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短いおはなしのつめこみ場所  作者: 篠宮 楓


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1/1

嘘だって構わないから

2015年あたりに書いて、下書きに埋もれていたお話を発掘。

それは、登校時間のひと時。


学校に向かう人が多い中、君は逆行するように駅へと向かう。


きっと地元がここで、学校が違う駅にあるんだろう。


ブレザーの制服の波を縫うように歩いていく黒の学ランは、はた目からでもかなり目立っていた。


そんな、春。






梅雨も終わり夏が近づくころになれば、最初は指定バッグを持っていた一年だって、校則に引っかからないくらいの服装や持ち物になっていく。


そんな中、革の学生鞄と大き目のスポーツバッグを背負って歩いていく姿は、やはり目を惹くのには変わりなかった。


重そうだな……とか、部活なんだろう……とか。


他愛のない想像をほんの少しだけして、すぐに自分の日常に意識は戻っていた。








残暑厳しい季節も過ぎて、再び迎える衣替え。


ブレザーの中を逆行していく学ランは見慣れていたはずだったのに、なぜか私の意識をごっそりと持ち去っていった。


ほんの少し、君との日常が重なっただけ。


自転車を避けようとよろけた私を、ただそばにいた君が咄嗟に支えてくれただけ。


「大丈夫?」


その言葉に、唯々頷くしかできなかった。


初めて、気づいた。自分の中の、君への気持ち。








視線が合えば会釈する仲になり、近くにいれば声をかけるような仲になった。


ぐるぐる巻きのマフラーが、君の首元を寒さから守るようになったある日。


――幸せそうな二人を、ホームで見つけた。


ぐるぐると巻いたマフラーに、幸せそうに顔を埋める君と。


ぐるぐると巻いたマフラーの端を、恥ずかしそうに指先で軽く引っ張る女の子。








ぐるぐると、ぐるぐると。




私の視界も、巻かれていった。








今までの全てが嘘だって構わないから、そう言われても構わないから。


今までの自分の気持ちが、全て消えてしまっても構わないから。


今見た全ても嘘にして欲しいと、心から願った……とある冬の日。



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