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虹の架け橋  作者: 藤井桜
後日談+サブキャラのお話
510/511

大好きなお姉ちゃん(過去編)*

 麻衣と橙子お姉さんの過去話です。



 小さい頃から、橙子(とうこ)姉は橙子姉のお母さんと一緒にうちに来る事が多かった。お米や野菜を取りに来るついでに、母と一緒に『お茶っこ』を飲みながら世間話をする事がある。

 その間、私は橙子姉と一緒に庭先で歌を歌って過ごす。新しい歌を知ると、一番に橙子姉に聞いてもらいたかった。そして、それを一緒に歌うのだが、それ以外にも色々な歌を歌った。幼い頃は童謡が多かったが、小学生にあがるとTVで流れる歌が多くなった。

 しかし、それも中学生に上がってからは、少しづつ減っていた。橙子姉は部活が忙しくなったのだ。私は相変わらず、祖母に教えられる民謡と踊り、三味線を続けているので、中学に入ってからは、部活は名ばかりで免除された。



 * * *



 高校に上がると、私を待っていたのは、橙子姉だった。入学式で会った橙子姉は、更に綺麗になっていた。最後に会ったのは、二月末の事で、おばあちゃんが亡くなった日だ。



「麻衣、やっほー」

「橙子姉!」

「制服、可愛いわね、って言えないのが麻衣なのよね」

「足がスースーする」

「中学はどうしてたのよ」

「ジャージOKだった」

「ジャスOKだったのか」

「私、その呼び方嫌い」

「ごめんごめん。…絵美ちゃんもやっほー」



 私の身長に隠れていて気付かなかった様だ。ひょこりと顔を出した、絵美は明るく返事を返していた。私も絵美もはっきり言って制服が似合っていない。

 私は、これ以上、伸びないと思ってぴったりのサイズ選ぼうとしたんだけど私に合うサイズが無かった。ウエストに合わせたらスカートの裾が短すぎた。でも、みんなそれくらいの長さなので、問題無いって言われたんだけど、似合っていると思えない。足が細すぎてがりがりなんだよね。ブレザーは袖丈ぎりぎりまで調整してもらった。

 絵美は一つ大きいサイズ選んだのでやっぱり、すこしぶかぶかで似合っていない。



「橙子姉やっほー! そう言えば、橙子姉はなんで、入学式にいるの?」

「入学式の後に部活紹介あるでしょ。それに、出るからだよ」

「三年生は?」

「うち、三年生は部長しかいなくて、二年から選ばれた。部活紹介で二人でトスするんだ」

「そうなんだね。えっと、弓道部あるよね?」

「お、絵美ちゃんは弓道部に入るんだね」

「はい、中学に無かったから、楽しみです」

「そっか、麻衣はどうするの?」



 絵美は、ずっと弓道がやりたい言っていた。それは毛利元就が大好きだからだ。中学には、弓道部が無かったので、次点で美術部にした。私も絵美と一緒で美術部だった。



「え、帰宅部?」

「部活入らないのか」

「だって農業科って色々と実習大変そうだし」

「うん、慣れるまで大変みたいだね」



 体力の少ない麻衣では着いて行くのがやっとじゃ無いかって言われた。家でも手伝いはするけれど時間に縛られるのは田植えと稲刈りぐらいでその他はそれほど慌ただしくは無い。それと違って、学校では、時間が決まっているので大変だろう。



「絵美ちゃんは、なんで農業科にしたの?」

「もちろん、麻衣と一緒だと楽しいからだよ」

「そっか、高校生活楽しもうね。私ともいっぱい遊ぼう?」

「はい、ぜひぜひ!」



 その後、入学式が始まるので、私たちは移動した。橙子姉もこれから、準備があるからと言って、戻って行った。あ、一緒に写真撮るの忘れた。そう言うと、絵美は帰りの方がいいよ、と言ってくれた。ああ、確かに。校門の『入学式』の看板には列が伸びている。これじゃあ、確かに後の方がいいね。



 * * *



 二年生の文化祭では、橙子姉に驚かれた。だって、私はクラスメイトと一緒に有志でバンドをする事にしたからだ。私の衣装は、クラスの女の子が作ってくれた、って言ったら相変わらず人たらしね、と言われた。いやいや、そんな事ないよ。



