表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の架け橋  作者: 藤井桜
後日談+サブキャラのお話
521/547

莉子と博行の里帰り旅行(side莉子&博行)*

 前半は、嘉隆くんのおじいさんが亡くなった日の莉子さんと沖さん視点の話になります。後半は、麻衣が一度東京に仕事で戻って来て改めて、広島に戻る際に莉子さんと沖さんが同伴してくれた時の過去話です。



 麻衣から、その話を聞いたのは、土曜日の朝早く六時過ぎの事だった。麻衣には起床時間を告げているので、通話をしても問題ないだろう、と思われた様だ。LINEのメッセージが来る事の方が多いのと、時間が早かったので何かあったのか直ぐに気付けた。連絡のあった時点でLINEには、ひと足先にメッセージは入っていた。『六時ごろに詳しいお話をします』とだけ入っていた。


 嘉隆(よしたか)の事は、薄々気付いていた。こう言った事は莉子の実家が病院を経営しているのでたまにある事だったからだ。


 麻衣と嘉隆は、前日まで、嘉隆の両親と宮城旅行に行っていて、部屋に無事に帰宅した報告ももらっていた。そちらは、『帰宅しました』と言った短いLINEのメッセージだったので、相当、疲れているのだろうなと思っていた。早めにベッドに入っただろう、しかし、直ぐに起こされたのかもしれない。その後のメッセージは、帰宅後のメッセージよりもそれほど、時間が経っていなかった。



『莉子さん、おはようございます』

「おはよう、麻衣。何かあったのね」

『流石ですね、莉子さん』

「嘉くんは、他にも連絡する人が多いので、私から、お伝えしますね。嘉くんのおじいさんが亡くなりました。これから、始発で広島に向かっています。嘉くんが心配なので、私も行きますね』

「向かっているって、今新幹線の中?」

『あ、ごめんなさい。はい、そうです』

「分かったわ。社長には、連絡を入れておくわね」

『ありがとうございます、助かります』



 会話は直ぐに終わった。何かあったら、随時、連絡を欲しいと言っておいた。始発の新幹線で広島に向かっていて、事後でごめんなさいと言われた。流石に夜中に連絡をもらっても困る。それを分かっていたから麻衣はメッセージだけに留めたのだろう。


 莉子の隣りで博行も嘉隆と通話中だ。話の内容も一緒だろう。時計を確認して、こっちから社長には連絡をしておくと麻衣には伝えた。嘉隆の方も博行と遥、そして、マネージャーの野上に、と短い連絡を続けている様だ。



「莉子さん、すみません。嘉は忙しくて、詳しい話は聞けませんでした」

「麻衣には、随時、何かあったら連絡をする様に言いました」

「そうなんですね、ありがとうございます」

「嘉隆くん、落ち込んでいるんじゃないですか」

「まぁ、声は少し沈んでいますね」

「麻衣の方は少し眠そうではあったけど、しっかりしていたので多分、大丈夫かなと思います」

「それは、心強いですね」



 莉子と博行は顔を見合わせると、少し忙しくなるわね、と言って頷きあった。麻衣はその後、広島に長くはいられない。東京でTV局の出演があり、断れない仕事が入っているのだ。



 * * *



 その後、麻衣は広島に一泊だけして東京に戻って来た。残念ながら、火葬にしか出れなかったと言う事だ。お盆が近いのと、外せない仕事が入っていたので、どうしても戻って来なければならず、申し訳ないって戻って来て呟いていた。



「莉子さん、すみませんでした」

「お土産なんて、気にしなくていいのに」

「いや、迷惑かけたし」

「迷惑じゃないわよ。元々、休みだったわけだしね」

「ありがとうございます」

「で、嘉隆くんは、まだ実家なのね」

「はい、私だけ帰って来ました。お盆にまた行きます」

「そうなのね、本当に忙しいわね」



 少し疲れているのか、覇気が無い。律儀な性格なために嫁ぎ先のお盆のお墓参りを取りやめる事は出来なかったのだろう。



「莉子さんも、沖さんの実家に行くんですよね」

「その事なんだけどね、私たち、新幹線にするわ」

「えっと、新幹線って通ってましたっけ?」

「通っていなわよ。岡山で特急に乗り換えるわ」

「それって、やっぱり、私のためですよね」



 恐縮するのが分かっていたので、電車の旅も飛行機と違って良いものよ、と言っておいた。博行は電車に乗る事が好きなので、嬉々として、予約を取っていた。確定した予定だったので、麻衣たちが広島に行った時に飛行機から新幹線と特急に変更した。ただし、流石にお盆期間に入るので、朝早いのしか取れなかった。そして、気を利かせて、博行は麻衣の一人用の席と交換してくれた。麻衣もまた、朝早い新幹線で行くつもりでいたからだ。


 ありがとうございます、と言って麻衣は綺麗なお辞儀でお礼をしてくれた。少し、ほっとした様な表情に見えた。



 * * *



 東京駅で待ち合わせをして、麻衣と合流した。荷物は広島の実家に置いてきた分もあるからと言う理由でそれほど多くは無い。スーツケースを持っているが中はからっぽだと言っていた。



