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虹の架け橋  作者: 藤井桜
本編
34/414

君が僕の事を名前で呼んでくれた(side レーゲンボーゲン)



 自分にも、好きな人を独占したい、そんな思いがある事に驚いた。一緒に居られるためなら、何でもしたい。そして、彼女が振り向いてくれるなら、想いに答えてくれるなら、そんな嬉しいことはない。

 あの時の、焦がれる思いと共に聞いた優しい歌声。それが、すぐ側でずっと、聞いていられるなら。どんな、困難さえ、超えられそうな気がする、その言葉を込めて、自分は歌う、歌い続けていくんだ。



 麻衣にイエスと言わせて、広島公演と、TVでの仕事の間、嘉隆(よしたか)の実家に泊める事になった。強引なのは、分かっているつもりだった。戸惑う様子は見せたが、頷いてくれたのは、純粋に嬉しい。

 父には彼女だと説明するつもりはなかったが、多分、気付いているだろう。前妻ですら、女性を実家に呼んだことはないのだ。

 父が駅まで迎えに来てくれた。麻衣の荷物の多さに彼女ははにかんで、お土産持って来たの、せっかくお邪魔するんだから、必要でしょ、と言った。


 実家に着いて、麻衣の荷物を手に玄関に向かう。ふと、後ろから声を掛けられた。それに、驚いたのか麻衣が、荷物に躓いて、よろけた。その腰を引き寄せたタイミングで近所のおばさんの甲高い声が響いた。

 抱き寄せる形になったまま、固まる麻衣の身体を戻すと、近所に住む長野さんだった。

 嘉隆は、声を掛けられた、おばさんの方を振り向く。おばさんは良い笑顔で嘉隆に野菜の入った袋を押し付けるとごめんねぇ、と言って帰って行く。慌てて、麻衣に野菜の袋を渡すと嘉隆はおばさんを追いかけた。



「綺麗な彼女じゃけぇ、嘉坊」

「いや、彼女じゃないけぇ、友達じゃけん」

「そうなの? お野菜いっぱい獲れたけぇ、彼女と食べんしゃい」



 誤解を解こうと思ったが上手くはいかなかった。きっと、明日には、近所に広まるな、と嘉隆は諦める事にした。麻衣に心の中で謝りながら、玄関に戻ると車を車庫に移動させた父が不思議そうに見てくるのを、何でもないと告げると二人で家に入るのだった。



 麻衣のお土産は家族に好評だった。酒の好きな父は早速開けて、母に小言を言われている。それにしても、さほど大きくはないと言っても、二本の日本酒は多いと思う。重かっただろうに。



「綺麗なお菓子ねぇ」



 地層のような、綺麗な層を作っている可愛らしいお菓子は母も気に入っているようだ。家には、父母しかいない、二人の姉は既に結婚して家を出ている。すぐ上の姉は近所に住んでいるので、たまにやってくるが一番上の姉はここよりも遠いところにお嫁に行って、お盆とお正月ぐらいにしか帰ってこない。


 きっと、すぐ上の姉が明日にでも、やってくるだろう。母が連絡していないわけがない。実は、嘉隆の家族の中で一番、騒がしい人なので、出来れば来ないで欲しかった。



 そして、ようやく麻衣が名前で呼んでくれた。ここで苗字で呼ぶとみんな振り返る。照れながらそう言ってくる姿は可愛かった。



 お菓子、気仙沼のお菓子屋さん、パルポーのGottoって言うお菓子で、地層の様に生地が重なっていて綺麗なお菓子です。難点は、崩れやすく、食べにくい事。

 近所のおばさまの反応は、どこもこんな感じですよね。話聞いてー、と言いたくなる(笑)。

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