第13話 父からの手紙
前回の話で見つけた日記の内容だけのお話です。
~~~~~愛する我が子 ハツキへ~~~~~
この《秘密の日記》を読んでいるということは、
俺はもうこの世にはいないんだろう。
……なんてな。
ありきたりな書き出しをしてみたぞ、ハツキ。
ちゃんと笑ってるか?
それとも、泣いてるか?
ハツキのことだ。
どうせ、鼻水垂らして泣いてるんだろうな。
それでだ。
この本に仕掛けたトラップ――
お前ひとりで気づいたのか?
もしそうなら、偉いぞ。
誰かに教えてもらって、自分で解除できたのなら――それでも十分だ。
だがな。
誰かに教えてもらって、解除まで他人任せだったなら、
今すぐこの本を捨てろ。
・
・
・
……よしよし。
どうやら捨てずに済んだようだな。
偉いぞ、ハツキ。
さすが、俺の自慢の息子だ。
ちゃんと飯は食っているか?
幸せに過ごせているか?
お前が幸せなら、
俺もフェーリアも、それだけで満足だ。
この本にはな、
お前が困ったときのための《道標》を残しておく。
俺がいなくなっても、
道を見失わないようにな。
まず一つ目だ。
俺の村から北へ行くと、
「リーネ」という街があるのは知っているな?
そこのギルドで、
俺の名前を名乗って、ハツキの右腕を見せろ。
そうすれば、宿を紹介してもらえる。
そのあとだ。
お前に会いに来るヤツがいる。
俺の昔からの知り合いだ。
必ず、お前の力になってくれる。
ここまで、ちゃんと理解したか?
……まあ、
ハツキは少し抜けてるところがあるから心配だが、
たぶん大丈夫だろう。
次に、二つ目。
フェーリア――
お前の母さんの話だ。
フェーリアも能力者だった。
先天性の、な。
旧姓は「アイナ」。
アイナ一族は、代々神に仕えてきたと言われている。
生粋のヒーラーだ。
それを、俺がもらってきた。
……まあ、その話はいい。
フェーリアの能力は、
常時自己回復。
さらに――
《移動する苦痛》という能力も持っていた。
他人が受ける痛みを、自分に移す。
そして、自分は自己回復する。
ヒーラーとしては、
ほとんどチートだな。
だが、欠点もある。
致死ダメージ以上を受けると――
死ぬ。
……まあ、ハツキが知っている通りだ。
俺がバカをやって失敗し、
お前を危険に晒した。
その結果、フェーリアは死んだ。
そのとき、フェーリアは俺に言った。
「ハツキを護って。
私がいなくなっても、ずっと護ってあげて」
そして、
《ペイン・ムーヴ》は俺が受け継いだ。
もし、俺の最期を見ていたなら――
体中に、黒い蛇が這っているように見えたはずだ。
それが《ウロボロス》。
体を巡り、
自分の尻尾に辿り着いたとき、
使用者は死ぬ。
……どっちが原因で死んだのか、
正直、俺にもわからねえ。
だがな。
この能力は、お前には継がせない。
そんな呪い、
くれてやりたくねえからな。
ただ――
勝手に逝っちまったら、すまねえ。
フェーリアの能力があれば、
ウロボロスの進行も遅らせられるらしいんだが……。
わからねえまま、
ギャンブルはしたくなかった。
……なんか、長くなっちまったな。
お前のことを考えると、
心配で、心配でたまらねえんだ。
お前を残して死ぬなんて、
情けねえ父親だよな。
ある程度、
成長してくれていればいいんだが……。
これで最後だ。
この本の、
最初から半分のページにはマジック・トラップが仕掛けてある。
契約者はフェーリアだ。
俺は解除できた。
……ハツキ、お前は解除できたか?
中には、
お前のことが書いてある。
というか――
お前のことしか書いていない。
この本は、
ハツキのためだけに書いた。
俺とフェーリアからの、プレゼントだ。
大事に使ってくれ。
俺たちは、
どこにいても――
ハツキの味方だ。
いつまでも、見守っている。
さよならだ、ハツキ。
愛する我が息子よ。
元気でな。
――ハル=サンブライト
⸻
……あ、忘れてた。
もし継承してなかったら悪いから、
一応、仕掛けておく。
第12代トレジャーハンターマスター
ハル=サンブライトは、ここに宣言する。
今をもって、
我が証、我が全ての権限を――
ハツキ=サンブライトに譲渡する。
本日より、
第13代トレジャーハンターマスターは、
ハツキ=サンブライトである。
それじゃあな。
押し付けて悪いが――
よろしく頼むぜ、
13代マスターさん。




