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幕間 母からの手紙

『可愛い可愛い、私のハツキへ。


この手紙を、今のあなたはどんな顔で読んでいるのかしら。

ちゃんと元気にしていますか。

無茶ばかりしていませんか。


……きっと、しているわよね。

だってあなたは、昔からそういう子だもの。


美味しいご飯は、ちゃんと食べていますか。

誰かと一緒に、笑いながら食べていますか。

それとも、またひとりで、何かを背負い込んでいませんか。


お父さんとは、仲良くやっていますか。

あの人、本当に不器用で頑固だから。

優しさの伝え方が、下手で困るわよね。


でもね。

私はそんなお父さんと出会えて、

あなたが生まれてきてくれて――

本当に、本当に、幸せな人生だった。


あなたが生まれたあの日、

お父さんと二人で、こう約束したの。


「この子は、命に代えても守ろう」って。


……ねえハツキ。

ちゃんと、守れたのかな。

この日記をあなたが読んでいるということは、

少なくとも、そこまでは生きていてくれたってことよね。


それだけで、私はもう救われている。


私はね。

お父さんと出会う前は、

()に仕える一族――「アイナ一族」の娘として生まれて、

アイナの村で生きていたの。


生まれつき回復能力と自己回復能力が高くて、

回復系(ヒーラー)として、

怪我をした人や、病気の人を癒す毎日だった。


そんなある日。

傷だらけの男の人が、村に現れたの。


「近くに魔物の集落があった。倒してきてやったから俺を治せ!!」


……今思えば、本当に失礼よね。

最初は「なんて横暴な人なの」って思ったわ。


でもその人、

そのまま一年くらい村に居ついて、

ずっと魔物退治をしてくれたの。


強い魔物と戦える人が少なかった私達の村で、

その人は、いつも前に立って、

ボロボロになりながら戦ってくれていた。


戦いに行くたび、傷だらけ。

だから私は、回復のために一緒について行って、

回復して、また戦って、また回復して……。


その繰り返しの中でね。

私は、その人の“強さ”よりも、

その人の“優しさ”に惹かれていったの。


もう分かるわよね。

その人が――


ハル=サンブライト。

あなたのお父さんよ。


いつも無茶ばかりして、

いつも傷だらけで、

見ているだけで胸が苦しくなって……。


だから私は、()()に願ったの。


「どうか、ハルさんが傷を負いませんように」って。


その祈りから生まれたのが――

移動する・苦痛(ペイン・ムーヴ)の能力。


代償として、ウロボロスという黒い蛇がついてきてしまったけれど。

でも私の自己回復と、その代償がうまく噛み合って、

侵食は、ゆっくり、ゆっくりになった。


それでも十分だった。

お父さんが、前より少しだけ、無事で帰ってきてくれるなら。


そこから、お父さんはどんどん魔物を倒して、

村の周りは平和になっていった。


そして、危険がなくなった頃。

お父さんは自分の村に帰ることになって――

帰る前日の夜、こう言ったの。


「これからも、一緒にいよう」って。


……ずるいわよね。

そんなこと言われたら、断れるわけないじゃない。


だから私は、何も考えずについて行って。

その結果、生まれてきたのが――あなたよ。


ハツキ。


お父さんは、あなたを立派なトレジャーハンターにしたくて、

自分の技も、知恵も、全部教えてたわね。


上手くいかないと、すぐ「お母さ〜ん」って泣きついてきて。

でも上手くできた時は、

「お母さん、ボクできたよ!」って、あんなに誇らしそうに笑って。


……あの笑顔、今でも忘れられない。


本当はね。

私の回復能力も、教えたかった。


でも教えたら、

きっとあなた、もっと無茶な戦い方をしてしまうと思って。

それが怖くて、教えなかったの。


……ごめんなさい。

お母さんは、あなたに何も残してあげられなかった。


本当は、もっと一緒に居たかった。

もっと抱きしめて、もっと話して、

あなたが大人になるまで、

ちゃんとその姿を、この目で見届けたかった。


それでも――

あなたがこの世界で生きていくために、

ひとつだけ、残せるものがありました。


ハツキ。

あなたにも、回復系(ヒーラー)

アイナ一族の血が、ちゃんと流れています。


信仰が薄れても、

私達はずっと神に仕えてきました。


この魔法を解除できたのなら、

あなたはもう――

想像もできないほど、強くなったのでしょうね。


お父さんには才能がなくて、渡せなかったけど……

あなたなら、大丈夫よね。


だってあなたは、

私とお父さんの、大事な子供だもの。


だから、ハツキにあげます。

この力で、あなたが大切に想う人を、

どうか、最後まで護れますように。


あなたはきっと……

誰かを護るために、

自分を削ることを選んでしまう子だから。


せめてその時、

あなた自身だけは――

この世界から、失われないように。


――フェーリア=サンブライトの名の下に

ハツキ=サンブライトに継承します。


アイナ一族の血が途切れぬよう。

サンブライトの血と、アイナの血が流れる、

私達の――たったひとりの宝物へ。


自動・自己回復オートマティーク・ヒール


ハツキに、

()()()()()()のご加護を。


私も、お父さんも、

ずっと、ずっと、あなたを見ています。


あなたが泣いた日も、

迷った日も、

それでも前を向いた日も。


全部、ちゃんと見てる。


だから、ひとりで背負わなくていいのよ。

あなたはもう、ひとりじゃない。


大好きな、大好きな、私のハツキ。

あなたを心から、愛しています。


          フェーリア=サンブライト』


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