その声とギターと
特定のアーティストと曲名が多く出てきますので、苦手な方はご注意下さいませ。
作業部屋で何故そんなところで聞いているのって、始まる前に言われた。だって、近いと思わず一緒に歌ってしまうからだ。シンガーあるあるで、TVを見ていても一緒に歌ってしまう。なので今私はドア近くにいて、クッション抱えて顔を埋めて座っている。喋るのを防止するためだ。
私は嘉くんにあいみょんさんの、『マリーゴールド』を歌って欲しいとお願いした。更に、我儘を言ってギターの弾き語りもお願いしてしまった。そして、それを嘉くんの動画配信サイトで歌ってくれる事になったのだ。それくらい我儘じゃ無いから、なんでも言ってって言われた。
「あいみょんさんの『マリーゴールド』をリクエストしてもらったので、練習しました。練習しないと怒られるんだよね」
いやいや、私は怒ってないないよ? チャットに流れた、『旦那、グッジョブ』ってそれ、いい加減にやめない? いつまで、私が旦那なんだ。それと、それ言ったの、私だと思われているんだけど。だって、私の名前が上がったからだ。
「あ、これ、言ったの、遥じゃ無いからね」
その一言に、『もう一人の旦那だ』、いやいや、遥くんも『旦那』って呼ばれているのか。受けているけれど、遥くんだけじゃ無くて、私の方も否定して下さい。
嘉くんはあいみょんさんの歌以外にも何曲か弾き語りをすると言う事だ。ストリートライブでは、女性ボーカルの歌は歌った事無いね、って意外な話が出て来て聞いている人たちを驚かせていた。
「これ、後で、『歌ってみた』でも、あげるので、良かったら聞いてね。今のよりも精度上げるから、宜しくね」
アーカイブでも見れるけれど、こうして、別撮りして上げてくれるサプライズにファンとしては、かなり嬉しい事だろう。その後に、公言した通り、何曲か歌ってくれる。基本、レーゲンボーゲン再開後にカバーする事になった歌が多い。今回は、女性ボーカルの曲だけをセレクトしてくれた。
「これは、TV番組でも歌ったね。渡辺美里さんの『My revolution』と、My Little Loverさんの『Hello, Again 〜昔からある場所〜』かな』
少し懐かしい曲をセレクトしてきた。でも、どちらもTVの番組で歌っている。それと、この曲選はわざとだ。シンガー名か曲名に私の名前が入っているからだ。
「最後にこの曲。実は、初めて歌うよ。YOASOBIさんの『夜に駆ける』を歌います。これは、遥が配信で歌っているんで、良かったら聴き比べてくれると嬉しいね」
男性ボーカルの力強い声質だった遥くんと違って嘉くんの『夜に駆ける』はしっとりとした、甘い歌声を響かせてくれた。これ、前にカラオケで、愛夢ちゃんと内田くんが『アイドル』の方を歌っていたね。私も、YOASOBIさんの曲を歌いたくなったぞ。
歌い終わって思わず拍手をしてしまった。あ、しまった。マイク音拾っちゃったかな。嘉くん私を見て甘い笑みを浮かべた。ちょっと待って、その表情は反則だ。だって、配信中だよ。近くに置いたテーブルの上のタブレットの配信チャットで、黄色い悲鳴が上がった。ハートマークが飛び交っている。でも拍手には気付かれなかった様でほっとした。
「それじゃあ、また、不定期になるけれど、チャンネル登録と高評価もらえると嬉しいね」
手を振って、嘉くんも配信は終わった。時間にして、トーク挟んで一時間弱ほどの配信だった。終わった瞬間に私は平謝りしていた。あそこで、気付かれなかったけれど、拍手はまずかっただろう。
「麻衣おいで」
「お疲れ様でした」
「ね、お願いがあるんだ」
「なに?」
「これ、歌うんで録音頼んでも良い?」
お、熱があるうちに歌ってしまおうと言う事らしい。『夜に駆ける』を録音する様だ。『マリーゴールド』の方は録音が終わって配信するだけだ。
「最初に、『マリーゴールド』を配信しちゃった方が良く無い? 日付変わるよ」
「そっか、もうそんな時間なんだね。ん、じゃあ、配信してから、さっさと終わらせちゃおう」
有言実行、嘉くんは一発どりで録音を終わらせた。お、これ、有名な配信チャンネルでも歌えそうだね。間違える事も無く歌い切った。これは、調整して後日配信する予定だ。私にとって、耳が幸せな一時間でした。
あいみょんさんを歌って欲しいと、麻衣がリクエストしていたので、配信で歌っています。




