君の心を知りたいと、僕が言った(side レーゲンボーゲン)
いつもの個室のあるお店に、待ち合わせよりも早く来た、麻衣は、それよりも、早く遥がいる事に驚いた。事前に、嘉隆は単独の仕事が終わらずに、遅れる旨の連絡を受けていた。
初めに、店員さんにビールと食事を頼む。遥はいつもと違って、真面目な表情をしていた。
時計を確認して、嘉隆が来るまで後、一時間は大丈夫だろう。ビールの一杯では、酔うほどでは無い。麻衣は、遥の向かいに座る。
それが、遥にとって、チャンスだと思った。はっきりと聞いておきたい事がある。大まかに、知っている範囲で、嘉隆の離婚の話を切り出した。麻衣が知らない事は話す時では無いと判断した。それは、時がくれば、嘉隆の口から話してくれる事だろう。
「と言う事は、今は、付き合ってる人いないんだよね」
「ああ、そうなる。それでさ、麻衣ちゃんに聞いておきたい。俺はあの時、あいつが傷付くのを間近で見た。弱っている事にも気付かずに、それを今でも悔やんでる」
「これ以上、浅生くんに近付くなっていう忠告?」
「いや、そうじゃないんだ。あいつは、分かりやすいくらい君に本気だ。そして、君は誰よりも真っ直ぐで、きっと、嘉の心を癒してくれる」
「や、大袈裟だよ。浅生くんと居ると楽しいよ、一緒にいると、安心出来る。分かっている、あの頃とは違うって。独りよがりだった私には、浅生くんは勿体無い人だよ」
「それが、君が二の足を踏んでる理由?」
「だって、私の我儘と、優柔不断と、みんなを不幸にしてまで、愚かな結婚をしたんだよ。浅生くんだって、そうやって、傷付けるかもしれない。私はダメなの。結婚には、向いてないんだよ」
確かに、嘉隆は裏切られるだけの離婚を経験した。それとは、対照的に麻衣は、自らの我儘で周りを振り回して、最終的には、離婚した。しかし、どちらも傷付いた。形は違えど、心に深い傷を負って、前に進めない。
「あいつは前に進もうとしている。麻衣ちゃんを好きになって、変わろうしている。ここで、君があいつの手を離したら、きっと、後悔する」
「私を脅してますか」
「そんなつもりはないよ。単純に君の気持ちが聞きたかった。俺は、あいつの味方なんだ」
「浅生くんの事、好きですよ、でも、もう少しだけ時間を下さい。あの時の、私の失敗を話して、それでも、私を選んでくれるなら、考えます」
「ああ、良い知らせを待ってるよ」
遥は本当に嘉隆を心配しているんだ、そして、この人に、まず話を聞いて欲しい。嘉隆が来る予定の時間を確認すると、麻衣は自分の過去の話をすることにした。
あの日から、止まったままだった、麻衣の気持ちが少しづつ動き出していた。それは、確実に良い方向に。
なんか、嘉隆くんを好きって自覚はあるのですが、それ、最初に遥くんに告げちゃうのが麻衣です(笑)。




