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第25.5話 あたしは…

リーネがキューブを抱えて寝ると言って、しばらく経つと、リーネの部屋が静かになった。


静かになって、ハツキに話し掛ける。

ハツキはあたしが料理をしていると、なにか満足そうな顔してソファでゴロゴロしている。


この部屋には、ご飯を作ってくれる便利な魔法もある。


でも――

あたしは、それを使わない。


包丁を握って、火を点けて、

味見して、少し失敗して、また作り直して。


だってそれくらいしか、

あたしが“人間らしく”ハツキにしてあげられること、ないから。


だから今日も、手作り。


「リーネ、ご飯食べないで寝ちゃったね。

疲れてたのかな」


なんて話を振ったら、なぜかハツキはあたしの体型の話をした。

結構、気にしてるのに。。。


前も、可憐なお胸とか言ってきたし!!!

思い出したらなんか腹が立って来たので、

ちゃんと制御の効く右腕でナイフを

頬ギリギリに狙って投げてやった。


そうしたらハツキは素直に謝ったのはいいんだけど…

次は言うに事欠いて締まってるって!!!


確かにお腹とか割れてるわよ!少し・・・

でもそこまでじゃ…ないよね?


でもヤッパリ腹が立つからちょっと脅しておこう。


「ほう、ハツキはリザーヴより先に倒されたいみたいね?」


ヤバいっ!制御が!!

うわ。ハツキ近い。

最近ホントすぐ傍まで行っちゃうんだよね。


でもここまでやっちゃったらもう引けない。

指でも鳴らしておこう。


ハツキは多分、あたしより速い動きで土下座をした。

あれ?ハツキって普通の人間よね?


綺麗とか美しいとか…

世界で一番かわいいとか♪


ヤバい。

顔が熱い。

恥ずかしい。

見られたくない。

早く台所に戻らないと。


「次、言ったら本当に倒すわよ」


またやっちゃった。

そこはありがとっていいなさいよ!あたし……


ハツキが変な事を言うから時間かかっちゃった。

お腹空かせてるだろうし、早く作ってあげなきゃ♪


出来た!

今日もハツキ美味しいって言ってくれるかな?


あたしは出来たばかりの料理をテーブルに運ぶ。


「「 いただきますっ!! 」」


ハツキは子供みたいに、たくさんほおばりながら、


「ヒジリの作ってくれるご飯はいつも美味しいよね」


って言ってくれた。


フフン♪

そりゃ愛情たっぷり入ってますからね。

恥ずかしいから少しって言うけどね。

ハツキに引かれたらイヤだし。


……なのに。


ハツキは、そのまま少しだけ手を止めた。

箸を持ったまま、視線を落として。


さっきまでの笑顔と違う。

ほんの一瞬だけ――不安そうな顔。


「……強くならなきゃ、だよね」


小さな声だった。


ハツキが不安そうな顔をしていた。


そうだよね。

まだなにもわからないものね。

世界の常識が壊れた日。

リザーヴ。


それなら一緒に強くならないとだよハツキ。


「大丈夫だよハツキ。

2人で強くなるって約束したでしょ?」


ハツキの顔が、少しだけ楽になって、

それから決心した顔になった。


その顔好きだよ。

ずっと見ていたいよ。


「ありがとうヒジリ」


どういたしまして。


食事も終わり、ハツキが片付けしようとしている。

いくら最上回復薬(エリクシル)で回復したとはいえ、

ゆっくりしてて欲しい。


そうだ!先にお風呂に入ってもらおう。


洗い物をしながら、さっきのハツキの顔が頭から離れなかった。


「一緒に強くなろうか…

一緒に…」


狂神化(バーサーカー)の使用制限があと1.2回。

今度バケモノ(・・・・)になったら

まだあたしはあたしで居られるのかな?


ん~ん。

ムリだよね。

だって記憶が無いんだもん。


それでもハツキを護ってあげれるよね。

あの姿から戻れなくなっても護れるよね?


でもハツキは優しいからきっと…

あたしの傍に居てくれるんだろうな。

迷惑かけたくないな。


ハツキに伝えておこう。

言える内に伝えておこう。

あたしがあたしで無くなったらちゃんと



捨ててね(・・・・)


って。


でも面と向かって言うのは怖いな。

あ!今ならお風呂だし背中でも流しながらだったら言えそう!

そうしよう。

バスタオル一枚は恥ずかしいけど…


バンっ!


