灯籠流しと晃と聖良(side晃&聖良)*
八月十日、この前の日の夜、嘉隆くんのおじいさんが亡くなっています。その頃の過去話になっています。
知識としてはあったが、聖良は灯籠流しは見た事が無いと言う事だった。ドイツでは、無いと思うが、おばあさんのところではしないの? と聞いたが、首を左右に振られた。あるかもしれないが行った事は無かった。
「灯籠流しは、浅生さんの地元の広島から、始まったんですよね」
「その辺の事、知っているんだ」
「はい、戦争で亡くなった人を弔うためですよね」
「広島への原爆投下をきっかけとして始まった死者と平和を願うイベントだね」
「驚いたのは、もっと昔からあったお祭りなんだと思っていました」
『関東大震災や東京大空襲など、隅田川で亡くなった多くの方々の霊を弔うために戦災殉難者、水難者の回向法要として始まった』
「回向法要ってなんですか?」
「大切な人が亡くなった後も、心安らかにいてほしいって言う思いで法要することだったはず」
「そうなんですね」
晃は、これも、戦後の話だと教えてくれた。灯籠が川に流されるのは、幻想的な風景だ。そして、内田家と古川家は仲良く一緒に見に行った思い出がある。大人になってから、もう何十年と行っていない。
「え、お付き合いしていた人とは行かなかったんですか?」
「うん、行った事ないな。うちの家族と遥の家族で行った事があるくらいだね」
「そうなんですね。もしかして、私を誘ってくれたのは、灯籠流しが戦災復興の意味合いがあると言う事は、同じ様に、戦災復興して来た私のもう一つの母国であるドイツが関係していますか?」
「いやいや、そこまで、大袈裟なものじゃ無いよ。でも、そう言う見方も出来るね。そうだね、ドイツと日本は戦争で手を取り合った友好国だったね」
そして、少し言いづらそうに、晃は続けた。その、言葉に聖良は嬉しくなった。だって、特別な感じがしたからだ。
「灯籠流しって、お盆と一緒で、家族の行事だと思っている。聖良ちゃんを誘ったのは、家族の様なものだと思っているからかな」
「それって、プロポーズですか?」
「どうかな、それは、おいおいね」
「あ、ずるいですー」
家族ぐるみとなると、内田家と古川家は、家族の様なものなのだろう。晃の姉のみどりは、古川家に嫁いでいるので、親戚でもある。遥と義理の兄弟になる。
「来年は、遥たちと一緒に見たいね」
「内田さん、古川さんのこと本当に大好きですよね」
「ああ、ごめん」
「私、分かった様な気がします。内田さんが振られる原因の一つは、きっと、彼女さんと付き合っていた時に、古川さんの話をするからですね。『私と付き合っているのに、他の男の話しないで!』って怒られたりしませんでしたか?」
「いやいや、なんで、そこ、遥で怒るの。他の女の子の話ならともかく」
「えへへ、冗談です。でも、私は気にしません。女の人だったら少しは気にするかもしれませんが、古川さんや浅生さんなら大丈夫です。あと、マリ姐でも!」
「あはは、麻衣ちゃんはOKなんだ」
はい! と嬉しそうに言ったら、晃には笑われた。浅生家も一緒に、誘うか、と言ったら、きっと、麻衣さんは来ないと思いますよ、と言われた。確かに人混みの多いところには、来ないかもしれない。
揺れる灯籠はいつまでも、見ていられる。灯籠を見つめて、晃が呟いた。今日の朝に、遥から連絡があった。それは、聖良の耳にも入っている。
「嘉のおじいさんのためにも祈ろうね」
「そうですね」
嘉隆の祖父が亡くなった事もあって、灯籠流しに来たかったのかもしれないと聖良は思った。聖良は、晃の手を取って、流れて行く灯籠に、二人は祈るのだった。
2024年の隅田川灯籠流しの日付が8月10日で、ミスっていました。日付固定で16日だと思っていました。そのために、灯籠流しの話をしている『隅田川灯籠流し』の話で修正を入れています。本当に申し訳ありませんでした。




