺は大崎隆也、十五歳、青春真っ盛りの高校一年である。
日々の悩みをぶちまけようと、とりあえずそう叫んだ。
が、いきなり頭を叩かれた。
「いってぇ……なにしてくれるんじゃ、バカ力が!」
とっさにそう言ったらまた叩かれた。ていうか痛くね?
痛い。これは痛い。脳細胞、どれくらい死んだんだろうか。
そう思っていたら、俺を叩いたであろう人物の声が聞こえた。
「全く……女子に向かってバカ力とは、失礼極まりないとは思わんのか?」
おぉ。見事なキューティクルな美声。いや、むしろ可愛い声だな。
甘えられたら、ぐっと来そうな声だ。しかし、まぁ内容を否定するつもりはなく、
「事実を言ったまでぶるふぁ!?」
言った途端に今度は頬を打たれた……良い腕をしてやがる。
ちなみに俺はマゾじゃない。……違うからな!? そんな疑いの目を向けるなよ!
俺は今月から高校生となった、至って普通の学生なのだから。女子とムフフとまではいかないまでも、健全なお付き合いの経験のないやつが普通かは分からないがな!
ところで、ここで問題が一つ。
「つかさ、どちら様ですか!?」
俺は目の前にいる、見覚えのない少女に疑問を投げかけた。
なんすか、この子。めっちゃくちゃカワユイんですけど!
思わずそう思ってしまった。
俺の胸くらいまでの背に、愛らしい童顔。……身体の発達は残念だが、逆にそれがアクセントになってやがる。
なにこの生き物は。例えロリに趣味はない俺でも、なぜか可愛いと思ってしまうなんて!
世の中には、まだまだ不思議が一杯だな。
で、バカな考えはとりあえず置いておいて、目の前にいる絶世の美幼女(幼女なのが、ものすごく残念ではあるが)は、小ぶりな……むしろ無い胸張ってこう言った。
「恋のきゅーぴっど、とやらだ!」
なにそのどや顔。憎たらしくない顔で、とってもお似合いですよ!
って、ちょっと待て。
「……はい? なんだって?」
俺が耳を疑うのも無理はなくね?
「だから、恋のきゅーぴっど、なのだ!」
なのだ! じゃねぇ!
自信を持って、いきなり何を言い出すんだろうか。
「あのね、お嬢ちゃん。嘘はダメだよ?
君はどう見たって、幼女じゃないらふぁがっ!?」
「嘘ではないぞ。真面目な話なのだからな」
くっ……平然としながら、また俺を叩きやがった!
俺は別にマゾじゃないんだからな!?
勘違いしてんじゃねぇ!
「だが可愛いから許す」
「ん? なにを言っておるのだ?」
「いや、なんでもない」
ロリコンと思われるのは心外だ。
おいおい、首を傾げて、ん? とかやるなよ、反則だろぉ!
くそっ……俺の理性が危ういぜ……。
「それでじゃな、大崎隆也の恋の指南役として、今日から住み込むのだ!」
な・ん・だ・と?
「おぉ! マジですか!
是非是非、俺に明るい春を呼んでくださ……ってえええ!?」
このロリータはなんて言った?
「住み込む、だって?」
「そうじゃ」
だから、笑顔になるなって。
変な語尾も気にならなくなるとか、もう……反則なんだって!
しかし住み込むか……。
「これはこれは。そんな美味しいシチュを逃すわけには……げふんげふん。そ、そんなことが、許されるわけがないじゃないか!」
危ない危ない。ついつい本音が。いや俺はロリコンなのではなく、ただカワユイ女子が住み込むということに関して心ときめくのである。
決して変態ではない!
「む……なぜじゃ?
問題はなにもないはずじゃぞ?」
すっとぼけてやがる。
だがなぜだ、可愛いさ故に勝てそうにない。だがしかし!
「そもそもな、ここは俺の部屋だぞ。なんで堂々と居座ってるんだ?」
男には、言わねばならない時があるのだよ。
「なんでって、言われてもの……キチンと玄関から帰ってきたぞ?」
「え……帰ってきた? はぃ?」
不法侵入の間違いじゃね?
と、思っていたのだが……。
「もう、隆也! 何を騒いでるの! ユキちゃんと仲良くしなきゃダメじゃない!」
はい、母親からのこの注意。ユキちゃん? 誰ですか、その人は。
そんな人は家族には居ませんヨ。
マイマザーは、いつの間に老化してきているんだ。
「ほら、問題ないではないか」
その発言を聞いた俺は、恐る恐る指を目の前のどや顔少女に向ける。
「ユキちゃん……?」
俺が問い掛けると、幼女は満足そうに頷いた。
「うむ。気安くユキ様と呼んでいいぞ!」
俺には、それにツッコミを入れる余裕は無かった。
「ええええええ!?」
これは夢でしょうか。いいえ、現実です。