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虹の架け橋  作者: 藤井桜
後日談+サブキャラのお話
523/550

秋田旅行とご挨拶(side遥&円)*

 麻衣と嘉隆くんと仙台で冷やし中華を食べたその後の過去話です。



 秋田県の横手市は秋田県の内陸南部に位置する市だ。豪雪地帯として有名で、遥には申し訳無いけど、B級グルメで有名になった横手焼きそばしか知らなかったと言われた。

 麻衣と一緒にコラボした、『Fluss(フルス)』のミニアルバムの発売日の翌日に、お盆に帰省すると(まどか)に言われた。出身が秋田だと言う事は知っていたが、詳しい場所を聞いたら横手市だった。

 まだ、セカンドアルバムの発売に向けて忙しかったし、ライブやコンサートも控えていた。それに加えて、引越し作業もある。息抜きしたいと言う言葉に円は嫌とは言えなかった。



「地元の人間からすれば、何も無いわよ、って言ってしまうものなのよね。秋田市に次いで大きいって言われるけど、新幹線で行くにも遠いしね」

「調べた限りだと、こまちに乗って大曲で乗り換えて、二時間半ぐらいっすか」

「それくらいかかるわね。ね、遠いでしょ」

「円さんは、年に一回それでも地元に帰っているんですよね」



 遥が、地元に帰省すると言う円に一緒に行きたい、と言われた時は驚いた。付き合い始めて、数ヶ月も経っていない。明らかに、円の年齢を気にしてくれている。円は困った様に笑うと、しょうがないわね、と言って承諾してくれた。付き合っていた元カレは、一度も円の実家には行った事はないのにだ。

 流石に実家に泊まりたいとは言われなかった。駅に近いホテルを予約してそこに泊まると言う。円の両親には、本当に挨拶だけのつもりの様だ。


 スマホで何かを調べていた遥はぼそりと時間あったら行きたかったな、と呟いている。どこに行きたかったのか聞くと『横手市増田まんが美術館』だった。有名な漫画家が創設した美術館だ。



「漫画、読むのね」

「まぁ、人並みには、何年か前に、宮城でも漫画館に行った事あるんすよ」

「ああ、石ノ森章太郎かしら」

「知ってるんですね」

「有名だからね」



 石ノ森萬画館に行ったのは、浅生(あそう)家と一緒に仙台に行った時に、別行動した時だ。二人は、あの時、石巻市の震災遺構を見に行った。あの時、遥は行くなら一人で行くと言ったのは、遠慮したのでは無く、震災遺構を一人で巡りたかったからだ。



「まぁ、それは、次の機会に」

「無理して来る必要無かったのよ。だって、古川くん、すごく忙しいじゃないの」

「無理してませんよ」



 新幹線を予約をして、遥と円はお盆期間の十五日から二泊三日で横手市に行く事になった。お土産は、古川家の和菓子と東京名物が色々あって荷物はかなり増えそうだ。



 * * *



 予定では、二泊三日だ。東京から新幹線に乗って、一度、仙台で降りて嘉隆(よしたか)と麻衣の四人で冷やし中華を食べた。嘉隆たちはバスを使って麻衣の地元に帰る予定だと言う事だ。先日までは、広島に行っていたので、自分の地元が東京で良かったと思う。

 その後、遥と円はこまちに乗り換えて、秋田に向かう。今日は、移動だけで終わってしまった。


 電車に乗り換えて、スマホでさらに何かを調べていた遥は『横手城』って行った事ありますか、と聞いた。小説を読んでいた円は視線を遥に向けると「お城も好きなのね」と返事を返して、横手城について教えてくれた。



「朝倉城、阿櫻城とか呼ばれているわね。一応、再建された天守があるわ」

「山城なんですよね」

「そうね」



『横手城は、秋田県横手市城山町(出羽国平鹿郡横手町)にあった日本の城(山城)。朝倉城や阿櫻城とも呼ばれる。廃城後に城跡は横手公園として整備されており、模擬天守が建てられている。横手市指定史跡』



「見に行きたそうな顔しているわね」

「元々、嫌いじゃ無かったんだけど、行く機会に恵まれるならと思うと行きたくなるんですよね」

「仙台城址とか行った?」

「はい、行きました。お城は無いですけどね」

「確かに」

「天守があれば、良いんですけど、無くても別に構いません。嘉のところも山城でした」

「広島のお城って天守無かったかしら?」

「ああ、広島城にはあります。嘉の地元は、安芸高田市なんで、吉田郡山城の方で、そっちも山城です」



 気になったのか、円は小説を閉じると、遥に質問した。嘉隆の地元の安芸高田市の吉田町にあるのは、毛利元就の居城のあった場所だ。興味も持ってくれた様で、その後は、城の話になった。



 * * *



 円の実家への、挨拶は拍子抜けするほど、あっさりとしたものだった。お土産を渡して、挨拶自体はそれで終わりだった。しかし、その後が大変だった。事前に遥を連れて行く事を伝えてあったので、驚く事は無いと思っていた。

