卒業式に贈るプレゼント(side遥)*
三月一日の卒業式の話です。
遥は、甥っ子の理人への高校の卒業祝いとして、今まで乗っていたフィアットの500Cを贈った。大学の入学祝いでもあるが、まだ、合格発表はまだなので、取り敢えず、高校卒業の祝いとしておいた。落ちると言う事は考えていない。理人なら、受かると思っている。
三月一日の夜に、卒業祝いをするので、実家に来いと言われた。もうすぐ、デビュー日で忙しいのだが、甥っ子の卒業祝いなので、行く事にした。その後に、六花の卒業も控えているので、また呼ばれる事になるだろう。六花への卒業祝いは麻衣のライブのチケットを用意している。こっちも、合格発表はまだではあったが、落ちる心配はしていない。前に麻衣からもらった、絵美の地元のゆるキャラの文鎮は、既に渡している。
基本、実家に帰るのに手土産は用意していない。実家と住んでいる場所が近いと言うこともあったが、食べるものはほとんど揃っているので、余すことを考えると持って行くことはやめた。しかし、六花の時には、有名なドーナツ屋のドーナツを所望されたので、そっちは持って行くつもりだ。
「ただいま」
「一人なのね」
「みんな、忙しいんだよ」
母があからさまに残念そうだ。レーゲンボーゲンのデビュー日も近いが、麻衣は全国ライブの真っ最中だ。お祝いを贈ることに積極的な麻衣だが、流石に今回は、色々と忙しくてそこまで頭が働いていないのだろう。指摘することは無い。と言うかわざと指摘しないでいる。気付いて残念がりそうだが、麻衣は莉子の結婚祝いに結構値の張るカウチを贈ったこともあって、金銭感覚がおかしいかもしれない。
「今度、ぜひ、連れて来てね」
「ああ」
「そう言えば、晃くんは来てくれるって」
お、と言って、遥がスマホを確認すると、晃からLINEメッセージが入っていた。そっちは、律儀に手作りケーキを作って持ってくるそうだ。その事を、母に言うと、キッチンにいたみどりが顔を出した。
「はるくん、おかえりなさい。晃にケーキ頼んだの私だよ」
「そうかな、って思ってた」
遥の祖父は、ひ孫のお祝いなので、自ら和菓子を作っていると言うことだった。引退はしているが、足腰もしっかりしていて、兄や父に撃を飛ばしているようだ。そして、ここでも遥は手伝う気が無い。それを知っているので、周りも気にはしていない。
少し遅れて、晃がやって来た。流石に、晃はみどりに頼まれたケーキ以外にも色々と持参して来た。手作りの、お祝いらしいものが多く、古川家では、あまり作らないような、洋食がメインだ。それも、分かっていて作って来た。子供たちには、そっちの方が好評なのも知っている。
「よぉ」
「よぉ」
二人の挨拶に、玄関でお出迎えした六花が笑っている。おじさん、いらっしゃい、と呼ぶ、遥もおじさんだが、母の弟の晃もおじさんだ。持参したものをキッチンに運ぶのもしてくれた。
「これ、父さんと母さんから。お祝いは改めて持ってくると思うけど」
「ありがとうございます、晃おじさん」
「母さんが、姉ちゃんに理人と六花連れて来いって言ってたよ」
受験があって、忙しいこともあって、内田家に顔を出すことも減っていた。合格発表が終わったら、挨拶に行くつもりなので、そのうち行くことになるだろう。
「多分、ボードゲームに付き合わせられる未来が見えているわね」
「ほどほどに、相手をしてくれ」
あいかわらず、晃の父はボードゲームが好きだ。退職して、今は、ボードゲームカフェを経営して老後を楽しんでいる。聞くと、普通に卒業式を終えたらしい。友人のほとんどが、東京を離れるわけでは無いので、特に別れが辛いということもなかったようだ。遥は、俺たちと一緒だな、と言った。サポートメンバーとは、大学も一緒だったし、今でも仕事を一緒にしている。
食後に晃のケーキ作ったケーキを食べて、車で来たので、珍しくお酒を飲まなかった遥は、晃と一緒に帰路に着いたのだった。
古川家のほのぼのとした日常。古川家と内田家は本当に仲が良いです。




