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第20.5話 それでも護れた (ヒジリ視点)

ハツキが倒れた瞬間、世界から音が消えた。


でも、私は止まらなかった。


抱き上げる。

走る。

息が切れても、足を止めない。


――生きてる。


それだけで、十分だった。



洞窟を見つけた時、ようやく周囲を確認する余裕が出来た。


外からは見えにくく、逃げ道もある。

戦うなら、ここが一番いい。


ハツキを横たえ、呼吸を確認する。


浅い。

でも、確かだ。


「……ほんと、無茶ばっか」


そう言いながら、私は彼の頭を膝に乗せた。



一日目。


起きない。


熱は下がらないし、意識も戻らない。

それでも、呼吸だけは続いている。


洞窟の外を警戒し、戻ってきては確認する。

それを、何度も繰り返した。



二日目。


「ねえ……」


声を掛けても、返事はない。


分かってる。

今は、私の声なんて届かないって。


それでも、やめられなかった。



三日目。


眠るのをやめた。


目を閉じた瞬間に、何かが終わってしまいそうで。


ハツキの温もりだけが、現実だった。



四日目。


時間の感覚が壊れる。


でも、不思議と怖くはなかった。


――ここで、守る。


それだけが、全部だった。



五日目。


私は、いつものように彼の顔を見下ろしていた。


「……起きたらさ」


「いっぱい怒るから」


「覚悟しなさいよ」


泣きたくないのに涙がこぼれる。


その時。


瞼が、わずかに動いた。


呼吸が、少しだけ深くなる。


心臓が跳ねた。


「……ハツキ?」


次の瞬間。


「おはよう。ヒジリ。また泣いてるの?」


一気に、力が抜けた。


「ハ、ハツキ~~! ハツキ! ハツキ!!!」


気が付いたら、私は泣きながら縋りついていた。


良かった。

本当に、良かった。


――生きてた。



しばらくして、少し落ち着いてから。


あたしは、泣き腫らした目のまま言った。


「……ねえ」


「そろそろ実感してもいい?」


「ボクも同じ事思ってた」


「「 せ~の! 生きてて良かったよ~!!! 」」

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