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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
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君の手を掴めた、遅くはないと、告げた君の告白に応えを見つけた



 その後、数年の沈黙を破り私は新たな、人生を歩む事になる。



 名前も芸名の本宮ありすではなく、本名の川村麻衣で活動することになった。しかし、公の反応が怖く、初めは、『m.Kawamura』という名前でCDを出させてもらった。顔出しはしない、シルクハットを被った目つきの悪い黒いウサギの自画像、これは、社長が私を思っての事と、反響があると睨んでの売り出し方だった。私は、二十五歳になろうとしていた。


 伸ばしっぱなしで、背中に届くぐらいあった髪をばっさりと切り、茶系だった髪色を金髪に染めて、耳には、ピアス、可愛い服は、タンスの奥に仕舞い込んだ。女優の仕事は無くなり、希望していた歌の仕事に転向したのだ。


 莉子さんが、私を庇ってくれて、事務所を辞めることなく、仕事を続けさせてくれた。あの時、私を庇いきれなくなった事務所だったが、莉子さんのお陰で救われた。私は、社長に謝罪すると、社長は、私の謝罪を受け入れてくれた。これからは、気持ちを入れ替えて、大事な娘さんを預かっているので、私には君を守る権利があると、言ってくれた。社長も事務所の人たちもとても、良い人ばかりだ。


 離婚からの数年、親身になって、励ましてくれた莉子さんのために、そして、何時も私を応援してくれる絵美のために、私を守ってくれる事務所のために、私は、恩返しをしなければいけない。我儘を言って、歌手になりたいと言う夢を叶えてくれた。

 数年という期間は私にとって、再チャレンジのための、充電期間となったのだ。


 元々、高校生の頃は短かった髪だ、制服で女子と分かるが、私服だと男性もののシャツにジーンズ姿が基本だったので、違和感はなかった。背も高く、髪を短くすると男性に間違われる、そんな、容姿は多くの女性ファンを獲得したのだった。


 そして、私の二度目の芸能活動が始まった。今回がダメだったら、芸能界を辞める決心で私は歌手としての活動を始めた。



 二十五歳の誕生日、歌手として、再デビューを果たす。初めての曲『空の向こうに』それが、ヒットし、あっという間に離婚の事は、忘れ去られた。私は、芸能界の怖さを見に染みて感じたと共に、絵美と莉子さんと、私を解雇しないでくれた社長に感謝するのだった。


 そして、社長の顔出ししない、性別の分からない、その戦略は功を奏した。その後、年が変わってTV出演が決まり、六月に、ファーストアルバムが発売されて、その年の夏に、芋蔓式に性別もバレた。仕方がないので、名前も本名の『川村麻衣』に戻した。

 二枚目のシングルからは、本名での発売になった。でも、見た目は男性と変わらない。それが、世間には受けた様だ。


 その結婚相手だった広大(こうだい)くんも私と離婚した二年後に電撃結婚をして、世間の話題をさらった。同じ事務所の人気アイドルがそのお相手だった。目がパッチリしていて、可愛らしい子で、私とは対照的な身長も低い女の子だった。


 その話題が私を後押ししてくれたような気がする。誹謗中傷の矛先は、広大くんの結婚相手に移った。どちらにも、盲目的な程のファンが大勢いたのだ。絵美はここで、完全に、広大くんのファンを公言するのをやめた。


 そして、何もなかったかのように、私の事は忘れ去られたのである。広大くんの前妻と呼ばれることもなく、すっかり見た目の変わった私を知る人はほとんどいない。それが、私にとって、これから進む道にとって、とても楽だった。



* * *



 あれから十年以上経った。若い頃とは違うし、知名度もそれなりにある私だ、誰と仲良くしても問題はなかったはずだ。事務所から、恋愛禁止と言った、ルールなどもない。好きにしていい、とか誰か付き合う人が出来たら、報告だけはしてね、と言われる始末で、どちらかというと、結婚を望まれている感じだ。

 まぁ、この年齢だしね。しかし、あの時の事を思い出すと二の足を踏んでしまう。それから、誰と付き合うこともなく、三十六歳というもうすぐ四十歳に手が届きそうな年齢まで来てしまった。


 今は、仕事が楽しいので、このまま仕事と結婚でも構わないと思っていたはずだった。



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