蜃気楼~まだ見ぬ楽園~
とても長いので部分的に公開します
目覚めよ
巨大な力を持つものよ
「その力
我らのために使え」
白き翼をもつ高官が見下しながら命令する
「嫌!
誰かに使われるくらいなら
ここで死ぬわ!」
両手を拘束された
七色の翼を持つ女は高官を睨みつけ叫んだ
「ならば
朽ち果てよ」
高官は見下ろして吐き捨てる
刹那女は自ら命を絶った
「・・・次の者を入れろ」
男はそう言って先ほど自害した、女の亡骸を見つめた
・・・何人目だろう?
自ら命を絶つ「女神」は
彼らの中に組み込まれた呪いとも呼ばれるプロテクトは
「使われるならばその身をもって力を守れ」
“・・・馬鹿馬鹿しい
どんな残酷な目的に使われるとしても
生きてさえいれば再び青空を仰げると言うのに
何故
彼らは「死」を選ぶ?”
「一体どういうことです?」
別室に入ってきた金の髪の男が問う
眉間には皺が刻み込まれ不機嫌である事を知らせている
「これはこれは・・・・守護天使殿」
精一杯の皮肉をこめてゆっくりと振り向き応える
俺は下級天使
目の前の男は天界を守る守護天使
雲殿の差程の身分がある
「・・・・ルー、このことは誰に許可を?」
どうやら彼はご立腹のようだ
既に周りには俺以外の天使の姿はない
「・・・・」
俺は応えなかった
「応えないつもりですか」
彼はそういいながら俺に詰め寄る
と言っても俺が彼を見ているわけじゃない
気配で感じるんだ
「・・・・判ったよ、終わりにすりゃいいんだろ?」
俺は観念して鼻にかかったグラスを外し、目の前に手をかざす
刹那情景は消え辺りには草原が広がった
「全く・・・貴方と言う人は」彼は呆れながら髪をかきあげる
「暇つぶしさ・・・・」俺は再度グラスをかけ、見上げる
「それにしても悪趣味ですよ・・・・女神拷問の図とは・・・」彼は傍に腰を下ろして
ため息をつきつつ言う
女神拷問
天界に存在していた
巨大な力を持つ種族
「女神」
彼らは純白の6枚の羽根を持つ
だが
ある時より
狩の対象に挙げられ
拷問に何度もかけられた
聞いた話では
女神はそこで
途絶えたらしい
「悪いな、どうせ悪趣味だよ」俺は頭上の草を摘み取り、ぶっきらぼうに言った
・・・そんな事わかってる
ただ・・・見たかった
「女神」と呼ばれるものを
純白の羽を持ち
神殿に仕える神官の役目を持つもの達
それゆえ
滅多に人目に晒される事は無い
「・・まぁおおかた女神を見たかったんでしょうけど」
俺は飛び起きて目を見張った
・・・やはりこいつにはかなわねぇ
まぁそんなことは死んでも口にしてやらねぇが
「それよりも、お呼びですよ」
そう言って彼は真剣な眼差しをした
「・・・面倒臭ぇ」
眉間に皺を寄せ言う
“神”からの呼び出しは面倒な事が多い
やれ地上の状勢をどうしろとか
やれ何処何処を守れとか
訳の判らんものが多い
「そう言わずに・・・行ってみたらどうです?案外面白い事に出会えるかもしれませんよ?」
横にいる彼はくすくす笑いながら言う
「面白いことねぇ・・・・まぁ行ってみるか」
眉間の皺を解いて立ち上がり、草をはらう
「・・・もう戻るのか?」
同じく立ち上がった彼に訊ねる
「えぇ」
「ご苦労なこったな、地上の見回りとは」俺は頭の上で腕を組んで言う
「本当に・・・」彼は苦笑いしかしない
「まぁ、元気でな」
俺は片手を振り上げて言う
「・・・貴方も」そう言うと白い羽を広げて飛び立っていった
俺はそれを見送ると
神殿へと足を進めた
「戦天使ルーベリアン命により参上しました」
片膝をつき顔を伏せる
遥か上部には“神”が座る玉座がある
「うむ、お前には“女神捜索”と“女神保護”を命ずる」
!!
「・・・御意」
俺は深く礼をし神殿を後にした
“案外面白い事があるかもしれませんよ・・・・?”
数分前の彼の台詞を思い出す
“面白い事になりそうだ・・・”
俺は口の端を上げ、地上へと降りた
続きます
ただいま執筆中