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虹の架け橋  作者: 藤井桜
後日談+サブキャラのお話
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民謡とPOPSの化学反応? は起こりうるのか?



 その仕事を打診されたのは、四月の終わり頃の事だった。私の地元のよさこいチームが作った曲を歌って欲しいと頼まれたのだ。毎年、新しい曲を作る様で、去年のYOSAKOIが終わって直ぐに曲作りに入ったらしい。約半年後にようやく、楽器の音入れや調整が終わって完成して来た。

 毎年、仙台で行われるYOSAKOIまつりは十月だ。私の仕事は六月までには、歌入れを完成させる事なのだが、それがかなり難しいものだった。あと、二ヶ月もない。YOSAKOIまつりで流れる曲には、地元の民謡の節を必ず入れる事らしい。そして、この曲にも入ってはいる。

 問題は、今まで歌った事のない不思議な調子の曲だったからだ。民謡なのに、音程が一定しない、POPSの要素が入っているとても、難しい曲だった。これを歌える自身はなかったが、受けた以上、挑戦するしかない。



「これ、単体の曲だったら、どっちも歌えるのになぁ」

「難しいの?」

「うん、かなり難しいと思う。遥くんだったら、問題なく自分のものにしちゃうんだろうな」

「古川くんだけじゃなくて、努力の人って言う意味では麻衣だって、一緒じゃないの」

「私は、民謡をやっていたっていう基盤があるから出来ているところがあるけど、遥くんは一から曲を全力でものにする人なんだ。きっと、民謡の基盤なしに、勉強して、それを遥くんなりに音にする。だから、覚えたら私なんかよりもずっと、上手くやってくれそう。下手すると民謡をやって来たっていう事が私には、仇になりそうだ」



 初めてこの曲を聴いて、思わず「なにこれ」と呟いた程だ。よさこいではこう言った曲が最近、多い様で、音源を莉子さんにも聞いてもらう。莉子さんも初めて聞く曲調の曲だった様で、「これ、直ぐにレコーディングって言うわけにはいかないわね」と納得してくれた。

 持ち帰り案件になりました。曲のデモと歌詞も一緒に送ってもらう。更に、三味線の楽譜も、お願いした。何故かと言うと、自分で弾くことによって、曲の何かが掴めるかもしれないと思ったからだ。

 これからの一ヶ月は、莉子さんにお願いして、他の仕事は減らしてもらった。(よし)くんにもその事を伝えた。流石に、既に決まった仕事はするし、急ぎの断れない仕事も入ればする。

 まぁ、流石に引き篭もりっぱなしは、身体にも悪いと言われたので、朝の散歩も続けるし、息抜きに外にも出る予定だ。それに、散歩途中にも、あそこはこうした方が良い、なんてところも思い付くので、気分転換は必要だと思う。



「俺、どこまで、聞いても大丈夫?」

「嘉くん、もしかして、興味ある?」

「そりゃあ、あるでしょ。麻衣の事なんだもの」

「え、そこ?」

「あはは、冗談だよ。ちょっと、眉間に皺寄っているから、気になっただけ。だって、難しい顔しているんだもの」



 そう言って、嘉くんは、私に確認してくれた。きっと、よさこいの曲を歌うと言うのは、話しても大丈夫だと思う。嘉くんが誰かに話す事は心配していない。今までもそうだったからだ。

 それと、出来たら、アドバイスも欲しかった。嘉くんは、民謡とは、無縁の人だけど、民謡をやっていない、と言う事で私とは違った感性でのアドバイスをもらえるかもしれない。



「聞いてもらった方が早いね、だって、嘉くんは誰にも口外しないでしょ? それに、すごく、説明が難しい。そして、嘉くんにアドバイスもらいたい」

「ん、分かった」



 そう言って、よさこいの音源を聞いてもらった。莉子さんと同じように戸惑っているようだった。嘉くんの素直な感想が欲しいと言うと、少し考え込んでしまった。私は、急かさずにその言葉を待つ事にする。嘉くんは、よさこいの曲は聞いた事が無いわけではないそうだ。だって、よさこいで有名な高知は遠くないからね。



「難しいね。俺、はっきり言って、これは歌える気がしない。これって、よさこいで使われるって事は歌える人たちがいるって事だよね。その人たちの曲は聞いた事ないの? それとも、その人たちの歌に引きずられるとか、そう言う事、思っていて聞く事しないでいる?」

「そんな事ない。そっか、参考になるね。それを、聞いてどんなふうに歌っているのか。まずはそこからだ。嘉くん、ありがとう。すごく、参考になったよ」

「どういたしまして」



 そして、申し訳ない事に、家の事は全て嘉くん任せになった。五月に、嘉くんもライブがあって、忙しいはずなのに本当に申し訳ありません。この仕事が終わったら、私が家事やりますから。そう言うと、気にしない、お互い様だよと言う心強い優しい言葉が返って来た。

 私、頑張るよ。三月のツアーの様な忙しさだ、多分、乗り切れると思っている。ただし、やっぱり、妥協はしたく無いので、全力で頑張ろうと思います。



 みちのくYOSAKOIまつりのお話。お話の打診があったのが、四月です。四月、六月、十月と三本に分けて、これから、時系列毎に入れたいと思います。

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