スタンプ発売しました。
少しづつ書き留めてイラストが規定の数に達したので、スタンプの発売が決定した。時間が空いた時に、ちょこちょこと描いていたので、打診された時から半年ほど経っていた。半年前に描いたイラストを見て、これ、修正しても良い? って言ったら、このままで良いわよと、莉子さんに言われてしまった。いやいや、修正させて。そう言うと、いつまで経っても発売出来ないじゃ無いのって言われた、確かにそうなんだけどさー。
「色々と描いたから、使い勝手良さそうなの選んで下さい」
「相変わらず、仲良いわね」
「ああ、これか。嘉くんにリクエストされたんだけど、これは無理なら使わなくても良いです」
莉子さんが気になったのは、黒ウサギとシュナウザーが並んでいるものだった。動物ってさ、スタンプにした時に、メッセージに合わせるの難しく無い? こんにちは、とかどう表現したら良いのか悩んだよ。メッセージで誤魔化したくなかったんだよね。そして、悩んで描いたものは結局最後まで残ってしまった。嘉くん以外にはバラせないので、本当は絵美や文香にも相談したかったんだよね。
「莉子さん、ごめんなさい。ウサギで描くのは今回だけでお願いします。かなり、難しかった」
「ウサギじゃ無いなら良いの?」
「良いけど、ウサギ以外じゃ売れないかもよ?」
私の自画像じゃ、売れないんじゃ無いかな。そんな事無いわよって言われたけれど、仕事に余裕が出来たらかなぁ。時間をかけても良いなら、その時にお願いします。今回も半年掛かっているからね。
「ねぇ、麻衣」
「何ですか?」
「スタンプって言えば、これ。どう思う?」
「お、聖良ちゃんの可愛いですね」
ゴシックな感じなイラストは可愛くて、その中でも目を引いたのは、メッセージの幾つかがドイツ語になっていたからだ。ドイツ語って、聖良ちゃんにぴったりだ。
「この、『ヤー』って『はい』のドイツ語ですよね。他にも、『メルシー』や『グーテンモルゲン』とか有名な挨拶のドイツ語があるんだね」
「これ、レーゲンボーゲンでもすれば良いのに」
「私から、嘉くんに、提案して見ましょうか」
「やっぱり、浅生画伯のイラストになるの?」
「あー、あれかー、嘉くんはかなり、申し訳無さそうなんだけど、人気あるからなー」
浅生画伯のイラストはかなり好評で、ファン以外にも浸透しているんだよね。それに、嘉くんと遥くん二人とも、苦笑しながら首を傾げている。嘉くんのイラストのスタンプは『浅生画伯のゆるゆるスタンプ』と言う名前で第三弾まで出ています。すごいな。嘉くんのイラストにドイツ語のメッセージバージョンも売れそうだね。
「良いんじゃ無い。このクリスマスとお正月は出番が限られるけど」
「そうなんですよね。でも、これは早い段階で出来上がっていたんですよ。分かりやすく、サンタ帽を付けたり、お餅食べたり出来るので」
「そうね、それで、『ありがとう』が最後まで残ったと言うわけね」
イラストの位置から察してくれた。最後まで残ったのは、『ありがとう』だ。ウサギが手を振るのも難しかった。手を振るだけなら、『さようなら』でも『こんにちは』でも使えるからだ。それと、どこで使うのか意味不明なウサギが虹を渡っているやつ。これは、私らしいと言う理由で使われる事になった。一番楽だったのは、『おやすみ』だった。だって、寝てれば良いんだものね。
「同じもので、『Fluss』のもって思ったんだけど、もうやりたくないのよね」
「いや、同じものをオオカミで描けばいいんでしょ、悩む必要無いからそれは大丈夫だけど、嘉くんのは私に関係無いから描かないよ」
そう言ったら笑われた。嘉くんの事は今のところ、私の仕事には関係ないので、やりません。ここに、嘉くんがいたら渋りそうではあったんだけどね。
「はい、と言う事で、これは完成で」
「宜しくお願いします」
うん、一つ仕事が片付いて肩の荷が降りた様な気がする。そのタイミングで今日はスタッフにお姉さんがお代わりのコーヒーを持って来てくれた。一緒に、高そうなお菓子も一緒だ。これ、食べても良いの? そう言って、視線をお姉さんに向けるとお姉さんは照れた様に頬を染めると「ぜひ、食べて下さい!」と言ってくれた。その様子に莉子さんは苦笑している。あはは、これは、事務所関係無いのか。まぁ、ちょっと疲れたので甘いものもたまには良いかな。
「ありがとう、いただくよ」
そう言うと、『きゃー』と声には出さないけれど、表情がそう言っている、お姉さんはお盆で顔を隠しながら応接室を出て行った。あはは、かわいいね。
「相変わらず。無駄にイケメン発言しているわね」
「無駄ってなんですか」
「あら、これ、美味しいわね」
「うん、美味しいけど、この羊羹、嘉くん食べれないやつだ」
「嘉隆くん、羊羹だめなの?」
「ゼリーとか、食感がダメみたいですよ。そう言えば、莉子さんの嘉隆くん呼び良いですね」
「そうね、博行くんがそう呼ぶからね。麻衣、嫌がらないわよね」
嘉くんは、私に嫉妬して欲しい様だけど、私は、そんな事は無い。莉子さんが、苗字呼びから名前呼びになった事が単純に嬉しい。
「沖さんって、すごく言いやすいから、私は無理かな」
「言っとくけど、私も沖なのよ」
「莉子さん、良いな」
「何が?」
「苗字と名前を含めて四文字ってすごいな」
「麻衣だってたいして変わらないじゃ無い。一文字違いなんて誤差よ。流石に、結婚して浅生になったの忘れているわけじゃないわよね」
「流石に忘れませんって」
確かに浅生麻衣でも五文字だ。でも、四文字の人って中々いないよね。苗字が二文字の人って、沖さん以外には、高校の生徒会副会長をしていた利賀くん、美秋ちゃんの旦那様ぐらいだね。
「お、これ、更に発展させて、愛夢ちゃんと一緒も良いかな」
「ああ、宮城弁するのね。面白そうね」
愛夢ちゃんも犬だよね、タブレットにプードルを描いて、『おばんです』って入れてみた。中々、面白いけど、事務所が違うから、無理かな。そんな事無いかもよ、って莉子さんに言われた。『bitter&sugar』で出すのもありじゃないのって言われた。出しても良いけど、そっちは誰かにお願いしたいな、って言ったら笑われた。
後日、rip tideからのOKももらえる事が出来て、続けて発売されたのだった。それには、愛夢ちゃんはすごく嬉しそうだった。
麻衣のイラストのスタンプ、可愛く出来ていそうですね。




