野球の応援と驚きの邂逅
今年も野球観戦に行く機会に恵まれた。見るとやっぱり、野球も楽しいね。嘉くんからは強制はされていない。私自ら行きたいってお願いしたのだ。
そして、カープの応援に来ている嘉くんのカープ仲間の田上啓太さんに初めて会った。そして、驚く展開があった。去年、ビールの売り子をしていた町田芽衣ちゃんと一緒だったのだ。芽衣ちゃんは、今年は大学の四年生なので、バイトはもうしていないらしい。
「こんにちは。初めまして、浅生麻衣です」
「こんにちは。初めまして、田上啓太です。去年はわしの代わりに応援に来てくれたと聞いたけぇ、ありがとう」
「いえいえ、楽しかったです。ところで、隣りの芽衣ちゃんは?」
「ああ、彼女、知っとるんか。実は、彼女と付き合う事になったんじゃけぇ」
「おお、そうなんですね。私も、去年でビールの売り子終わりだって聞いていたので、また、会えて嬉しいです」
芽衣ちゃんは、去年と変わらず活動的で、髪色は落ち着いた色合いに戻っているがポニーテールは変わらない。変わったのは、リボンが青から赤に変わっていた。カープの応援に来ているので、もしかしたら、って思っていたんだけどやっぱりそうだった。
「川村さん、お久しぶりです! 私もまた、会えて嬉しいです」
「もしかして、そのリボン、カープファンになったんだね」
「はい! 田上さんが色々と教えてくれて、応援する様になりました」
「そっかぁ、嘉隆くんも喜ぶよ」
「それで、聞きました。浅生さん、今日、始球式と国歌斉唱に出るんですよね」
「うん、正確にはレーゲンボーゲンが出るので、遥くんも一緒だけどね。なので、私も応援に来ました」
そう言うと、すみませんと謝られた。うん、まぁ、嘉くんファンだと仕方が無いね。隣りの田上さんも笑っている。芽衣ちゃんは、嘉くんのファンで、レーゲンボーゲンの曲も聞いてくれるけれどね。
レーゲンボーゲンが巨人の始球式と国歌斉唱、試合終了後にライブをするので、私も楽しみだ。私も地元で何度かやらせてもらっているけれど、緊張するよね、きっと。ここからじゃ、見えにくい。大きなディスプレイ越しに見る事になる。
今回は、遥くん、巨人のユニフォームを着ているけど、嘉くんはユニフォームを着ていない。やっぱり、広島以外のユニフォームは着たく無いのかもしれない。ブレないな。
「浅生くん、野球やっていたんよね」
「ああ、はい。中学生の頃は野球部だったって言ってました」
やっぱり、ピッチャーですか? その芽衣ちゃんの台詞に、ピッチャーだとあの見た目なので、人目を引いただろうね。でも、残念ながら、ポジションはファーストだった。
「そうなんですね」
「ファーストも大事なポジションじゃけぇ」
「ですよね」
どこを守備しても大事なポジションだ。素直な子は可愛いね。去年、嘉くんの隣りに座っていた、年配の人も一緒だった。三人でよく、カープの話をする様だ。
嘉くん、流石は野球経験者、始球式のボールはノーバウンドでキャッチャーのミットにおさまった。歓声があがる。カッコいいな。そして、遥くんとの二人の掛け合いが球場を笑わせた。
「じゃあ、俺、巨人なんで」って遥くん、野球に興味が無いのに、「遥、何でじゃけぇ」と言って、手を挙げて、巨人の応援に回ろうとして嘉くんに止められていた。遥くんは、巨人ファンでも無いけど広島ファンでも無い。嘉くん、広島が関係ある時だけ、たまに掛け合いの時に、広島弁が出る。僕って言っているのに、広島弁でちょっと面白い。その掛け合いの様子が映し出されていて会場を笑わせている。
「川村さんは、カープの応援に来てくれたんよね」
「はい、相手が楽天だと困りますが、今日はカープの応援に来ました」
「どっちもファン?」
「でも、交流戦は広島を応援するって、野球好きの友人にも言ってます」
「ほぉーか、ほぉーか、それは、ぶち嬉しいけん」
野球を意識する様になったのは、愛夢ちゃんとのプロスポーツチームの応援歌を歌ったのがきっかけだ。でもまさか、広島を応援する事になるとは思わなかった。小さい頃はカープの赤い帽子が好きだったけどね。
「川村さん、楽天も好きなんですね」
「うん、まぁ、地元の球団だしね。芽衣ちゃんは、ビールの売り子していたって事は、野球が好きだったの?」
「嫌いじゃないです。ただ、特定のチームが好きって言うわけじゃ無くて、えっと、お給料が良かったので」
「ああ、確かに、あの重いタンク持って颯爽と歩けるくらいの体力無いときつそうな仕事だから、お給料、良さそうだよね。何か、運動してたの?」
「チアやってました。大学のなので、野球は関係ないですね」
「カッコいいなぁ」
その後、芽衣ちゃんの後輩の子がビールの売り子に来てくれた。そこは、芽衣ちゃんが呼んでくれた。私もその方が助かる、だって、下手に私から呼ぶとその後、収拾がつかなくなりそうだ。今日は、上は、白の長袖のTシャツにカープのユニフォームだ。下は落ち着いた色合いの赤の幅広のズボン、これすごく便利で、上のユニフォームを楽天にするとそっちでも使える。
「私が応援するのを見ると結構な確率で負けるんで、あまり、試合を見ないんですよね」
「でも、去年は勝ちましたよね。大丈夫ですよ」
たまたまなんだけど、それが二回ほど続くと、気になるよね。父に、麻衣は見るな、って言われた事がある。酷いよね。でも、父と違って芽衣ちゃんは優しいね。
試合後のライブでは、レーゲンボーゲンは、楽しく明るい元気になる様な曲を二曲ほど歌ってくれた。私たちが楽天の応援歌歌った様に自分も歌いたいって、嘉くん言っている。実現しないのは、遥くんが遠慮しているからだ。
誰も突っ込まなかったから、言わなかったけど、今回ここ巨人のホームなので、レーゲンボーゲンは巨人の始球式に出ているんだよね。だって、遥くんちゃんと巨人のユニフォーム着ているよ?
普通の始球式とちょっと違う。だって、ピッチャーは嘉くんで、打席には遥くんがいる。慌てて、スタッフの人が嘉くんにカープのユニフォームを持って来た。それは、着てくれたようだ。そして、嘉くんが投げたボールを見送った遥くんがぼやいた。
「ちょっ! 嘉、速すぎだって!」
「え、遥に手加減してどうするけん」
「いやいや」
あ、本気にさせてしまったようだ。だって、本物の巨人の選手さんが来てしまった。それには、嘉くんがすごく恐縮している。
ディスプレイでその様子が映し出される。私は芽衣ちゃんと顔を見合わせて笑ったのだった。あれ、始球式のボールって打っちゃだめなんだよね?




