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第50話 見えない襲撃者?

久しぶりに『おかしな宿屋』に戻って来た。


キューブはギルドの仕事をしばらく休んでいた為、

ギルドで仕事をしてから宿屋に戻る事になっていた。


キューブ以外のヒジリ、リーネ、ブランの3人と1匹でロビーに着くと、

「やっぱりここは癒されるね~♪」

ヒジリが鼻をクンクンとさせ、お菓子が置いてある方へフラフラと歩き出す。

それにつられリーネもお菓子のある方へフラフラと歩き始めた。


「お菓子は部屋に戻ってから! 夕ご飯食べられなくなるよ!」

ボクの忠告も耳に入らないのか2人ともお菓子を両手に持ち、

幸せそうな顔で頬いっぱいにお菓子を口に入れていた。


「ブランもあれ食べたいの」


エール一族の白き守護龍『ブラン』。

普段の大きさではさすがに宿屋に入れないし、他の人にも迷惑をかけてしまいそうなので、

リーネが魔法で小さくし、ボクの肩に乗せていた。

「いいよ。ヒジリの所に行って一緒に食べておいで」

ブランに微笑みながらそう言うと、嬉しそうにヒジリの元へ飛んで行った。


「平和っていいな。ずっとこのまま……」

そう呟きながらロビーの一角にあるソファに腰を掛けた。


最初は美味しそうにお菓子を食べ続けるヒジリ達を眺めていたが、

いつまで経っても戻ってこない。

心が広い男アピールの為、我慢したがさすがに1時間以上経過しては黙っていられない。


「ねえ? そろそろ部屋に戻らない?」

ヒジリ達から返事は無い。

お菓子に夢中で無視ですか???


「おーい! ヒジリさん? リーネさん? ブランさん?

聞いてますかー?」


返事が無い。

大声で呼びかけても、うんともすんとも反応が無い。

ロビーは人も多く、ざわついているため声が届いてないのかもしれない。

そう思いソファから立ち上がりヒジリの元に近付くと何かがおかしい。

お菓子を食べる手は止まっていないのに、目は閉じている。

ヒジリの肩を掴み、揺らして声を掛けるがボクの存在に気付いていないのかの様に、

お菓子を食べ続けている。

リーネもブランにも同じ様に、声を掛けたがヒジリと同じく反応が無かった。


「まさか……」

何者かの攻撃を受けている?

いつから?

急いで周りを見渡すが怪しい人物は見当たらない。


二重罠・強奪ダブルトラップ・スティール


・・・ 二重罠・強奪ダブルトラップ・スティール発動確認 ・・・

・・・ 対象:存在しません ・・・

・・・ 発動終了します ・・・


黒三日月(リュヌ・ノワール)じゃないのか?」


まずは落ち着け! そう自分に言い聞かせ深呼吸をする。

いつから様子がおかしくなった?


エハを倒した後は普通だったか?

継承する時は普通だったか?

リーネの魔法陣に乗った時は普通だったか?

キューブがギルドに戻った時は普通だったか?

宿屋に入る時は普通だったか?

お菓子を食べに行った時は普通だったか?


いくら思い出しても全部普通だった様に思える。

もう一度、ヒジリ達の方に視線を向け注意深く観察する。


目をつぶって食べているのはヒジリ、リーネ、ブランだけだ。

お菓子を食べている他の客は目を開け、満足したらその場から離れて行く。

やはりあの2人と1匹だけがおかしい。


二重罠・強奪ダブルトラップ・スティールで反応が無いなら、

三芒・強奪(トレース・スティール)を使うしかないか?

いや、それはまだ早い。

使った後、反動で動けなくなる。

解除してすぐヒジリ達が敵を見つけ、倒してくれれば問題ないが、

攻撃されている事に気付いていない可能性が高い。

そして説明してる間に敵に逃げられて、また攻撃されるのが目に見える。


冷静に考えろ。焦るな。

でもヒジリ達だけを狙って攻撃しているのだから、

いつボクに攻撃を仕掛けてきてもおかしくない。


あの魔法の言葉で……

ダメだ!結局ヒジリの攻撃で気絶してしまうだろうから何も変わらない。


いつも肝心な時にボクは何も出来ないのか?

護ると言ったのに何も出来ないのか?

ヒジリ……


その時、体の中で何かが弾ける感じがした。

「なんだ今の……?」

能力の代償で感覚が無くなってるでも何かを感じた。

体中を駆け巡る暖かい感覚。

頭の中で語り掛ける、優しい母の声。


「ハツキが大事に想う人を護れますように」


母の日記に書いてあった内容を思い出した。


「大事な人を護りたいと想う気持ちがあれば、

自分以外の回復も出来るようになるから」


ありがとう。お母さん……

自然と言葉が紡がれていく。


「我が名はハツキ=サンブライト。


全てを護る者(トゥー・シェリール)なり。


護るべき人に降りかかる全ての災いを振り払え。


拒否する光デマンティー・ルミエール


ヒジリ、リーネ、ブランにキラキラした光が降り注ぐ。

その光に他の人が反応しないと言う事は、ボクしか見えていないのか、

ボクと対象者にしか見えないのかはわからないが、今はそんな事どうでも良い。

早く戻ってきてヒジリ……


降り注いだ光がパンっと弾けると、ヒジリ達の動きが止まった。


「ヒジリ!!!」

ヒジリの元に駆け寄り、声を掛ける。

しかしヒジリの目はまだ閉じたままだった。

このまま目を覚まさなかったら。そんな思いが頭を過った。

不安と寂しさからヒジリを抱き締め、声を掛け続ける。


…… なにあれ?こんな場所で何してるの? ……

…… ママ?あのお兄ちゃんとお姉ちゃん何してるの? ……

…… 見ちゃいけません!!! ……


チラチラ。ボソボソと視線や話し声が聞こえる。

視線や声なんて気にしていられない。


「ん…… あれ!?」

ヒジリの声が耳元で聞こえた。

「ヒジリ! 大丈夫!?」

ずっと聞きたかったヒジリの声。

ほんの数時間がとても長く感じ、何日もヒジリの声を聞いてないように思えた。

良かった…… 無事で良かった。


抱き締められた状態のままのヒジリは周りをキョロキョロと見渡し、状況を把握しようとしていた。

状況を把握したヒジリは真っ赤な顔でカタカタと震え、声を上げる。


「きゃ~~~~!!!!!」

ヒジリの悲鳴に宿屋に居た警備兵がボクに駆け寄り、

腕を掴み上げられ身動きが取れなくなった。


「ちょ、ちょっと待って!

ボク、そのコと知り合い! ヒジリ!!ちゃんと説明して」


痛みを感じないボクの体に、鋭い視線が突き刺さる。


「ホント、ボクは何も悪い事はしてないんだって」


ボクの叫びが空しくロビーに響き渡った。

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