「麻衣、本当に歌うの?」

「うん」

「成長したわね」

「橙子姉、しみじみ言わないで」



 橙子姉のところは、部活は既に引退しているので、橙子姉はバレー部だった、出し物はクラスだけだったらしい。何をするの、って聞いたら驚きの答えが返ってきた。



「うちは、劇をする」

「え、すごい!」

「それほど長いものでは無いのよ。ミュージカルの様な感じ」

「橙子姉は出るの?」

「ううん、私は裏方。衣装をちょっとだけいじった」

「そっか、あ、じゃあ、ちょっとお願いがあるの」

「何?」

「当日の衣装預かってきたんだけど、ちょっと、袖が短いの。短くて中のシャツが出ちゃうんだよね。調整出来ないなかなって」

「良いわよ、貸して」



 預かった鞄からジャケットを取り出す。白のジャケットにきらきらした飾りが付いている。それを見て、橙子姉は感嘆の声を上げた。すごいよね、クラスに手芸が得意な子がいるんだ。



「うわ、すごいね。うちのも手伝ってもらいたかったよ。うちのクラスは、いじったって言っても、ちょっと、飾りを付けたりしただけなのよね」

「これも、そうなんじゃ無いかな」

「でも、細かい装飾は、明らかに手作業よ、これ」



 既成の男性用の服を使ってくれたんだけど、それでも、袖が短かった。橙子姉は確認すると、これフリルか何か付けた方が良いかもね、と提案してくれた。袖がこれ以上、出せなかった様だ。



「聞いて見る」

「役に立たなくてごめんね」

「ううん、聞いて良かった。このまま、袖丈が短いの着たくなかったから」



 橙子姉にアドバイスをもらって、修正を入れた、ジャケットはみんなに似合うと褒められた。フリルは可愛すぎたかなと思ったんだけど、喜んでもらえて良かったよ。それと、新くんのにもフリルが付いて面白かった。王子様もフリル付きのジャケット似合うよね。



 その後、本番で橙子姉のクラスの劇を見る事が出来た。普段着に、チェーンとか付いていて、ああ、と納得した。なんか、東西の抗争がストーリーの話だって。だから、服装がちょっとチャラい。でも、ほら、文化祭なので、ちょっとだけだ。これ、もっと本格的にやったらダメなやつだ。

 でも、ストーリーに引き込まれて、すごく良かったです。こう言う出し物のありなんだね。うちのクラスは普通に喫茶店だったからね。



 * * *



 橙子姉が卒業した。一歳違いなので当たり前の事だけど、寂しい。私を否定しないでくれて、そして私を応援してくれた大好きなお姉ちゃんだ。頑張ったね、と言って頭を撫ぜてもらえる事はこれからもあるかは分からない。だって、橙子姉は、四月から仙台で働くって言ってた。なので、本吉と仙台は遠い。


 その後、橙子姉は、お正月に一度帰って来た。すっかり、大人の女性で更に綺麗になっていた。それが、橙子姉に会った最後で、それから、大人になって、仕事が落ち着くまで、会う事は無かった。私を心配して、実家からの流れで、福島の名産を送ってくれる。いつか、会えるといいな、と思ってかなりの年数が経った。


 私が、橙子姉に会うのは、それから十年以上経ってからになる。



 * * *



 絵美が楽しそうに嘉くんに話していた。何の事かと聞いたら、私が高校の頃に橙子姉にくっ付いていた事だ。いや、それほどくっ付いていないよね。橙子姉が、他の女の子に、ずるいと言われるほどにはべたべたしていたらしい。昔の事なので、橙子姉は笑っていたが、(よし)くんは違った。



「麻衣、ずるい」

「嘉くんは、高校の時の女の子ですか。おんなじ事言ってる」



 それを、バラした絵美は大笑いしている。いや、バラした当事者は傍観ですか。よっちゃんなら、そう言うと思ったって言われた。今日は通話だけで良かったよ。ビデオ通話だったら、絵美に突っ込まれている。だって、嘉くん、後ろから私をいつものポジションで抱えたままなのだ。



『で、よっちゃん、麻衣にべたべたしてるんだよね』

「よく分かるね」

『だって、この話をしたら、するに決まってるじゃないの』

「あはは」



 がー、笑っている場合では無い! 絵美もいつもの事の様に言っているけれど、ビデオ通話じゃ無くても恥ずかしい。逃げ出そうともがいたけれど、離してはくれなかった。どこもまで、羨ましかったんだ。それは、絵美との通話が終わっても離してはくれなかった。



 絵美が嘉隆くんにバラした話です。橙子姉大好きですね。ここまで、甘えているのは珍しいかもしれません。

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