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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
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My anniversary ②



 四月の桜が綺麗な季節、東京の下町も華やかな桜で彩られていた。実は、桜とは、無縁だったりする。というか、和服の遥くん、似合いすぎる。

 私は所作が綺麗だとは言われるけれど、あまり、和服を褒められたことはない。成人してからは、和服には一度も袖を通した事はない。最後に和服を着たのは、中学生の頃だったと思う。民謡の大会で着せられた。


 今回は和服での写真撮影と言う事になったんだけど、(よし)くんと顔を見合わせて、なんか違うねと、笑い合った。嘉くん、着せられてる感あるのと、顔立ちのせいか、和服はあまり似合わないかもしれない。私には、女性ものは似合わなすぎて、男性用を少しアレンジしたものになった。

 なんちゃって、和服感。浴衣とかの方がまだましなんじゃないかなと思う。八月の七夕の時は浴衣にしようという話が出ているので、春に仕立ててもらった浴衣を着ようと思う。


 上野公園とか浅草とか、遥くんのお家の近くが撮影場所になりました。上野公園の桜とても綺麗でした。桜って可愛いイメージがあるので、自分には似合わないと思っていたんだけど、カメラマンさんはやっぱり、プロだね。私はそれなりに、嘉くんもカッコよく、遥くんはものすごく自然に撮ってくれました。



* * *



 夏の写真撮影は少し忙しい。私がどうしても、虹の写真を使って欲しいと言ったからだ。写真に納めようとしたら天候の問題もあるので、直ぐにとはいかない。一週間ほど、夏休みを兼ねた旅行を計画して私は、地元に戻っていた。

 八月の七夕に浴衣姿の三人の写真を撮った後に、そのまま気仙沼(けせんぬま)市に向かった。基本、スタッフの人たちはホテルを取っているが私たち三人は私の実家を拠点にする。



「遥くんは和室に荷物移動させてね」



 部屋を掃除してくれた、咲子(さきこ)さんが、遥くんに声を掛けた。嘉くんも一緒じゃないの? 咲子さんは、にまにまと悪い笑みを浮かべている。

 私の部屋はそのままなので、そこを使ってくれという事だった。うん、知ってた。何年か前におばあちゃんが使っていたベッド使っていたんだけど、買い替えたんだよね。セミダブルのベッドなので、二人で使っても問題ないって判断されたようだ。


 というか、咲子さん、すっかり馴染んで、遥くん、嘉隆くんと呼ぶ。遥くん、名前呼び好きじゃないって言ってたんだけど、すっかり諦めたようだ。流石に、遥ちゃんはやめてくれとお願いしていた。



* * *



 麻衣は、着替えると言って二階の自分の部屋に向かう、ついでにと言って、嘉隆の荷物も受け取ってくれた。リビングには、ここに到着して直ぐに駆け付けてくれた、麻衣の幼馴染みの絵美が居た。自分の家の様に、麻衣の家族が忙しいからと、代わりにお茶を淹れてくれた。

 遥は率先して手伝おうと、外で、麻衣の母と何か話していた。こっちでも、遥は大人気なようだ。



「絵美さん」

「絵美でいいよー、同級生なんだよね、私の方が半年お姉さん?」

「そうなの?」

「私、五月産まれなの。麻衣と誕生日、数日違いなんだよね」

「麻衣が十五で俺が十八なので、三日違いかな。じゃあ、絵美で。麻衣の周りって、遥好きな人多いよね」

「そうかな? うーん、そうかも。古川くん、無言で黙々と働くタイプ? こっちの人、古川くんみたいなタイプ好かれるのよね。真面目で、優しくて、ちょっと、強面だけど、こっちにはそういう人、多いし。ほら、悠兄とかそうじゃない? 真面目っていう点ではちょっと、違うかもしれないけど」

「なるほど、理由が分かった気がする」



 会話が終わるタイミングで、麻衣が戻ってきた、と思ったらまさかのつなぎだった。「お、懐かしいね、まだ、サイズ入るんだ。羨ましいな」絵美がそう言う。麻衣に聞くと、高校の作業着だったそうだ。ただ、高校の頃よりも痩せているので少しぶかぶかだ。押入れの衣装ケースに入っていたらしい。


 スタッフの人が麻衣の姿に、この格好が良いんじゃないかって事になり、悠一が新しいつなぎを引っ張り出してきてくれた。悠一の農作業用の格好はいつもつなぎだ。少し大きいが撮るのは、後ろ姿なので、このままいこうと言う事になった。



* * *



 とりあえず、スタッフの人たちが私たちを送るために、うちに来ているので、夕方の景色だけでも撮る事になった。今日も、景色もとても綺麗で、明日も晴れそうだ。まだ、青い稲穂が揺れる農道を歩く。気の早いトンボが、飛んでいる。秋が深まるとそこら中が、トンボで、埋め尽くされるほどだ。


 空はゆっくりと、青から赤に染まっていく。その間が紫に染まる。私は嘉くんと遥くんの手を取って歩き出した。後ろ姿だけが、写る形で、メインは空だ。



「いきなり、綺麗だね」

「ぶち、綺麗」

「お前ら、もう取り繕わなねぇのな」



 二人揃って、宮城と広島の方言で呟いた言葉を拾った、遥くんは、どこか嬉しそうだ。そして、空高いな、遥くんが空を見上げて呟いた。東京で見る、ビルの隙間から見る空とは違う、広く大きいものなのだなと、再認識させられた。



 その次の日、ざっと降った夕立の後に、三人で見る事が出来た虹はきっと一生忘れないだろう。虹をくぐる事は出来ないけれど、綺麗な虹を見上げて私たちは、繋がれた手を空高く掲げた。それはまるで、もう一つの虹のようだった。



 そして、一年を通して、撮り溜めた写真は、綺麗な写真集になった。それは、その後、四十歳の私たちの十一月と一月の誕生日が過ぎて、暖かくなってきた、三月のレーゲンボーゲンのデビュー日に発売された。『My(マイ) anniver(アニバー)sary(サリー)』というタイトルの私の歌手デビュー十五周年記念のベストアルバムとして。



 これで、本編は一応一区切りです。回収していない伏線と共に、まだ、お話続きます。

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