なんて。と私は聞くの。*
遥くんのセカンドアルバムが発売する頃の過去話になります。
日付が変わる明日は、遥くんのセカンドアルバムの発売日だ。遥くんの悪巧みが続いていて、今回は、遥くんのアルバムの発売日に私の新しいシングルが配信される。まぁ、その前に、『Fluss』のライブで一足早くお披露目されたんだけどね。遥くんの方は九月か十月の配信かなとは言っているが詳しいことは知らない。CDの発売は十一月では無いかと踏んでいる。それは、私のシングルの発売日だからだ。
悪巧みって言う表現は嘉くんが付けた。それにさえ、遥くんは嬉しそうなんだよね。ほんと、策士だね、って嘉くんは半分呆れている。
「麻衣のシングルの配信時刻って何時?」
「遥くんのと一緒で、日付が変わる二十四時に配信される」
「そっか、あと数時間だね。これ、一曲だけの単独発売なんだ」
「うん、シングルCDは十一月だからね。でもさ、あれ、カップリングの曲はレコーディングしていないのよ。その意味わかる?」
「ああ、ほんと、遥ずるいよね。それって、確実に麻衣のと遥ので両A面にするつもりじゃん。もう、発売日が十一月ならCDに出来上がっていると思うよ」
「やっぱり、そうだよねー」
「遥もそろそろ、麻衣にサプライズやめればいいのに」
嘉くんも遥くんのシングルCDの発売日が十一月だと思っている。それと、私のと一緒じゃ無いかとも。それって、やっぱり、『Fluss』で出すのかな。一緒には歌っていないよね。その辺どうなるんだろう。やっぱり、そう推理出来るよね。はは、遥くん言われているぞ。まぁ、サプライズでも私は一向に構わないんだけど。でも、そろそろ嘉くんのご機嫌斜め、爆発しそうなんだよね。その辺は、遥くん何か考えあるのかなぁ。
タブレットを手に私と嘉くんはリビングにいる。反応が知りたいので、配信される時間まで待機中だ。いつも、配信される時間を待つのはどきどきする時間だ。SNSも、落ち着いたもので、いつも通りだ。遥くんの方は、既にアルバム発売の告知がされているので、早く入手したい人たちで界隈は騒いでいる。
その間、動画サイトの配信をしながら待っても良かったのだが、これ以上、嘉くんを刺激したく無い気持ちがあった。
「なんて。と『私』は問うの。」
「そこ、『僕』じゃないんだ」
「だって、『私』が聞いているからね」
「なるほど」
嘉くん、続きが気になる様だ。これは、これから配信される曲の歌詞では無い。嘉くんに向けての私のオリジナルの歌詞だ。
「なんで。も無いその言葉に。」
なんて。 素晴らしいこの日に。
なんで。 こんなにも、好きなのだろう。
嬉しそうに破顔した嘉くんから、甘いキスをもらった。配信はやめた。嘉くんのご機嫌取りをする事にしたからだ。そして、日付が変わって、無事に私の曲は配信された。
なんて。 と僕は問うの。
なんで。 も無いその言葉に。
なんて。 素晴らしいこの日に。
なんで。 こんなにも、苦しいのだろう。
なんて。 と君は答える。
なんで。 も無いその言葉に。
なんて。 寂しいこの夜に。
なんで。 こんなにも、苦しいのだろう。
なんて。 と私は問うの。
なんで。 も無いその言葉に。
なんて。 素晴らしいこの日に。
なんで。 こんなにも、好きなのだろう。
なんて。 と君は答える。
なんで。 も無いその言葉に。
なんて。 寂しいこの夜に。
なんで。 こんなにも、好きなのだろう。
まぁ、歌詞は一部しか変えていないんだけどね。それでも、私の気持ちは伝わってくれたかな。リビングにいたのもそう言う事だ。全部、嘉くんを受け入れるつもりでいる。
タブレットをテーブルに上に置くと、私は両手を広げた。寂しがり屋の誰かさんのために。勢い良く、私を抱き締めた嘉くんの背中に腕を回して、私は耳元でもう一度囁いた。
なんで。 こんなにも、好きなのだろう。
すると、嘉くんは私の歌に返す様に、甘い甘い答えをくれた。寂しい夜じゃないよね、きっと。もう、SNSは気にしない。お仕事モードはやめた。
「ようやく、こっちを見てくれた。今日は、覚悟してね」
すっかり機嫌の直った嘉くんは、私をソファに押し倒して、蕩ける様な口付けで微笑んだ。
ここずっと、遥くんとの仕事を優先してきたので、嘉隆くんが仕事なのだと割り切ってはいますが、機嫌はあまり良くは無かったです。それを、分かっている麻衣は、前よりは成長した様で、恥ずかしい気持ちはあったと思うのですが、頑張りました。




