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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
57/716

七夕に祈る平和の祈りを未来に届ける



 八月の七夕、僕と君で手を繋いで歩こう

 風に揺れる吹き流しの中をゆっくりと

 浴衣の君は涼しげで 微笑む笑顔はとても綺麗で

 きらきらと輝く星と君の笑顔 ずっと見ていたくなるね


 星に願うのは二人の未来 いつまでも一緒に

 星に願うのは二人の未来と そして、平和の祈り



 口ずさむ、穏やかなバラードは私の得意分野だ。東北三大祭りである、七夕祭りには、小さい頃に一回、そして、何年か前に地元のTV局のゲストとして、出演した時以来だ。私の地元は宮城県でも県北に位置しており、仙台まで車で三時間も掛かるような田舎なので、七夕に行ったことは少ない。


 そして、この歌はその数年前に見た七夕の情景から思い浮かんだものだ。今まで、抵抗があって、地元の情景が浮かぶ歌は作ってこなかった。心境の変化、きっと、新しい恋をして、私は救われた。そして、過去の束縛から、解放された瞬間。

 今まで、誰かに言われたわけではない、逃げるようにして、飛び出した故郷への後ろめたさが、今まで、私の足を止めていたのだ。



「いいね、俺も仙台七夕はTVでしか見た事ないけれど、夏の情景が思い浮かぶようだね」

「色とりどりの吹き流し、とても綺麗だったよ」



 荒削りのまだまだ、修正が必要な文章を読んでいた、(よし)くんは、小さくメロディを口ずさんだ。レーゲンボーゲンの曲は主に遥くんが曲を付けるが、嘉くんも作曲も得意だ。ギターを片手に音にしていく姿は見ていてかっこいい。

 数年前にソロ活動をしていた時に出したアルバムはすべて彼が作詞作曲をしたもので、彼らしい、遥くんとは、また違った素敵な曲をつける人だと思った。その、アルバムに惚れ込んだんだよね、今でも私の大好きな一枚だ。



「平和の祈り」

「そこ無くても良かったかな。なんか、付け足したような感じになって、違和感あったりしないかな」

「これ、もしかして、広島関係ある?」

「うん、やっぱり、蛇足だったかな」

「いや、気持ちが伝わって来て、良いと思う」

「七夕はね、いろんな願いが込められている。それは、きっと、世界中のみんなに届くはずだから。だから、毎年、やるんだよ。みんなの思いを乗せてね」

「その、願いを歌にして、届けたれたらすごく良いね。麻衣、これ俺が曲つけちゃダメ? どうしても、俺が付けたいって思った。広島の思いまで、歌詞にされちゃ、付けない訳にはいかないよ」



 嬉しい、だめなんかじゃない。ほら、またこれもきっと二人の架け橋になる。結婚前じゃ考えられなかった。だって、周りが怖くて、いろんな詮索が怖くて、きっと、曲を付けたいと、頼まれても断っていたはずだ。遥くんとは、違うメロディは、私だけのものだ。そう思っても良いかな。



 八月の七夕、僕と君で手を繋いで歩こう

 きらきらと眩しい夏の輝きに目を細めて

 天の川の流れよりも 優しい手の温もりは忘れない


 星に願うのは二人の未来 どこまでも一緒に

 星に願うのは二人の未来と そして、平和の祈り



 それが、いつまでもいつまでも続く事を僕は願うよ



 八月六日



「七日じゃないの?」

「いいの、だって、広島の人たちの思いも歌にしたかったから。忘れちゃだめな、六日はすごく大事な日でしょ。だから、タイトルはこれ以外考え付かなかった。それに、七夕は三日間あるから、六日でも良いんだよ」



 いつものような、私の短くて、単純なタイトル、複雑な事なんてない。そのタイトルがその歌を表していればそれでいいのだ。タイトルに惹かれて聞く人もいるけれど、私のファンはもう、この簡単なタイトルに馴染んでくれている。下手に変える必要はないと思う。

 嘉くんファンがどう思うかは分からないけれど、ふと、あの時、地元で会ったファンの子を思い浮かべて、私は首を左右に振った。その子たちの事まで考える必要なんてない。



「麻衣?」

「何でもない。ただ、私は幸せ者だなって思っていただけ」

「このやり取りにそんな要素あった?」

「あったよ、だって、嘉くんが曲付けてくれるんでしょう? そんな、幸せな事ないよ」

「大袈裟だね。有名な作曲家とかじゃ全然ないのに」

「嘉くんだからだよ。もう、すごく我儘になっちゃって、本当は遥くんが曲を付けてくれるだけで嬉しかったはずなの。それなのに、今は嘉くんに曲を付けてもらいたいって思ってしまう。贅沢だね」

「俺だって嬉しいし、幸せだよ。こうして、君の歌に曲を付けるなんて、前じゃ考えられなかった。君の歌に助けられた俺だよ? それが、曲付ける事になるなんて、思っても見なかった」



 結婚式を終えて、私たちは新しい新居に移った。重要視したのは防音がしっかりした、騒音が迷惑にならない物件だ。遥くんや、お客さんが泊まれる和室と、二人で作業が出来る部屋が増えたぐらいで、他は前の部屋とは変わらない部屋数だ。その作業部屋で、嘉くんはギターを片手に私の歌に曲をつけてくれている。


 その時間が好きだ。嘉くんが私だけのために歌ってくれるのだ。それ以上の幸福はないだろう。たまに、私も嘉くんのお願いで歌う事もあるんだけどね。



 八月の七夕、今度は一緒に行きたいね、そう言って、嘉くんと約束したのは、七月の七夕だった。来月にはきっとその願いが叶うと信じているから。


 これからの幸せは、紡ぐ事になる。幸せを分け合って、そして、これからの未来を見つめるのだ。真っ直ぐに。



 七夕は、八月の六、七、八日。なので、三日間ならどこでも良いのです。広島の六日の記念日を大事にしたい、その思いを歌詞に落とし込みました。

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