「これ、邪魔じゃ無かったら、これも、お土産にして下さい」

「あら。良いの?」

「はい、実家に行った時にお土産にもらったもので申し訳ないのですが」



 そう言って、渡してくれたのは、仙台銘菓だった。広島に戻った時のお土産だけでは無く、仙台からのお土産まで渡された。日持ちのするもので、もしかしたら、忙しくて持て余していたのかもしれない。そう言う事なのでありがたく受け取った。


 新幹線に乗る前に、真剣な表情で、お弁当を選んでいたら、麻衣に笑われた。ようやく、笑ったわね、と言って麻衣の背中を叩く。麻衣は、おにぎりを選んでいたが、莉子の視線にちゃんと食べますよ、と言った。



「ちゃんと寝れた? 時間まで寝ていたら? クマが出来ているわよ」

「はい、ちょっと、ばたばたしていたので。少し寝ますね」

「ええ、お休みなさい」



 朝ごはんを食べて、麻衣は岡山に着くまで、莉子の肩を借りて仮眠する事にした。安心する様に眠る麻衣の頭を撫ぜて、莉子はこうするのは、久し振りね、と言って笑った。



 岡山駅に近付いて、麻衣を起こす。目覚めは悪く無い様で、スッキリした様な表情だ。ありがとうございます、お陰様でよく眠れましたと言って笑ってくれた。



「まだ、大変なんでしょ。無理はしないで嘉隆くんを支えてあげてね」

「川村さん、何かあったら連絡して下さい。僕たちで良かったら駆けつけますからね」

「あら、かっこいいわね」

「まぁ、車で三時間ぐらいかかりますが、島根と広島なので行き来出来ますからね」



 麻衣は、入れ替わりに元の席に戻って行った。莉子と博行には、特急に乗り換えて、島根に向かう事になった。特急は久し振りですね、と言う博行は不謹慎だけど、嬉しいですねと困った様に言っていた。



 * * *



 あれから、麻衣からは連絡は無い。特に問題は起こっていないのは、良い事だ。ただ、連絡が無いという事は忙しいのかもしれない。



「そうよね、あれでも、麻衣は嫁なんだものね」

「お盆なので色々とやる事が多いと思いますよ」



 博行の実家はこの時期は、長期休みに入ると言う事もあり、それなりに忙しい。仕事の合間にお墓参りを済ませるのが毎年のお盆の通例だった。莉子のところもそれは変わらない。ただし、父の実家のお墓参りは七月で、母の実家のお墓参りは八月なので少しだけ時期が違う。そして、毎年父だけがお墓参りは不参加だ。今は、それと弟も不参加だ。



「何か手伝いますよ」

「買い出しに行きましょうか」

「そう言って、仕事をもらえると助かるわ」

「それは、僕も一緒です。これでは、また、嘉や遥に笑われますね」



 仕事人間なんだから、と言って美月には呆れられ、麻衣にはため息を吐かれる事だろう。こっちでの、仕事は、流石に、いつもの仕事と違うもので、料理が苦手な莉子はほとんど役に立たない。申し訳無いな、と思っているのだが、博行の両親は特に気にしていない様だ。でも、麻衣と一緒に少しはやっておいて良かったと思う。

 免許は持っているが、ほとんど運転する事が無く、車に乗る時は、麻衣に乗せてもらう事も多い。それよりは、博行の方が運転の機会が掩いかもしれない。東京にいると、免許は身分証明書にしかなっていない。買い出しに出かけても荷物持ちにしかならなわね、と言うと食材の目利きは優れているでは無いですか、と言われた。これも、きっと麻衣お陰だ。麻衣に頼られてはいるが、自分もかなり頼っているのだなと思う。



「慌ただしい、お盆で申し訳ありません」

「去年は忙しくて来れなかったので、慌ただしいなりに楽しんでいますよ」



 去年の夏は、麻衣の写真集の撮影で忙しかった。色々と落ち着いてから、短い休みを取って、島根には行った。それから、手伝いをしながら、莉子と博行は出雲神社にも行った。

 麻衣からは、連絡はその後も無く、困った事にはなっていないのだろう。ゆっくりと休めていると良いわね、と思いながらもこちらから連絡する事はしなかった。自分が、入ると仕事との事を話してしまうのもある。頼られるのが嫌いでは無い、それだけが少し寂しいと言うと笑われた。



 出雲への帰省は、短い上に忙しく走り回って、終わりを告げた。遠いのもゆっくり出来ない理由だし、実家が旅館だと忙しいのも分かる。旅館の手伝いは流石に頼まれる事は無かった。

 

 お土産に『因幡の白うさぎ』を博行が選んでくれたけのだが、麻衣は黒いけどねと莉子は苦笑していた。きっと、口に入るのは麻衣では無く遥が多いと思われる。



 前半と後半に分かれているので、分けても良かったですね。二本に分けなかったので、かなり長いお話になってしまいました。どじょう掬いまんじゅうは松江のお土産だったので、きっと買っていません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