スコーンと麻衣
レシピを調べていて、結局、私は投げ出した。いや、これ作るのめちゃくちゃ大変だ。強力粉使うのか、小麦粉でも作れなくは無いけど、強力粉の方が美味しいなら、そっちを使いたくなる。作るとなると、普段家で使わない材料を買ってくる事になる。強力粉にベーキングパウダー、食塩不使用のバターも必要だ。有塩のバターならあるんだけどね。砂糖も出来れば、グラニュー糖が良いみたいだ。
「スコーン食べたい」
「麻衣って、突然食べたいって言い出すよね。前に、仙台でライブした時に、紅茶の専門店に行ったよね、あの時も、スコーン頼んでいたけど、好きなの?」
「そこまで、好きなわけじゃ無いんだけど、たまに、食べたくなるんだよね。こないだのプリンと一緒かなぁ」
「プリンより作るの大変?」
「うーん、どっちかって言うと材料の問題かな。プリンは家にあるもので作れたけれど、スコーンの材料は、家に無い」
「無いの?」
「強力粉も無塩バターもグラニュー糖もベーキングパウダーも無い!」
「ああ、普段使わないものばかりだ」
「他にも作るつもりないから、余す事になるから買いたくないんだよね」
まぁ、やっぱり諦めかな。そう思っていると、にこにこと楽しそうな嘉くんと目があった。ああ、言いたい事が分かった。外を見ると天気が良い。うん、散歩も良いかな。私は、嘉くんの提案に乗る事にした。
そう言うわけで、これからスコーンを食べに行く。どこか、美味しいお店を遥くんに聞いたら、数軒リストアップしてくれた。悩むな、で、結局うちから一番近いお店にしたら嘉くんに笑われた。どこまで、ものぐさなの、って言われた。
麻衣って、適当な材料で作る事はしないよね、と言われた。確かにそうかもしれない。うん、小麦粉を使うレシピもあったし、有塩のバターでも、普通の砂糖でも問題ないレシピもあったんだけど、作るなら適当なものは嫌だ。
* * *
紅茶の種類は複数あったけれど、ここはやっぱり、アッサムだ。ミルクたっぷり入れるけれど、砂糖は入れない。頼んだスコーンにも紅茶が入っていて、これもアッサムだって説明を受けた。もう一つは、プレーンだ。一緒にクロテッドクリームといちごのジャムが付いてきて美味しそうだ。嘉くんは、スコーンでは無く、パスタを頼んでいた。嘉くんにお昼食べに来たんだよね、と笑われながら言われた。
「え、スコーン食べに来たんだよ?」
「麻衣、時間わかってる? 今お昼時だよ」
「え、あ、ほんとだ」
時計を確認するともうすぐ、お昼になるところだ。お昼よりちょっと早いので、並ばずに入れたので、気にしていなかった。いや、でもこれで十分です。私はそう言って、スコーンを割ると、いちごジャムとクロテッドクリームを付けて、嘉くんの口元に持っていった。
「それ、麻衣の食べる分、減るでしょ」
「でも、味見したくない?」
「したいけど、じゃあ、はい、あーん」
くるくると綺麗な所作で嘉くんは、パスタを取ると私の口に押し込んだ。ほうれん草とサーモンのクリームパスタだ。麺がフェットチーネで美味しい。平たい麺はもちもちして美味しい。もう一口、いる? って聞かれたけれどそれは断った。だって、スコーンが食べれなくなるもの。
「ううう、美味しい」
「あははは、どれだけ食べたかったの」
「さすふるだよ」
「語彙力低下してるよ。まるで、遥みたいだよ」
こんなに、噂していたら、遥くん今頃くしゃみしているかもしれない。この紅茶が入ったのは、遥くんに買って行こうかな。
「プレーンを三つ買うかな。うちにレモンジャム残ってたし」
「テイクアウト出来るの良いよね。クロテッドクリームも買えるみたいだ」
「明日の朝ごはんにしようか」
「それ、良いね」
スコーンは毎日食べても良いな、そう言うと流石に偏り過ぎって怒られた。嘉くんは、私に餌付けする事に喜びを見出した頃から、ちゃんと自分もバランスの良い食事を食べる様になったんだよね。なので、嫌だとは言えない。
最後のスコーンを頬張ると嘉くんにウサギみたいだね、と笑われた。
スコーンよりも、クロテッドクリームが好きかもしれない。
* * *
「遥くん、ありがとう」
「俺、もらっていいの?」
「遥くん、珍しく遠慮してる」
「じゃあ、遠慮しない。もらう」
「あは、それでこそ遥くんだよ」
「嘉、そこで、大笑いしてるんじゃ無いよ」
* * *
遥くんは、スコーンも好きです。




