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第54話 暴走と純白

白と赤黒の魔力が衝突した瞬間――


荒野が爆ぜた。


衝撃波が砂を吹き飛ばし、地面がひび割れる。

空間そのものが軋み、空気が悲鳴を上げる。


キューブの放った純白の魔力。

ベルクシスの赤黒い深層魔力。


二つの力が真正面からぶつかり合い、荒野の中央に巨大な爆心地を作り出した。


砂嵐が巻き上がる。

視界が白く染まる。


だが――


次の瞬間。


キューブの身体が弾き飛ばされた。


「っ……!」


白い光が乱れる。


荒野を滑り、砂を削りながら転がる。


地面に激突。


演算核が軋む。


肩口から血が流れ落ちた。


砂煙の向こうから、ゆっくりとベルクシスが歩いてくる。


「なるほど」


低い声。


「確かに出力は上がったようだな」


キューブが膝をつく。


「……演算、継続」


ベルクシスは小さく笑った。


「だが、それだけだ」


一歩踏み出す。


赤黒い魔力が荒野を覆う。


「この空間ではな」


波が広がる。


暴走領域。


キューブの魔力が膨れ上がる。


制御が崩れる。


魔法が――


歪む。


「……!」


キューブが放った魔法が途中で膨張し、軌道が狂う。


ベルクシスの横を逸れ、荒野の遠方で爆発した。


轟音。


ベルクシスが鼻で笑う。


「無意味だ」


腕を振る。


赤黒い波が叩きつけられる。


キューブの防御式が砕けた。


衝撃。


身体が宙を舞う。


地面に叩きつけられる。


「キューブ!」


ヒジリが叫ぶ。


砂煙の中。


キューブは動かない。


ベルクシスが近づいていく。


「理解しただろう」


ゆっくりと手を掲げる。


「この空間では制御が意味を持たない」


赤黒い魔力が収束していく。


巨大な魔法。


「精密な魔法ほど暴走する」


キューブの身体が微かに震える。


演算核は砕けていた。


内部構造が崩れている。


視界が赤い。


それでも。


「……演算、継続」


立てない。


ベルクシスが嗤った。


「終わりだ」


その瞬間――


キューブの身体が消えた。


ベルクシスの眉がわずかに動く。


「……?」


次の瞬間。


キューブは後方に立っていた。


その隣で、ハツキが腕を下ろしている。


「……移動する・苦痛(ペインムーヴ)


キューブの身体から血が消えていく。


砕けていた演算核が再構築される。


完全修復。


キューブがゆっくりと目を開く。


「……?」


ハツキが肩を回した。


「さすがに、もう黙って見てられない」


キューブが周囲を見回す。


「……回復、可能なのですか?」


「うん。ついでにちょっと試してみた」


ハツキが荒野を見渡す。


赤黒い魔力が満ちている。


「この暴走魔法ってさ」


砂を踏む。


「結局、出力を無作為に上げるだけなんだろ?」


ベルクシスが目を細めた。


「……何を言っている」


ハツキは肩をすくめる。


「だったらさ」


キューブを見る。


「ボクの回復とか強化も、無作為に上がるよね」


一瞬の沈黙。


キューブの瞳がわずかに揺れた。


「……解析開始」


周囲の魔力を観測する。


暴走領域。

出力上昇。

制御不安定。


だが――


ハツキの魔法は違う。


構造が単純。

干渉が少ない。


つまり。


「……成立します」


ベルクシスが笑った。


「くだらん」


魔力が膨れ上がる。


「そんな小細工で覆る差ではない」


その瞬間。


キューブの周囲に白い光が灯る。


今度は違う。


純粋な補助魔法。


身体強化。

魔力増幅。

演算補助。


ハツキの強化が――


暴走空間で膨張する。


数倍。


数十倍。


ベルクシスの眉が動いた。


「……?」


キューブがゆっくり立ち上がる。


今度は。


身体が揺れていない。


「理解しました」


白い光が収束する。


「この空間は」


一歩踏み出す。


「魔法を暴走させているのではない」


演算核が高速回転する。


「ええ。正確には――出力上限そのものを一時的に押し上げているようですね」


キューブが手を掲げた。


白い魔法陣。


だが。


今度は止めない。


制御を。


「ならば――」


キューブが呟く。


「利用可能です」


魔法を。


暴走させる。


白い光が膨れ上がる。


ベルクシスと同じ。


制御限界突破。


だが。


キューブは演算で軌道を補正する。


暴走の上に――


さらに暴走。


ベルクシスの笑みが消えた。


「……馬鹿な」


白い光が荒野を貫く。


今度は逸れない。


暴走による出力上昇。

ハツキの強化。

キューブの演算補正。


三つが重なった。


閃光。


ベルクシスの胸を貫く。


「ぐっ……!」


再生が始まる。


だが――


追いつかない。


キューブが静かに言う。


「理解しました」


魔法陣が空を覆う。


「貴方の能力は強力です」


白い光が荒野を満たす。


「ですが」


ベルクシスの身体が崩れる。


再生が止まる。


「その能力は」


キューブの瞳が光る。


「理解出来れば簡単に利用できます」


最後の魔法が放たれる。


白い奔流。


荒野を横断する。


ベルクシスの身体が、光に飲み込まれた。


沈黙。


やがて。


赤黒い魔力がゆっくりと消えていく。


荒野に風が戻る。


キューブが小さく息を吐いた。


「……戦闘終了」


ヒジリが呟く。


「暴走魔法の計算式を読み解いて……その暴走を利用した……?」


リーネが苦笑する。


「まあ、そんな感じだな」


キューブが振り向く。


「ハツキ様」


「ん?」


「助かりました」


少しだけ間を置いて。


「……感謝します」


荒野に、静かな風が吹いた。


――だが、その時。


消えたはずの赤黒い魔力が、

荒野の奥でわずかに揺れた。


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