 しかし、ギャラリーが多かったのだ。円の家族だけでは無い、近所の人たちも遥を一目見ようと押し掛けて来たのだ。遥はそれには平然と対応してる。



「古川くん、慣れているの?」

「まぁ、麻衣ちゃんの実家でも同じ様な事がありましたので」

「ああ、なるほど、田舎あるあるなのかしらね」

「田舎の概念をよく分かっていないので」

「ああ、そうね。古川くんは東京の出身だったわね」

「祖父の実家は長野ですけどね」



 長野も東北に比べるとそれほど、田舎では無いだろう。芸能人見たさに、人が殺到するのは、よくある事なのだろう。それが、レーゲンボーゲンと言う人気のあるアーティストだと尚更だ。



「高橋くん?」

「いや、お父さん、違う」



 ただし、年配の人たちは、有名人が来ると言う認識だけで、遥の事は知らない人が多かった。間違われた事に気を悪くする事も無く笑って遥は『高橋優』さんの『明日はきっといい日になる』と言う曲を歌って受けを取っていた。



「やっぱり、高橋くんじゃないのか?」

「だから、違うわ、お父さん。古川くん、わざとやっているでしょ」



 じろりと睨むと、遥は楽しそうに笑った。高橋優さんは、秋田の横手市出身のアーティストだ。見た目は全然、違うのだが、歌が上手いと言う点で、年配の人たちには見分けがつかないのかもしれない。


 駅前のホテルを予約していたので、遥は夕ご飯だけ、ご馳走になって、お暇した。ホテルの場所まで、送ってくれたのも円だった。タクシーを使うと言われたが、手間では無いと返された。


 今回の目的は、頼永家への挨拶を考えている遥だったが、それ以外にもう一つ目的があった。横手市であるお祭りを見たいと思っていた。



『送り盆まつりは、毎年8月に秋田県横手市の中心市街地で開催される祭りである。お盆の伝統行事の一種で、屋形舟繰り出しや市民盆おどりなど一連の盆行事を総じて『送り盆まつり』と称される。

 1998年(平成10年)3月20日に屋形舟繰り出しの行事が『横手の送り盆行事』として秋田県の無形民俗文化財に指定されている。

 送り盆まつりは8月6日のねむり流しに始まり、8月15日に市民盆おどり、8月16日に屋形舟繰り出しと花火打ち上げが行われる。送り盆とは一般的に盂蘭盆会の最終日に送り火などで親族の霊を送る風習のことであるが、横手の送り盆行事はこれを盛大に行ったものとして全国的に知られる。

 祭りの最終日である8月16日に開催され、この行事が『横手の送り盆行事』として県の無形民俗文化財に指定されている。当日は屋形舟繰り出しの他に法要や各種花火打ち上げも行われる。なお、開催日については1926年(大正15年)までは旧暦7月16日であった』



 遥の地元の浅草でも送り盆の行事はある。ここ何年も行っていないが、実家の家族は行っているはずだ。そう言えば、(あきら)聖良(せいら)が隅田川の灯籠流しに一緒に行った話をしていた。あちらも、順調な様だ。晃は、彼女と一緒に行った事が無い行事の一つに彼女を連れて行った、珍しい事だ。



「屋形舟のぶつけ合いって、面白いですよね」

「そうね、他では無いお祭りね」



 それは、一緒に観に行こうとなった。遥は気を利かせて、お墓参りをしようとは言わなかった。しかし、遥が来たと言う事実だけで、円の両親は分かってくれたと思っている。



* * *



 そして、次に来る時は、結婚の話になるかもしれない。こうして、遥の短い旅行と円の帰省が終わった。円は遥が、『送り盆』の行事を見に来たかっただけじゃないのかと思ったのだったが、遥は何も言わない。


 もうひとつ有名な行事である、『横手のかまくらまつり』は、冬に来るのは、古川くんには向かないかもしれないわね、と言われた。寒いのが苦手な事を円も理解している様だった。それに、遥は乾いた笑みを浮かべた。



 秋田の円さんの実家に行く話。遥くんは、かなり積極的です。



円「お土産、多すぎるわ」

遥「これ、麻衣ちゃんのところとか、愛夢ちゃんのところと変わらないな」

円「田舎あるあるなんでしょうね」

遥「横手のお土産って感じじゃないんっすね」

円「そうね、有名なものってほとんど他の地域が多いわね」

遥「お酒、重いけど、頑張るか」

円「麻衣さん、喜ぶと思うわ」



* * *



麻衣「…円さんにも認識された」

嘉隆「なに? お酒?」

麻衣「円さんにお土産にもらった」

嘉隆「あはは、じゃあさ、今度実家に帰った時に買って来ようか」

麻衣「うん、そうする。『雨後の月』が良いです!」

嘉隆「あ、そこ、広島なんだ。嬉しいな」

麻衣「あ、確かに、実家としか言っていない。うちの地元の事だったか」

嘉隆「それと、『雨後の月』は呉市だよ」

麻衣「嘉くんの地元のお酒でも良いです」

嘉隆「あははは、『でも』って言った」

麻衣「ごめんなさい」

嘉隆「気にしていないよ。じゃあ、『向井櫻』にしようか』



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