君と僕の嘘
玄関で、靴の整理と靴のケアをしていた嘉くんに手招きされた。何かあったかな? いらない靴でもあって、その確認かなと思ったんだけど、嘉くんは、奥にあった私の靴を引っ張り出して、綺麗にしてくれた。箱に入りっぱなしだったんだけど、それでも埃はどこからか付くものだ。
「麻衣、この靴は履かないの?」
「ああ、それか。結構、値段が張って買ったんだけど、それほど履いていないのもあって、捨てること出来なかった」
「デザインが気に入らなかった?」
「ううん、違う」
その靴はかなり、踵が高いのだ。困ったな、なんて言えば良いかな。無言でいると嘉くんがそれを私の前に置いた。これは、嘉くんに出会う前に買った靴だ。踵は高いけれど、色と形が気に入って買ったものだ。フォルムが少しメンズものに近くてカッコいい。
玄関にしゃがみ込んでいるので、見上げる嘉くんの表情はすごく、嬉しそうだ。そして、前に言った言葉をもう一度呟いた。いや、それは気にしていない、と思う
「やっぱり、俺との身長差を気にしているの?」
「そんな事ない」
「表情はそうは、言って無いよ。麻衣はやっぱり、嘘付くの苦手だよね」
そう言って、嘉くんは私の足に触れた。靴下を履いているけれど、くすぐったい。言葉に出来ずに無言になるのは、肯定しているのと一緒だ。
「嘘付くと、なんだっけ。頭が痛くなるやつ?」
「それ、西遊記の孫悟空の『緊箍児』で、悪い事すると締め付けられるのであって、嘘付くとでは無い」
「そんなの無かったっけ」
「嘘を付くと鼻が伸びるのはピノキオの事じゃ無い?」
「ごちゃ混ぜになっちゃった」
「そうじゃ無くて。私も、気にしていません」
「ほんと? じゃあ、今日はこれを履いて出かけようね」
嘉くんがにこにこして嬉しそうだ。私が気にしているのは、嘉くんが私と並んで歩いて嫌な思いをしないかと言う事なんだけど、その表情を見ていると違うのがよく分かったよ。本当に気にしていないんだね。
嘉くんの手を借りて、靴を履くと身長が嘉くんとほとんど一緒になった。これは、遥くんの身長よりも高いかもしれない。
「いいな」
「何が?」
「この、麻衣と視線を絡める事が出来る距離が好きなんだよ」
「ちょっと、恥ずかしいよ」
「結婚式の写真以来じゃ無い?」
「そうかな」
「あの時もぶち嬉しかったけど、あの時は残念な事に一緒に歩けなかったしね」
「そうだね」
「麻衣、気にしてるっぽいところがあるから、ヒールのある靴を買ってって言えなかった」
結婚式写真では、五センチほどのハイヒールだった。あれは、写真を撮るだけで特にどこかを歩いたりはしていなかったからね。
「ごめんなさい」
「麻衣が謝る事じゃないでしょ」
「これだけは、言っておく。私ね、嘉くんが嫌な思いしているんじゃ無いかなって思っていただけ」
「俺何度もそんな事無いよね、って言ってるよね」
「ハイ、ソウデス」
「麻衣は麻衣らしくが一番良いんだよ」
そう言って、嘉くんは目線を合わせて、とろける笑みを浮かべた。ううう、複雑な表情を浮かべる私に嘉くんは甘い口付けをくれた。きっと、キスしたいだけですよね?!
少しだけ甘いを目指しました。最近は、イチャイチャしている話を書いていなかったので、たまに書きたくなります。