なんでハツキが悲鳴をあげるのさ。

あたしの方が恥ずかしいっての。

とりあえずバスチェアに座らせってと。


「だ、ダイジョウブです。ほんと大丈夫です」


座ってくれないと話出来ないじゃない!!


あ…


もう左目から涙出ないんだ…

わかってはいたけどツラい……

本当にもうあたし…


バケモノ(・・・・)


ハツキは一瞬、なにも言えずにあたしを見ていた。


「……ヒジリ。

能力、リーネに消してもらわなくて……

本当に、後悔してないの?」


その一言で、胸の奥がきゅっと痛くなった。


「……後悔なんて、してないよ」


声が、少し震えた。


「この力で、ハツキを護れた。

それだけで、もう十分だから」


少しだけ間を空けて、正直な気持ちを続ける。


「後悔してるのは……

あの時のことだけ」


「もっと普通でいられたら、とか。

もっと人間でいられたら、とか……

そういうのは、全部怖いけど」


「でもこの力を選んだこと自体は……

一度も、間違ったって思ってない」


ハツキは何も言えず、視線を伏せたまま、

拳をぎゅっと握っていた。


「……そっか」


その声が、少しだけ震えていた。


「じゃあさ……

あたしが本当にバケモノになったら……

その時は……



()()()()()()ね」


その瞬間。


ハツキの顔が歪んだ。


「ふざけるな!!!」


今まで見たことないくらい、怒って


「そんな世界線、最初からボクが否定する!!」


あ……やっぱり怒らせちゃった。


でも怒ってくれてありがとう。

大事な人って言ってくれてありがとう…

そのハツキの想いが今のあたしの支えだよ。


お風呂から上がったらちゃんと謝ろう。

目を見てちゃんと謝ろう。


お風呂から出て、謝ったら笑顔で許してくれた。

良かった♪


でも泣き虫とか……。

たしかにあたしはすぐ泣いちゃうけど。


「なにか飲む?」


って唐突に聞くから思わず、


「飲む!ブドウの搾ったの飲む~!!」


なんて言っちゃったよ。

ブドウジュースって言えば良かった。

搾ったやつってなによ?ジュースよ!ジュース!


そしてハツキもそのまま復唱しないで恥ずかしい。


恥ずかしさのあまり一気に飲んじゃった。

そしてこのコースター裏表逆じゃん。

ハツキ、置く面を間違ってるよ。


カタン!


あ、またやっちゃた?左手で置いたっけ?


あれ?魔法陣?


指輪…?


「え!?なにこれ!?」


両思いの石フィーリング・ストーン???


最近、見てなかった。

だってあれ、あたしの想いで黄色になってたわけだし。

片思いだと黄色になるのよ!恥ずかしいじゃな……


あれ?


紅…色…???


「好きになった。

ボクはヒジリが好きになった。

護ってあげたくなった。

護らなくちゃって思った。


だからさっきは悔しかった。

なにがあっても傍に居るから。

ずっと一緒にいよう……


だからコレ、もらってくれますか?」


ハツキ……

ありがとうハツキ。

本当に嬉しいよ。


ハツキがあたしの右手の薬指を指差す。


「あたしにも付けて」


あたしは恥ずかしかったけど、

あたしはさっと手を動かして左手を出した。

ハツキにもらえる指輪はやっぱこっちがいいかな♪


力の制御が出来ない左側が役に立つなんて!


「ありがとうハツキ。これを見ればなんか

狂神化(バーサーカー)しても、大丈夫!」


「好きだよヒジリ。

泣き虫だけど大好きだよ」


ほんとハツキは一言多いよね。

ダイスキだよハツキ。


思わずテーブルを飛び越えて抱きついちゃった。


はしたないけど、今日は許して下さい。

本当にあたし幸せです。


これからもずっと一緒に居たいと思える人が出来た。

独りになったあの日、

ハツキを独りにしてしまったあの日からは想像出来なかった。


今は隣にハツキが居てくれる。

あたしはずっとハツキを護りたいと心の底から思う。


例え何があったとしてもハツキを護る。

あたしがどんな姿になったとしても。

あたしの大事な人なんだ。


完全に人でなくなるのが、正直、怖かった。

記憶もなくして、感情もなくして、

ただの“バケモノ”になるのが。


でも――

それでもいいって、ハツキは言ってくれた。

傍にいるって、護るって。


その一言で、全部どうでもよくなった。

人かどうかなんて。

あたしかどうかなんて。


そう……


『あたしは……


あなたのバーサーカー』


――――――――――――――――

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