第5話 マジックアイテム(後半)
「この《微風の外套》はね。
“討伐ランク:A”の
風追いの鷹のドロップ《風斬りの尾翼》を、
“防具レベル:A”の防具屋で仕立ててもらう。
その後、止まない風が吹き続ける場所で30時間、
風を当て続けて――稀に出来上がるのが、この外套よ」
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~ 微風の外套:マジックアイテム ~
レア度:A
効果:
・装備者に合わせてサイズ変更可能
・風を体に纏わせ、装備者の身軽さを向上
・装備者の炎系攻撃力上昇
・装備者が受ける炎系ダメージを軽減
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「まぁ、こんなところね。どちらも、なかなかお目にかかれない代物よ」
「すっごいアイテムだったんだね!」
ハツキは、皮袋と外套を交互に、愛おしそうに見つめる。
「大切に使うのよ」
「そうだね! 形見だもん! 大事に使うさ」
「そろそろ行きましょ。もう少しで村に着くから」
「そうね。……変な人たちも集まってきてるし」
「ヒジリも気付いてたんだ」
「もちろん。こんなレアアイテム持ってるんだもの。
今までも、色々あったんじゃない?」
「あはは……やっぱり?
なんで、いつも知らない人に襲われるのか、不思議でしょうがなかったんだ」
その瞬間――
ハツキの足元に、錆びた鏃の矢が突き刺さる。
だが、それよりも早く。
ヒジリはハツキを抱え、後方へと移動していた。
「えっ!? なにがあったの!?」
「なにもしてないわよ。ただ、あなたを抱えて避けただけ」
優しくて柔らかい、まるで天使のような笑顔で、ヒジリは微笑む。
その表情に、ハツキは父のことを思い出していた。
優しく包み込んでくれる、あの笑顔を。
「そこで待ってて。すぐに終わるから」
そう言うと同時に、ヒジリの姿は、遥か前方へと移動していた。
「あんたら、なにしてくれんの?
あたしのカワイイ子にさ。
今ならまだ許してあげるから、どこかにお行きなさい」
ヒジリは、男たちに囲まれた状態で、そう言い放つ。
「コイツ、馬鹿か?
この状況が分かってねぇんだな!
それはこっちの台詞だぞ。
今なら許してやるから、さっきのガキから袋を取って、
その外套を寄越せ。
そして黙って、そこで股を開けや」
五人組の荒くれ者が、ニヤニヤと笑いながらヒジリを取り囲む。
「はぁ~~……疲れるなぁ」
ヒジリは、深く溜息をついた。
「今度から、こういう連中とは交渉しない。
有無を言わさず倒す。
……ハツキから見える位置だから、あんまり気が進まないけど」
銀色の軌跡が、空を切り裂く。
バタ。
バタ。
バタ。
ドサ。
四人の男が、その場に倒れ込んだ。
残っているのは、リーダーらしき男だけ。
「ねぇ? さっき、なんて言った?
……股を開け?
誰に言ったの? ねえ?」
ヒジリの口角が、わずかに上がる。
それは――悪魔の微笑だった。
「お、おま……その銀髪……ま、まさか――」
ドサッ。
ヒジリの綺麗な右腕が、男の顎を掠める。
「その二つ名、嫌いなのよ。
こんな美少女を捕まえて“バーサーカー”なんて。
まったく、嫌になっちゃうわ」
「準備運動にもならないわ」
そう呟き、ヒジリはハツキの元へ戻る。
「ヒジリさん! お疲れ様です!!
助けていただき、ボク、恐悦至極でございます!!」
ハツキは背筋をピンと伸ばし、
計ったかのような四十五度の角度で頭を下げた。
「やめて!! 普通にしてていいから!」
ヒジリは溜息を一つ吐く。
「あたしも狙われてたから、追い払っただけよ」
「追い払う? あれ、死んでない?」
「殺してないわよ! ちゃんと手加減してる!」
「でも、ヒジリの動き、すごく綺麗だった。
無駄がないっていうか……」
「え? あんた、見えてたの?」
「うん!
一人目は首に左の手刀、
二人目は鳩尾に右拳、
三人目は同じ鳩尾だけど膝、
四人目は顎に回し蹴り。
最後は、掌で顎を少し掠めただけでしょ?
何を話してたかまでは、聞こえなかったけど」
「お~! すごいすごい! 大正解!!」
えへん、と胸を張り、変なポーズを取るハツキ。
それを、呆れた目で見つめるヒジリ。
「……また変なのが来る前に、村に行くわよ」
ヒジリはハツキの手を取り、走り出す。
「あっ!!」
ハツキは、あることに気付いた。
「ボクの村、そっちじゃないよ」
盛大に転ぶヒジリ。
思わず、笑いが込み上げる。
二人は手を繋ぎながら、村を目指した。
それぞれ、別の思いを胸に秘めて。
――もう、手の温もりも感じられないのか。
なんだか、少し寂しいな……
――この子は、絶対にあたしが護る。
何があっても、この暖かい……手は離さない。
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~ハルの村~
「ボク……の村へようこそ!
ボクは、ヒジリを歓迎します!」




