第20.5話 それでも護れた (ヒジリ視点)
ハツキが倒れた瞬間、世界から音が消えた。
でも、私は止まらなかった。
抱き上げる。
走る。
息が切れても、足を止めない。
――生きてる。
それだけで、十分だった。
◆
洞窟を見つけた時、ようやく周囲を確認する余裕が出来た。
外からは見えにくく、逃げ道もある。
戦うなら、ここが一番いい。
ハツキを横たえ、呼吸を確認する。
浅い。
でも、確かだ。
「……ほんと、無茶ばっか」
そう言いながら、私は彼の頭を膝に乗せた。
◆
一日目。
起きない。
熱は下がらないし、意識も戻らない。
それでも、呼吸だけは続いている。
洞窟の外を警戒し、戻ってきては確認する。
それを、何度も繰り返した。
◆
二日目。
「ねえ……」
声を掛けても、返事はない。
分かってる。
今は、私の声なんて届かないって。
それでも、やめられなかった。
◆
三日目。
眠るのをやめた。
目を閉じた瞬間に、何かが終わってしまいそうで。
ハツキの温もりだけが、現実だった。
◆
四日目。
時間の感覚が壊れる。
でも、不思議と怖くはなかった。
――ここで、守る。
それだけが、全部だった。
◆
五日目。
私は、いつものように彼の顔を見下ろしていた。
「……起きたらさ」
「いっぱい怒るから」
「覚悟しなさいよ」
泣きたくないのに涙がこぼれる。
その時。
瞼が、わずかに動いた。
呼吸が、少しだけ深くなる。
心臓が跳ねた。
「……ハツキ?」
次の瞬間。
「おはよう。ヒジリ。また泣いてるの?」
一気に、力が抜けた。
「ハ、ハツキ~~! ハツキ! ハツキ!!!」
気が付いたら、私は泣きながら縋りついていた。
良かった。
本当に、良かった。
――生きてた。
◆
しばらくして、少し落ち着いてから。
あたしは、泣き腫らした目のまま言った。
「……ねえ」
「そろそろ実感してもいい?」
「ボクも同じ事思ってた」
「「 せ~の! 生きてて良かったよ~!!! 」」




